ソニーとパナソニック及びシャープの2017年度通期決算(2018年3月期)と2018年度通期予想

ソニーとパナソニック及びシャープの2017年度通期決算(2018年3月期)と2018年度通期予想

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ソニーパナソニックシャープから、2017年度通期決算(2017年4月1日~2018年3月31日)と通期予想が発表されましたので、概況を整理します。

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3社ともに主力事業が好調で、2017年度通期は前年同期に対して増収増益となっています。

  • ・ソニーは、スマートフォン事業で苦戦したものの他事業部門の好調で売上高及び営業利益ともに過去最高となり、中期計画の目標も達成しました。
  • ・パナソニックは、2015年度までは減収増益が続いていましたが、成長に向けた投資を加速した2016年度を経て、2017年度は「増収増益」へ転じました。
  • ・シャープは、全セグメントの売上高が伸長し、2007年度以来10年ぶりに全四半期が最終黒字となり、2011年度以来6年ぶりの10円復配を発表しています。

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2017年度通期(2017年4月1日~2018年3月31日)の各社の決算概況は、以下の通りです。

ソニー

2017年度通期累計

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売上高と営業利益及び純利益ともに、前年同期に対して増収増益となっています。

売上高は、前年同期比12.4%増の8兆5,440億円となっています。

モバイル・コミュニケーション(MC)分野及びその他分野を除くすべての分野が増収したことによります。

なお、前年度の為替レートを適用した場合の売上高は約9%の増加となります。

ゲーム&ネットワークサービス分野は、前年同期比2,940億円(17.8%)増の1兆9,438億円(為替影響+825億円増)
ネットワークを通じた販売を含む「プレイステーション4」ソフトウェアの増収が貢献しています。

音楽分野は、同1,523億円(23.5%)増の8,000億円
モバイル機器向けゲームアプリケーション「Fate/Grand Order」が引き続き好調だった映像メディア・プラットフォームの増収に加え、ストリーミング配信売上が増加した音楽制作の増収によるものです。

映画分野は、同1,079億円(12.0%)増の1兆111億円
TEN Sports Networkの買収や視聴率の改善と、インドのテレビネットワークの広告収入及び視聴料収入が増加したメディアネットワークの増収、「スパイダーマン:ホームカミング」及び「ジュマンジ/ウェルカム・トゥジャングル」が全世界で好調だったことによる劇場興行収入が増加した映画製作における増収、米国のテレビ番組のライセンス収入が増加したテレビ番組制作における増収などによります。

ホームエンタテインメント&サウンド分野は、同1,837億円(17.7%)増の1兆2,227億円
テレビの高付加価値モデルへのシフトによる製品ミックスの改善、為替の影響によるものです。

イメージング・プロダクツ&ソリューション分野は、同763億円(13.2%)増の6,559億円
前年度における熊本地震の影響、為替の影響、静止画・動画カメラにおける高付加価値モデルへのシフトによる製品ミックスの改善によるものです。

モバイル・コミュニケーション分野は、同354億円(4.7%)減の7,237億円
為替影響で161億円増収となったものの、スマートフォンの販売台数の減少が影響しています。
(スマートフォン販売台数:2016年度1,460万台、2017年度1,350万台)

半導体分野は、同769億円(9.9%)増の8,500億円
事業規模を縮小したカメラモジュール事業の大幅な減収があったものの、モバイル向けイメージセンサーの販売数量増が貢献しています。

金融分野は、同1,409億円(13.0%)増の1兆2,284億円
保有契約高の拡大にともなう保険料収入の増加により、ソニー生命の増収(+1,280億円、収入:1兆936億円)が貢献しています。

営業利益は、前年同期比4,462億円増の7,349億円となっています。

モバイルコミュニケーションが同378億円の減益となったものの、半導体分野の同1,718億円、映画分野の同1,216億円の大幅増益が貢献しています。

営業利益の増益要因は、

  • ・モバイルコミュニケーション分野の減益378億円は、固定資産の減損損失の計上(313億円)、スマートフォンの販売台数の減少、主要部品の価格の上昇などによるものです。
  • ・半導体分野の増益1,718億円は、カメラモジュールの前年度の減損損失及び当年度の持分譲渡益(522億円)、熊本地震の影響(受取保険金相殺後347億円)、為替の好影響、製造設備の売却にともなう利益(86億円)、前年度におけるモバイル機器向けの一部イメージセンサーの在庫に関する評価減(65億円)によるものです。
  • ・映画分野の大幅な増益1,216億円は、売上高の増収に加え、前年同期に営業権の減損1,121億円を計上していたことによるものです。

純利益は、同4,175億円増の4,908億円となっています。

2018年度の通期決算予想

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2018年度の通期決算予想は、税引き前利益を除き減収減益の見通しとしています。

  • ・「プレイステーション 4」が好調なゲーム&ネットワークサービス分野、テレビ事業の構造改革に成功したホームエンターテインメント&サウンド分野、高付加価値化で競合他社に先行するイメージング・プロダクツ&ソリューション分野、イメージセンサーの販売が絶好調の半導体分野については、好調を維持する見通しとしています。
  • ・一方、スマートフォンを手掛けるモバイルコミュニケーション分野は厳しい状況です。
    (売上高は前年度比11.6%減の6,400億円、営業損益が同126億円改善の150億円の損失)
    販売台数の減少を見込んだ事業見直しによる将来におけるキャッシュフローの減少と合わせて、313億円の固定資産の減損を計上したことによります。
  • ・モバイルコミュニケーション分野は、次世代通信技術の5Gはスマートフォン以外のさまざまな製品で用いられるため、年間1,000万台のスマートフォン販売台数で事業を継続できるような体制構築を進めるとしています。

売上高は、前年同期に対して2,440億円(2.9%)減の8兆3,000億円

  • ・減収の主な要因は、為替の影響とスマートフォンを手掛けるモバイルコミュニケーション分野の事業絞り込みによるものです。
  • ・金融分野(+416億円)と半導体分野(+200億円)で増収を見込むものの、モバイル・コミュニケーション分野(△837億円)、ホームエンタテイメント&サウンド分野(△727億円)、音楽分野(△500億円)、ゲーム&ネットワークサービス分野(△438億円)で減収を見込んでいます。
  • ・販売台数の見通しは、PS4が前年同期に対し300万台減の1,600万台、スマートフォンは同350万台減の1,000万台としています。

営業利益は、同649億円減の6,700億円

  • ・モバイルコミュニケーション分野(+126億円)とゲーム&ネットワークサービス分野(+125億円)で増益を見込んでいますが、半導体分野(△640億円)、音楽分野(△158億円)で減益となり、全体では減益を見込んでいます。
  • ・なお、構造改革費用は、グループ全体で220億円(2017年度実績は224億円)を見込んでいます。

税引き前利益の同360億円の増益は、子会社が所有するSpotify株式の売却益1,000億円を組み込んでいるとし、純利益は同108億円減の4,800億円の見込みとしています。

2017年度は「第2次中期計画」の最終年度となる年度でしたが、目標として掲げた経営数値を上回る業績を達成することができました。

2015~2017年度の中期経営計画の目標と2017年度実績

  • ・営業利益 目標:5,000億円以上 ⇒ 実績:7,349億円
  • ・ROE 目標:10%以上 ⇒ 実績:18%

しかしながら、「これまでソニーは5,000億円以上の営業利益を継続して出したことがない。だからこそ、2018年度からの中期経営計画では、利益を安定して出し続けることが重要だ」とし、抱負を述べています。

パナソニック

2017年度通期累計

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売上高と営業利益及び純利益ともに、前年同期に対して増収増益となり、通期決算としては4年ぶりの増収増益となっています。

なお、一時的な要素を除いた実質的な業績で見ると2011年3月期(2010年度)以来7年ぶりの増収増益です。

売上高は、前年同期比9.0%増の7兆9,822億円となっています。

オートモーティブやエナジーに加え、プロセスオートメーションなども増収に貢献しています。

アプライアンスの売上高は、前年同期比3%増の2兆5,884億円(営業利益は、同55億円増の1,044億円)
欧州・中国でのエアコン、中国での大型空調、アジアでの洗濯機の販売が好調に推移したことによるものです。

エコソリューションズは、同5%増の1兆6,235億円(営業利益は、同83億円増の725億円)
国内の電材事業や水まわり設備の販売が伸長したことに加え、海外では中国の熱交換気ユニットや、インド・トルコ・ベトナムでの電材事業の販売が好調に推移したことなどによるものです。

コネクテッドソリューションズは、同6%増の1兆1,193億円(営業利益は、同553億円増の1,057億円)
航空機内エンターテイメントシステムが伸び悩み減収となったものの、ゼテス社の新規連結、スマートフォンメーカー向け実装機やモバイルノートパソコンなどの販売が好調に推移したことによるものです。

