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富士通の2020年度(2021年3月期)第3四半期決算(2020年4月1日~12月31日)が発表されましたので、概況を整理します。
富士通は、前年同期に対して、売上収益は減収となりましたが、営業利益及び当期利益は増益となりました。
売上収益は、前年同期に対して2,258億円(8.2%)減収で2兆5,262億円(コロナ影響△1,052億円、コロナ影響を除くと△436億円)
営業利益は、前年同期に対して343億円増益で1,557億円(コロナ影響△370億円)
税引前利益は、前年同期に対して295億円増益で1,641億円
親会社の所有者に帰属する当期利益は、前年同期に対して145億円増益の1,144億円
2020年度(2021年3月期)の連結業績は、前回予想値に対して、売上収益は据え置き、営業利益で250億円、当期利益で170億円の上方修正しています。
- ・売上収益は、前年同期に対して2,477億円(6.4%)減収で3兆6,100億円、前回から修正なし
- ・営業利益は、同255億円増益で2,370億円、前回から250億円の上方修正
- ・親会社の所有者に帰属する当期利益は、同169億円増益で1,770億円、前回から170億円の上方修正
2020年度(2021年3月期)の新型コロナの影響は、
- ・売上収益へのコロナ影響は△1,200億円
ユビキタスソリューションで300億円増収を見込むものの、テクノロジーソリューションで1,410億円の減収とデバイスソリューションで90億円の減収で、全体で1,200億円の減収
- ・営業利益へのコロナ影響は△410億円
ユビキタスソリューションで60億円増益を見込むものの、テクノロジーソリューションで430億円の減益、デバイスソリューションで40億円の減益で、全体で410億円の減益
富士通の2020年度第3四半期(2020年4~12月)連結業績
売上収益は前年同期に対して2,258億円(8.2%)減収で2兆5,262億円、営業利益は同343億円増益で1,557億円
- ■売上収益2,258億円減収の内訳は、
・本業では、コロナの影響でテクノロジーソリューション中心にマイナス影響で1,052億円の減収
コロナ影響を除くと、5G基地局や電子部品の物量増中心に800億円増益したものの、ユビキタスが前年特需の反動△1,200億円規模の減少影響を受けて、計436億円の減収
・デバイス事業の再編と、北米・欧州再編の影響で768億円の減収
- ■営業利益343億円増益の内訳は、
・本業では、コロナ影響でテクノロジーソリューションを中心としたマイナス影響で370億円の減益
コロナ影響を除くと、PCの大きな減収影響をカバーして増益となったのに加え、採算性改善や5G基地局の物量増で453億円の増益
・前年のデバイス事業の再編費と、北米・欧州再編の影響で25億円の増益
・特殊事項として、システムプラットフォームの製造工場再編他で48億円の減益、携帯販売事業譲渡益で254億円の増益などで、計234億円の増益
- ■新型コロナウィルスの影響は、売上収益で△1,052億円、営業利益で△370億円
・3Q売上収益に対するマイナス影響:商談の消滅や延伸で△201億円、プラス影響:新たなデマンドや延伸商談の挽回で173億円
・新たなデマンドでは、テレワーク等のリモート関連のPC/インフラ増設、請求書や領収書の電子保存ソリューションなどの「働き方の見直し」、AIを活用した無人受付ソリューションや?場での品質検査を自動化などの「非接触/無人化」
・コロナ影響額の推移:1Q △358億円、2Q △493億円、3Q △201億円、9ヶ月累計 △1,052億円
- ■3Q売上総利益率で1.1%の改善
・ソリューション・サービスで、保守・運用サービスでの原価改善が進み、上流工程含めたアシュアランス強化によるPJ損益が改善
・その他、システムプラットフォームがプロダクトミックスの影響により好転、デバイスソリューションが売上増により固定費回収が進み好転
・売上総利益率の推移:1Q 28.5%、2Q 30.6%、3Q 30.5%、9ヶ月累計 29.9%
