インターネットの今後のあり方

インターネットの今後のあり方

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インターネット利用者の自己統治に基づいて、利用者自身が実際の検証を繰り返し、ボトムアップ形式で「標準化されたルール」が決定されるべきである。

そのためには、インターネットを利用してメリット・効果を得ているものが率先して対応していくことが必要である。

しかし、今後も個人から企業・公共団体に至るまでインターネット利用者が拡大し、その影響力が増す中で、以下の課題解決が必要なことも事実である。

課題1:国際的なIT格差(デジタルデバイド)の解消

IT格差(デジタルデバイド)による途上国と先進国間の経済格差の拡大解消

課題2:セキュリティ対策、不適切な情報流通の防止

ネットワーク経由での個人情報等の漏洩防止や知的財産の保護、ウィルス・サイバー攻撃等への対策、わいせつ画像や誹謗中傷等の撒き散らし等への対策

これらの課題を解決するためには、各国の情勢等が異なるため一律的に対応することは困難であるが、国際的な協調により対応することが必要であると考える。

そこで当面は、インターネットの展開と利用に向けて、ステークホルダー(国際機関・政府・民間企業・市民社会・利用者)がそれぞれの役割においてルールの標準化を推進していくことを提案する。

そのためには、現状のリアル社会においても同様ではあるが、高速・広範囲の伝達、情報複製・改ざんの容易性、膨大な利用者、中央集権的管理組織を持たない等のインターネットの特性を考慮した対応が必要である。

以下に対応策の概要をまとめる。

(1)IT格差(デジタルデバイド)の解消

ITを持つ者と持たざる者の格差は益々拡大し、結果的に経済的な格差につながる。

そこで、国際的な機関や先進国が協調して、途上国における産業としてのインフラ整備、人材教育等を推進することで、途上国への民間企業の進出による事業機会拡大・雇用創出、そして利活用能力の向上を促進することができる。

(2)ネットワークの構築

安全・安心なネットワークの構築に向けて、まずセキュリティ対策においては、参加者全員が自身の問題として積極的に協力して脅威に対処することが必要である。

そこで、政府・民間企業がセキュリティ文化を醸成し、当事者意識と対処能力の向上を図る。

次に、悪意を持った犯罪者に対する抑制としては、国際社会との協調により調和のとれた適切な罰則を設けた法律の制定や条約の締結、犯罪者を確実に検挙できるような国際協力体制を強化する。

また民間企業においては、セキュリティ対策技術の開発や人材育成等の取組みにより、利用者全体の底上げを促進する。

特にプロバイダでは、迷惑メール等のフィルタリングの強化も必要である。現在は、レート制御、ホワイトリスト/ブラックリスト、コンテンツ・フィルタが主流であるが、送信ドメイン制御やレピュテーション等のフィルタリング機能を強化する。

レピュテーションは送信元の信頼度で判断するサービスで、送信元のIPアドレスを信頼度データベースと照合し、評価値が事前の設定値以下のメールは遮断するものである。

そこで、この信頼度データベースの構築に当たっては、グローバルレベルでプロバイダが協力することが必要である。

(3)インターネット資源の管理

これまで分散処理を前提に、民間主導で発展してきたことを尊重し、今後も国家の枠組みに制約されないグローバルで管理していくべきである。

現在、IPアドレスの割当やドメインメームの管理等は、ICANNが効率的に運営しているが、今後もこのスキームを継続すべきである。

但し、インターネットがグローバルなインフラ資源という視点から考慮すると、これまで以上にグローバルでステークホルダーに開かれた組織とし、その管理運営に当たっての手続き上の透明性・公平性の確保に努めていくことが必要である。

(4)国際的な連携

様々なステークホルダーがインターネット上で情報や意見交換をして、インターネットの利用メリット向上に向けた努力を推進していくことを基本とするが、リアルの場でも一堂に会して基本原則等をまとめていくサミット等の開催も有効であると考える。

但し、インターネット利用者の自己統治の精神を基本とし、インターネットの利用や管理等に対する過度の規制や強制をすることは避けるべきである。

2003年12月に第一回目の「世界情報社会サミット(WSIS)」が開催されて以降、インターネット・ガバナンスに関する議論が繰り返されている。

インターネットは、今後も「自立・分散・強調」のネットワークとして、自己統治・自己規制に基づいた標準ルールを形成しながら発展していくべきで、WSISの過度の介入・規制は避けるべきであると考える。

自己統治を考える際には、全ての人間が共通のルールで行動することが最低限必要である。ネットワークを維持していくためには、行ってはいけない行為に対する処罰等は共通のルールがないと成り立たないが、法律では国際性・即効性・実効性において十分機能できないため、技術的対応も検討することが必要である。

そこで、インターネットの自己統治と安定した法規制を両立するために、インターネット内に国家権力とは切り離された、利用目的や情報内容に応じた「高度なセキュリティと認証技術で形成された区画」を設けることも必要かもしれない。

インターネットは、これまでのリアル社会の延長線上として考えるのではなく、新たな社会として新たなガバナンスが必要である。

国家が立法するのではなく、インターネット自体がボトムアップ形式で「標準化されたルール」を形成して、世界中のだれもがインターネット利用のメリットを享受できる様にしていくべきである。

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