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前回、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)のビジネス分野での拡大の可能性について、米国調査会社のガートナー(Gartner)とIDCが発表しているレポート資料を参考に考えていきました。
先日2018年6月19日、「2022年までの世界AR/VR関連市場予測」をIDC Japan株式会社が発表していますので、その概要を整理します。
このレポートでも、各産業の主要プレーヤーが次世代AR/VR機器を利用した同テクノロジー利用を展開していくにつれて、ビジネス利用への意欲はさらに高まると予想しています。
2022年までの世界AR/VR関連市場予想
先日、AR/VRに関連するハードウェア、ソフトウェア及び関連サービスを合計した額「AR/VR関連の支出額」を、IDC Japan株式会社が発表しています。
その発表によると、世界のAR/VR関連の支出額は2017年が140億ドルで、2018年は270億ドル、2022年は2,087億ドルに達する見通しで、2017年~2022年の年間平均成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)は71.6%と高い成長が見込まれるとしています。
なお、今回のレポートは、最新の「Worldwide Semiannual Augmented and Virtual Reality Spending Guide 2017H2」に基づいています。
このレポートは、世界の地域別、産業分野別、ユースケース別、テクノロジー別に、AR/VR関連の事業機会を定量化して提供しており、支出額データは、8つの地域における12の産業分野について、26のユースケース、11のテクノロジーカテゴリーに分類しています。
単位:億ドル | 2017年の支出額 | 2022年の支出額予測額 |
---|---|---|
消費者 | 86.5 | 532.1 |
流通・サービス | 18.4 | 717.3 CAGR:34.4% |
金融 | 0.7 | 21.5 |
インフラ関連 | 2.3 | 96.1 |
製造・資源 | 19.2 | 385.1 |
公的セクター | 13.2 | 334.8 CAGR:18.5% |
計 | 140.2 | 2,087.0 |
2022年の関連支出規模は、一般消費者向けが530億ドル、続くのが小売業、組立製造業、輸送・運輸業であり、それら3分野の合計支出は560億ドルに達すると予測しています。
2018年の関連支出予想は、
- ・消費者向けが142億ドルでトップを維持し、中でもVRゲームが70億ドルで牽引すると予想しています。
- ・カテゴリー別では、PC・スマートフォン・ゲーム機などのホストデバイスがトップで100億ドル、VRソフトウェアは57億ドルと予想しています。
(ARビューワーは、2022年までのCAGRが141.6%と、最も高い成長を予想)
2017年から2022年にかけての支出額は、
- ・流通・サービスがCAGR34.4%で720億ドル、公共分野向けがCAGR18.5%で335億ドルとなると予想しています。
- ・大きな伸びが期待されるのは小売業での展示でCAGR119.3%、そして研究・実験・映画やテレビでのエンターテイメント用途が続くとしています。
地域別では、
- ・CAGRが最も高いのは米国で98.3%、中近東およびアフリカ、日本と中国を除くアジア太平洋、および中南米は50%前後と予測しています。
- ・2018年、中国ではホストデバイスの支出が102億ドルで全地域の中で最も多く、VRソフトウェアとARソフトウェアがそれに続くとしています。
- ・一方、日本のCAGRは17.9%と他の地域に比べ見劣りする状況が続くものの、ホストデバイスを除いたAR関連支出のCAGRは43.9%で2022年の関連支出予測額は14.6億ドル、VRのCAGRは28.1%で同25.3億ドルとなり、底堅い成長が続くとしています。
日本のAR/VR関連市場予想
産業分野 | 2022年の支出予想額 単位:億ドル | 年間平均成長率 2017~2022年 |
---|---|---|
消費者向け | 58.6 | |
運輸 | 12.6 | 47.6% |
組立製造 | 3.3 | 42.5% |
メディア | 2.7 | |
プロセス製造 | 2.6 | 87.9% |
教育 | 0.15 |
ホストデバイスを除いた関連支出
AR関連支出 | 14.6 | 43.9% |
VR関連支出 | 25.3 | 28.1% |
日本のCAGRは17.9%と他地域に比べ見劣りする状況が続くものの、底堅い成長が続くとしています。
産業別では、
- ・2022年の推定支出額は、消費者向けが58.6億ドルでトップとなり、続いて運輸が12.6億ドル、組立製造が3.3億ドルと予想しています。
- ・CAGRの視点では、プロセス製造が87.9%と高い成長が見込まれ、組立製造は同42.5%、運輸が47.6%と、いずれも有望な分野であると言えるとしています。
- ・一方、教育分野は2022年の支出規模は0.15億ドルと極めて少なく、「ユースケース拡大の素地となるべきAR/VRの経験者拡大の障害となることが明らかになった」としています。
なお、今回のレポートでも、IDCは以下のコメントをしており、今後ビジネスでの利用が拡大すると予想しています。
新しいハードウェアの出荷やソフトウェアの改良、ユースケースの進化などにより、AR/VR双方に対する商業的関心が高まっている。
IDCが行った米国のIT意思決定者に対する調査では、AR/VR両方の技術をテストしている企業の割合が非常に高く、今後各産業の主要プレーヤーが次世代AR/VR機器を利用した同テクノロジー利用を展開していくにつれて、ビジネス利用への意欲はさらに高まるだろう。
参考
2022年までの世界AR/VR関連市場予測を発表
2018年6月19日、IDC Japan株式会社
Worldwide Spending on Augmented and Virtual Reality to Achieve a Five-Year CAGR of 71.6% by 2022, According to IDC
May 31, 2018 IDC
Worldwide Semiannual Augmented and Virtual Reality Spending Guide
IDC
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