- ■3Q営業費用減による効果が130億円
・一般経費の効率化で60億円
・システムプラットフォームの開発効率化他で35億円
・ワンショットの費用や収益の増減で35億円
税引前利益は前年同期に対して294億円増の1,640億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は同144億円増の1,143億円
国内の受注(単独)の状況は、全体では前年同期に対して95%(PC特需の反動を除くと同98%、2Qは91%)で、分野別は以下の通りとしています。
- ・エンタープライズ(産業・流通)は前年同期に対して89%(PC除くと91%、2Qは89%)
- ・ファイナンス(金融・小売)は同90%(同94%、同86%)
- ・JAPAN(地方自治体・ヘルスケア他)は同87%(同90%、同82%)
- ・公共・社会インフラは同110%(同110%、同103%)
セグメント別の業績
セグメント別の9ヶ月累計業績は、ユビキタスソリューションとデバイスソリューションが減収増益で、テクノロジーソリューションは減収減益となっています。
テクノロジーソリューションは、9ヶ月は減収減益(3Qは減収増益)
- ・9ヶ月累計の売上収益は前年同期比1,233億円減の2兆1,309億円(コロナ影響△1,220億円)、営業利益は同100億円減の946億円(コロナ影響△404億円)
- ・3Qの売上収益は前年同期比165億円減の7,535億円(コロナ影響△218億円)、営業利益は同114億円増の523億円(コロナ影響△95億円)
売上収益はコロナと再編事業の影響により大きく減収、営業利益はコロナの減収影響うけるも採算性改善とネットワークの物量増により大きく増益
- ■ソリューション・サービス事業の3Qは減収増益
・売上収益が前年同期比171億円減の4,272億円(コロナ影響△115億円)、営業利益が同25億円増の409億円(コロナ影響△55億円)
・売上収益は、コロナの影響を大きく受けて減収、コロナの影響以外でも、PC展開支援サービス等のハード一体型ビジネスが減少
・営業利益は、コロナの減収影響を多く受けるも、それ以外では原価改善と費用圧縮
- ■システムプラットフォーム事業の3Qは増収増益
・売上収益が前年同期比286億円増の1,697億円(コロナ影響△8億円)、営業利益は同71億円増の119億円(コロナ影響△12億円)
・内、システムプロダクトの売上収益は、欧州工場閉鎖による商流変更影響+120億でコロナ影響△17億円をカバーして増収
・ネットワークプロダクトの売上収益は、5G基地局の所要増加により増収
・営業利益は、ネットワークの増収効果と開発費の効率化により増益
- ■海外リージョン事業の3Qは減収増益
・売上収益が前年同期比108億円減の1,924億円(コロナ影響△86億円)、営業利益は同98億円増の86億円(コロナ影響△25億円)
・売上収益は、欧州公共向け大型商談獲得などで57億円増収したもののコロナや事業再編で165億円の減収が影響して全体では減収(コロナと再編事業の影響を除くと3%の増収)
・営業利益は、コロナ影響で25億円減益したものの特殊事項や再編事業などで全体では増益
- ■テクノロジーソリューション共通
・For Growth : デジタル(DX、モダナイゼーション)お客様の事業の変革と成長に貢献する事業領域
9ヶ月累計売上収益(構成比):2019年度6,628億円(29%)、2020年度6,958億円(33%)
・For Stability : 従来型IT(システムの保守や運用、プロダクトの提供)お客様のIT基盤の安定稼働への貢献と品質向上に取り組む領域
9ヶ月累計売上収益(構成比):2019年度1兆5,915億円(71%)、2020年度1兆4,351億円(67%)
ユビキタスソリューションの9ヶ月累計は減収増益(3Qは減収増益)
- ・9ヶ月累計の売上収益は前年同期比1,111億円減の2,417億円(コロナ影響+244億円)、営業利益は同168億円増の396億円(コロナ影響+66億円)
- ・3Qの売上収益は前年同期比273億円減の841億円(コロナ影響+40億円)、営業利益は同220億円増の309億円(コロナ影響+18億円)
