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ビジョナリー・カンパニー③
- 衰退の五段階 -
ジェームズ・C・コリンズ(著)、山岡 洋一(訳)
出版社:日経BP社
衰退は避けられる。衰退の芽は早期に発見できる。
かつての偉大な企業は、なぜ衰退したのか。転落を阻むポイントは何か。
本書は、『ビジョナリー・カンパニー 時代を超える生存の法則』『ビジョナリー・カンパニー2 飛躍の法則』で世界的なベストセラーの著者が、克明な調査と分析で明らかになった「偉大な企業」が衰退していく真実を詳細に解説しています。
本書で取り上げられた企業は、前書2冊で言及された60社の中から、「衰退の五段階」を歩んだヒューレット・パッカード(HP)、メルク、モトローラ、ラバーメイド、スコット・ペーパー、ゼニスなどの11社です。
この11社を現時点で「衰退していない同業の企業」と比較して、どこが岐路となったのかを分析しています。
また、5段階の各解説の章の終わりには、その段階に突入した時に現れる現象が整理されており、さらに巻末の付録には、IBMとニューコアとノードストロームの3社が強力なリーダーシップのもとで、いかにして再建を果たしたかが紹介されています。
各段階の現象が現れた際の対応策については、具体的に解説はされていませんが、自分のチームがどの段階にあるのかを知り、対応策を自分自身で考えていく上で大変参考になります。
衰退は、原則の誤りではなく、企業が原則を正しく実行できなかったことによる弊害である。
衰退企業は、「針鼠の概念」や「弾み車」という原則を無視して失敗する。
自社の競争優位性のあるところ以外で戦ったり、重い「弾み車」を押し続ける努力を怠ったりしてしまう。
衰退に至る主な原因は、イノベーションの不足ではなく、「規律なき拡大路線」であり、「一発逆転策の追求」や「外部からの経営者の招聘」は失敗に終わることが多い。
衰退の五段階と現象
第1段階 成功から生まれる傲慢
運が良かった可能性を認識せず、自分達の長所と能力を過大評価するようになる。
- ・成功は当然だとする傲慢
- ・主要な弾み車の無視
- ・何からなぜへの移行
- ・学習意欲の低下
- ・運の役割の無視
第2段階 規律なき拡大路線
規律ある創造性から逸脱し、偉大な業績をあげられない分野に規律なき形で進出するようになる。
- ・持続不可能な成長と、大きさと偉大さの混同
- ・関連しない分野への規律なき飛躍
- ・主要なポストのうち、適切な人材が配置されているものの比率低下
- ・容易に利益を得られることによるコスト面の規律の緩み
- ・官僚制による規律の破壊
- ・問題のある権力継承
- ・組織の利害より個人の利害を優先
第3段階 リスクと問題の否認
大きすