このページ内の目次
富士通から2021年度(2022年3月期)第2四半期決算(2021年4月1日~9月30日)が発表されましたので、概況を整理します。
富士通は、前年同期に対して、全体で増収増益となりました。
IT投資やDXに対する需要の回復は緩やかであったものの、採算性の改善などによるものです。
なお、半導体や電子部品の需給のアンバランスが拡大したことでセグメントごとにプラスとマイナスの影響が出おり、テクノロジーソリューションは部材供給不足によるマイナス、デバイスソリューションは強いデマンドに支えられて好調に推移しています。
売上収益は、前年同期に対して311億円(1.9%)増の1兆6,630億円(本業では1兆6,630億円、前年同期比583憶円増)
営業利益は、前年同期に対して192億円増の814億円(営業利益率は、前年同期比0.9%改善して4.9%)
税引前利益は、前年同期に対して214億円増の895億円
親会社の所有者に帰属する当期利益は、前年同期に対して58億円増の529億円
なお、今年度から事業セグメントを変更しています。
- ・富士通Japan設立に伴う商流変更(2020年度実績を見直し)
システムプラットフォーム、ユビキタスソリューションの売上の一部が富士通Japanを経由することでソリューション・サービスに帰属
- ・システムプラットフォームのネットワークビジネスの組織変更(2020年度実績/2021年度業績予想を見直し)
ネットワークビジネスのキャリア向けSEをソリューション・サービスに異動
富士通の2021年度第2四半期(2021年4~9月)連結業績
売上収益は前年同期に対して311億円(1.9%)増収で1兆6,630億円、営業利益は同192億円増益で814億円
- ■本業では同583億円の増収となり、その内訳は、
・ソリューションサービス及びシステムプラットフォーム、海外リージョン全てで増収し、テクノロジーソリューション全体では304億円増収
・ユビキタスソリューションは、事業再編や前年のテレワーク需要の反動影響で、201億円の減収
・デバイスソリューションは、電子部品が好調に推移して、366億円の増収
- ■営業利益192億円増益の内訳は、
・事業再編により、114億円の増益(売上収益△271億円)
・本業では成長投資含む費用増で212億円減益(成長投資220億円)と部材供給影響で71億円減益(売上減収△149億円)したものの、増収影響で187億円(売上収益732億円)に加え、利益率改善で174億円(0.9%改善)により、全体で192憶円の増益
税引前利益は前年同期に対して214億円増の895億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は同58億円増の529億円
国内の受注(単独+富士通Japan)の状況は、全体では前年同期に対して99%(PC受注を除くと同101%)で、分野別は以下の通りとしています。
- ・エンタープライズ(産業・流通)は前年同期に対して96%(2020年度年間実績:97%)
個社ごとにまだら模様であり、力強い回復にはなっていない(製造業は前年並、流通業は低調)
- ・ファイナンス(金融・小売)は同101%(同105%)
ファイナンス&リテールは大口商談の影響を受けて四半期ごとに大きな増減があり、金融・小売ともに基幹システム更新の受注獲得あり。
- ・JAPANシージョン(官公庁・社会基盤他)は同102%(同103%)
官公庁、キャリアを中心に好調で、官公庁は第4四半期に売り上げが集中する計画。
- ・富士通Japan(自治体・ヘルスケア・文教・民需)は同92%(同96%)
前年のGIGAスクール需要の反動減の他、中堅民需でも新型コロナの影響を受けて低調。
セグメント別の業績
セグメント別の業績は以下の通りで、テクノロジーソリューションが増収減益、ユビキタスソリューションが減収減益、デバイスソリューションが増収増益となっています。
テクノロジーソリューションは増収減益
- ・売上収益が前年同期比197億円増の1兆4,128億円、営業利益は同32億円減の411億円
売上収益は、ソリューション・サービスとネットワークの増収により事業再編と前年の富岳反動減をカバーして増収
- ・2022年度の営業利益率10%を目指しているが、成果が出ていない部分もあって現在4合目程度
- ■ソリューション・サービス事業は増収減益
・売上収益が前年同期比65億円増の8,454億円、営業利益が同1億円減の566億円
・売上収益は、製造・キャリア向けに増収
・営業利益は、サービスビジネス強化に向けた成長投資を拡大したものの、システム開発やデリバリー及びサポート業務の変革により採算性を改善
アジャイル開発などのシステム開発に加え、デリバリー、サポート業務の変革が貢献
- ■システムプラットフォーム事業は増収増益
・売上収益が前年同期比62億円増の2,867億円、営業利益は同90億円増の158億円
・内、システムプロダクトの売上収益は、部材供給遅延に加え、スーパーコンピュータ富岳の反動減の影響が大きく減収
・ネットワークプロダクトの売上収益は、部材供給遅延の影響はあるものの、5G基地局中心に国内外ともに増収
・営業利益は、ネットワークの増収効果に加え、前年のビジネスモデル変革費用の負担減などを含めた費用効率化により増益
- ■海外リージョン事業は増収増益
・売上収益が前年同期比116億円増の3,466億円、営業利益は同59億円増の51億円
・売上収益は、事業再編の影響で106億円減収したものの、本業で223億円の増収(為替影響除くと前年並み)
・営業利益は、大型のサービス商談獲得に加え、北米の採算性改善が進んだことにより、前年から大きく改善(全てのリージョンで黒字を確保)