- ・売上収益は、前年度Windows7関連特需の反動を大きく受け減収
- ・営業利益は、減収影響が大きく減益したものの、事業譲渡に関する一時利益254億円が貢献
デバイスソリューションの9ヶ月累計は減収増益(3Qは増収増益)
- ・9ヶ月累計の売上収益は前年同期比260億円減の2,141億円(コロナ影響△76億円)、営業利益は同274億円増の213億円(コロナ影響△32億円)
- ・3Qの売上収益は前年同期比39億円増の755億円(コロナ影響△23億円)、営業利益は同95億円増の102億円(コロナ影響△11億円)
- ・売上収益は、事業再編の影響で30億円減収したものの、本業で電子部品中心に10.2%増収が貢献
- ・営業利益は、本業では電子部品の増収効果と採算性改善で80億円の増益に加え、特殊事項の影響で16億円の増益
その他
海外売上比率:33.7%の8,519億円(前年同期:33.5%の9,218億円)
キャッシュフローの状況
- ・フリー・キャッシュフロー:前年同期比140億円減の1,581億円
営業活動によるキャッシュ・フロー:同173億円減の1,994億円(前年の利益に対する税金費用の増加もあり、前年から173億円の支出増加)
投資活動によるキャッシュ・フロー:同32億円増の△412億円(国内サービスを中心に前年と同水準の投資)
- ・財務活動によるキャッシュ・フロー:同634億円減の△1,468億円
- ・現金及び現金同等物の期末残高:同361億円減の4,690億円
資産、負債、資本の状況
- ・資産:前年同期比1,568億円減の3兆305億円
- ・負債:同2,398億円減の1兆5,991億円
- ・資本(純資産):同829億円増の1兆4,313億円
親会社所有者帰属持分(自己資本):同994億円増の1兆3,403億円
グループ再編関係
富士通研究所を富士通に統合し、CTO直下の組織として富士通研究所を設置
- ・2021年4月1日付
- ・社内に点在している調査・分析機能を集約し、全社の技術戦略立案機能を担う「技術戦略本部」と先端技術研究を行う「研究本部」を設置
2020年10月に発足した「富士通Japan」に4社を吸収
- ・2021年4月1日付
- ・富士通新潟システムズ、富士通ワイエフシー、富士通山口情報、富士通エフ・オー・エム
- ・4月1日付で社員数は1万人規模、2021年度は6,000億円の事業規模を見込む
2020年度(2021年3月期)の通期決算予想
2020年度(2021年3月期)の連結業績は、前回予想値に対して、売上収益は据え置き、営業利益と当期利益を上方修正しています。
売上収益は、前年同期に対して2,477億円(6.4%)減収で3兆6,100億円(コロナ影響△1,200億円)、前回から修正なし
- ・テクノロジーソリューションで4Qコロナ影響の継続を織り込んで△100億円、デバイスソリューションで電子部品の所要増加を織り込んで+100億円で、合計では変更なし
営業利益は、同255億円増益で2,370億円(コロナ影響△410億円)、前回から250億円の上方修正
- ・本業で50億円の上方修正
テクノロジーソリューションは戦略投資の前倒しで△50億円、ユビキタスソリューションは販売単価好転による採算性改善で+50億円、デバイスソリューションは電子部品の所要増加で+50億円
- ・特殊事項で200億円の上方修正
テクノロジーソリューションはビジネスモデル変革費用の前倒しで△50億円、ユビキタスソリューションは携帯端末販売代理事業の譲渡益で+250億円
親会社の所有者に帰属する当期利益は、同170億円増益で1,770億円、前回から170億円の上方修正
参考:電機各社の決算発表
2021.01.30 2020年度第3四半期決算と通期予想:NEC
2021.01.29 2020年度第3四半期決算と通期予想:富士通
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NECの2020年度(2021年3月期)第3四半期決算は減収増益、市場悪化で減収も特別対策と実業で増益