オートモーティブ&インダストリアルシステムズは、同16%増の2兆8,035億円(営業利益は、同16億円減の914億円)
環境対応車の市場成長や先進運転システム(ADAS)の需要拡大により、車載分野で電子化・電動化関連の販売が伸長したことによるものです。
なお営業利益については、販売増が貢献したものの、前年の引当金戻入益や事業譲渡益の反動が影響したとしています。

営業利益は同1,037億円(37%)増の3,805億円、純利益は、同866億円(58%)増の2,360億円となっています。

インダストリアル事業などが堅調に推移したことに加え、その他損益の改善によるものです。

2018年度の通期決算予想

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2018年度の通期決算予想は、増収増益を見込んでいます。

「高成長」「安定成長」「収益改善」の3つの経営区分に基づいて、成長戦略を実行していくとしています。

  • ・車載電池や次世代コックピットなどの「高成長事業」は、売上及び利益成長の牽引役と位置付け、大規模投資など経営リソースを集中する。
  • ・白物家電や食品流通などの「安定成長事業」は、競争力を活かして着実に利益を創出し、高成長事業への投資原資を生み出す。
  • ・テレビや固定電話などの「収益改善事業」は、事業の転地や固定費削減や合理化などにより、徹底的に収益改善に取り組む。

売上高は、前年同期比3,178億円(4%)増の8兆3,000億円

  • ・アプライアンス、エコソリューションズ、オートモーティブ&インダストリアルシステムズで、増収増益を達成する見込みです。
  • ・特に、オートモーティブ&インダストリアルシステムズは、エナジー事業の成長により、全社の増収増益を牽引する見込みとしています。
  • ・一方、コネクテッドソリューションズは、アビオニクスの悪化により、減収減益となる見通しです。

営業利益は、同445億円増の4,250億円

  • ・車載電池事業が牽引するオートモーティブ&インダストリアルシステムズが同426億円増、国内住宅着工数や建設投資が前年並みを維持すると想定しているエコソリューションズが同198億円増、家電の国内需要は前年並みでアジアの伸びを想定しているアプライアンスが132億円増を見込んでいます。
  • ・一方、コネクテッドソリューションズは、大型航空機の需要減少の影響を受けたアビオニクスの減収の影響により206億円減益の見通しです。

純利益は、同140億円増の2,500億円

  • ・純利益2,500億円は、2016年度からの3カ年の中期目標としていた数値で、見込み通りに進めば目標達成となります。
2018年度の増収増益を牽引するのは車載電池と部品

2018年度の増収増益の見込みは、Tesla(テスラ)の5人乗りの普及型電気自動車(EV)「モデル3」向けの電池が大きく伸びると想定しているエナジー分野と、車載部品などのインダストリアル分野が成長の牽引役となると見込んでいます。

エナジー分野の二次電池事業は、2018年度から組織を再編しています。

  • ・2017年度までは、「二次電池事業部」「テスラBU」「エナジーデバイス事業部」の体制
  • ・2018年度は、「オートモーティブエナジー事業部」「テスラエナジー事業部」「エナジーソリューション事業部」「エナジーデバイス事業部」の4つの事業部体制へと変更

そして、テスラと協業する円筒形リチウムイオン電池と、トヨタ自動車(トヨタ)をはじめとする主要自動車メーカーに展開する角型リチウムイオン電池の、主に2軸での取り組みを進めています。

2013年から「脱家電」に向けて投資をしてきた自動車部品(車載)事業で、旧三洋電機の電池技術を活用した車載電池が2018年度の牽引役と見込んでいますが、リスクもありそうです。

主なリスクは、2017年7月に量産を開始したものの自動生産に苦戦しているテスラ、最大のEV市場であるものの政府の保護主義が強い中国の動向です。

  • ・パナソニックも2,000億円を負担した電池工場「ギガファクトリー」でテスラが担当する電池のパック化の工程で、2017年末に達成する予定としていた週次生産台数5,000台の計画は2度も延期しています。
    今回、生産ラインの刷新に莫大な資金を要し、テスラの2018年第1四半期の最終損益は過去最大の赤字となっているようです。
  • ・中国では、2019年から新エネルギー車規制法(NEV法)を施行する予定です。
    現在、中国電池メーカーの電池を採用した自動車メーカーには補助金が支給されますが、パナソニックは対象となってません。

パナソニックは2018年に創業100周年をむかえ、
「100年のいいところは残しながら、時代に合わせていかなければならない。変化が必要なところはスピード。」
また、「世の中の多くの産業がサービス産業になっていく中で、サービス産業をどのようにサポートするのかに力を入れていく。」と述べています。