ユビキタスソリューションは減収減益
- ・売上収益が前年同期比366億円減の1,166億円、営業利益は同16億円減の50億円
- ・売上収益は、携帯販売代理店事業の連結除外影響により164億円の減収に加え、本業でも前年のテレワーク需要の反動により減収
- ・営業利益は、売上収益減収の影響により減益
デバイスソリューションは増収増益
- ・売上収益は前年同期比366億円増の1,752億円、営業利益は同241億円増の352億円
- ・売上収益は、半導体需要の高まりに連動して、電子部品が好調に推移したことにより増収
- ・営業利益は、電子部品の増収効果に加え、操業改善が進んだことにより増益
価値創造のための2つの事業領域の状況
テクノロジーソリューション事業において、デジタル(DX、モダナイゼーション)を「For Growth」、従来型ITを「For Stability」と定め、2つの事業領域でお客様や社会への価値創造に取り組んでいます。
「For Growth」では規模の拡大と収益規制の両方を伸ばし、「For Stability」は効率性を上げ、利益率を高める計画です。
「For Growth」は前年の富岳出荷の反動が影響し、「For Stability」は事業継続に不可欠な案件から商談が進んでいる傾向があるとして、下期は「For Growth」で大型モダナイゼーション案件もあり、海外でもプラスになっているため、「For Growth」で価値を出していくとしています。
- ・For Growth:DXやモダナイゼーションといったデジタル領域を、お客さまの事業の変革と成長に貢献する事業領域
2022年度売上収益1兆3,000億円を目指し、テクノロジーソリューションの内37%を占める計画
2021年度上期:4,468億円(構成比:32%、2020年度上期:4,591億円に対して123億円減)
- ・For Stability:システム保守や運用、プロダクト提供といった従来型IT領域を、IT基盤の安定への貢献と、品質向上に取り組む領域
2021年度上期:9,660億円(構成比:68%、2020年度上期:9,339億円に対して320億円増)
その他
海外売上比率:36.4%の6,061億円(前年同期:33.4%の5,460億円)
キャッシュフローの状況
- ・フリー・キャッシュフロー:前年同期比87億円減の1,040億円
営業活動によるキャッシュ・フロー:同150億円増の1,720億円
投資活動によるキャッシュ・フロー:同237億円減の△679億円
- ・財務活動によるキャッシュ・フロー:同336億円減の△1,092億円
- ・現金及び現金同等物の期末残高:同169億円減の4,761億円
資産、負債、資本の状況
- ・資産:前年同期比1,380億円減の3兆521億円
- ・負債:同1,725億円減の1兆4,707億円
- ・資本(純資産):同345億円増の1兆5,814億円
親会社所有者帰属持分(自己資本):同221億円増の1兆4,722億円
2021年度(2022年3月期)の通期決算予想
2021年度(2022年3月期)の連結業績は、前回の予想を据え置いています。
ユビキタスソリューションは減収減益を見込むものの、テクノロジーソリューションとデバイスソリューションが増収増益となり、全体で増収増益を見込んでいます。
但し、世界的な半導体供給不足の影響を考慮し、テクノロジーソリューションとデバイスソリューションを見直しを実施しています。
前回予想に対しては、テクノロジーソリューションで売上収益△500億円(営業利益△200億円)、デバイスソリューションで売上収益500億円(営業利益200億円)に見直しています。
- ・売上収益は、前年同期に対して402億円(1.1%)増収で3兆6,300億円
- ・営業利益は、同86億円増益で2,750億円
セグメント別の業績予想
セグメント別の業績予想は以下の通りで、ユビキタスソリューションが減収減益、テクノロジーソリューションとデバイスソリューションが増収増益と見込んでいます。
テクノロジーソリューションは増収減益
- ・売上収益が前年同期比622億円増の3兆1,500億円、営業利益は同267億円増の2,200億円
- ■ソリューション・サービス事業は増収増益
・売上収益が前年同期比1,163億円増の2兆円(前回予想から△100億円)、営業利益が同267億円増の2,200億円(同△50億円)
- ■システムプラットフォーム事業は減収増益
・売上収益が前年同期比237億円減の6,100億円(同△400億円)、営業利益は同21億円増の410億円(同△150億円)
・売上収益の内訳は、システムプロダクトが同426億円減の3,900億円(同△200億円)、ネットワークプロダクトが同188億円増の2,200億円(同△200億円)
- ■海外リージョン事業は増収増益
・売上収益が前年同期比112億円増の7,350億円、営業利益は同103億円増の220億円
ユビキタスソリューションは減収減益
- ・売上収益が前年同期比890億円減の2,300億円、営業利益は同382億円減の50億円
デバイスソリューションは増収増益
- ・売上収益は前年同期比261億円増の3,500億円(同500億円)、営業利益は同1億円増の500億円(同200億円)
2021年度(2022年3月期)第2四半期決算と通期予想
参考:電機各社の決算発表
2021.10.30 2021年度第2四半期決算と通期予想:NEC
2021.10.29 2021年度第2四半期決算と通期予想:富士通
関連記事
前へ
DXを成功させ継続する組織、デジタル化専門組織と事業部門とが融合した取り組みが必要
次へ
NECの2021年度(2022年3月期)第2四半期決算は増収増益、国内ITや5G事業好調と海外の成長領域が拡大