変化の中でB2Bへのシフトを進め、家電事業の比率は3割弱となっています。

「顧客の生活を豊かにするためにB2B事業などで世界をより良くする」という意味を込めたブランドスローガン「A Better Life, A Better World」を実現するために、「絶えず新しい領域にシフトしていく」としています。

シャープ

2017年度通期累計

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売上高と営業利益及び純利益ともに、前年同期に対して増収増益となっています。

売上高は、前年同期比18.4%増の2兆4,272億円となっています。

特に、アドバンスディスプレイシステム事業は、全体の売上高の約半分を占め、液晶ディスプレーやテレビの販売を手掛けている事業で、前年同期比29%増の1兆865億円となっています。

営業利益は、アドバンスディスプレイシステム事業が大幅に改善したことにより、前年同期比44.3%増の901億円となっています。

純利益は702億円となり、前年同期の△248億円の赤字から黒字転換しています。

営業外損益が改善したことにより経常利益が893億円となり、大幅に改善しています。

セグメント別の結果は、

  • ・スマートホームの売上高は、前年同期比10.4%増の6,079億円(営業利益:同9.7%減の437億円)
    「AQUOS Rシリーズ」を中心とした携帯電話が増収した他、コードレス掃除機「RACTIVE Air」などの掃除機や洗濯機が好調に推移したことによります。
  • ・スマートビジネスソリューションの売上高は、同4.2%増の3,311億円(営業利益:同10.6%減の201億円)
    サイネージや海外の複合機が好調だったことによります。
  • ・IOTエレクトロデバイスの売上高は、同18.8%増の4,915億円(営業利益:同35.9%減の51億円)
    スマートフォン向けカメラモジュールの大幅な増加の他、センサモジュール、半導体などの独自デバイスの販売増によるものです。
  • ・アドバンスディスプレイシステムの売上高は、同29.0%増の1兆865億円(営業利益:同10.4倍の370億円)
    タブレットや車載用などの中型パネルの増加、中国やアジア及び欧州での液晶テレビの売上の伸長、スマートフォン向けの小型液晶の販売増加などが貢献しています。

財務体質も改善しており、2018年3月末の自己資本比率は19.8%と2017年3月末から2.8%ポイント改善し、棚卸資産(2,197億円)も2017年3月末(2,178億円)に対して増加しています。

また、純資産も4,017億円と、2017年3月末3,078億円から増加しています。

有利子負債は、2017年12月末から横ばいの6,377億円となり、月商比では3.12ヶ月から3.15ヶ月となっており、純有利子負債は2,372億円から2,154億円となっています。

2018年度の通期決算予想

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2018年度の通期決算予想は増収増益を見込んでいますが、原材料高や大手顧客の動向が気掛かりとの見方もあります。

売上高は、前年同期比19.1%増の2兆8,900億円

営業利益は、同22.1%増の1,100億円

純利益は、同13.9%増の800億円

シャープは、2017年5月26日に2017~2019年度中期計画を策定し、「ビジネスモデルの変革」「グルーバルでの事業拡大」「経営基盤の強化」の3つのトランスフォーメーションを通じて『人に寄り添うIOT』と『8Kエコシステム』を実現し、事業の拡大を図るとしています。

2017年度の黒字化の要因は、「戴社長の強いリーダーシップがあったことに加えて、各事業本部の社員たちが応えたことにある」とコメントしています。

今後については、
「新体制に移行して以来、継続的な構造改革ち事業拡大により、配当を実施するまでに業績を回復できたので、この流れを止める事なく事業拡大に取り組み、着実に中期経営計画を達成し、財務体質の改善を図っていく」としています。

2017年度(2018年3月期)通期決算と2018年度通期予想

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電機各社の決算発表

富士通 株式会社(2018年4月27日発表)

日本電気 株式会社(2018年4月27日発表)

株式会社 日立製作所(2018年4月27日発表)

株式会社 東芝(2018年5月15日発表)

ソニー 株式会社(2018年4月27日発表)

パナソニック 株式会社(2018年5月10日発表)

三菱電機 株式会社(2018年4月27日発表)

シャープ 株式会社(2018年4月26日発表)

電機とITの決算

2018.5.21 2017年度通期決算:日立、東芝、三菱電機

2018.5.17 2017年度通期決算:ソニー、パナソニック、シャープ

2018.5.07 2017年度通期決算:富士通

2018.5.04 2017年度通期決算:NEC

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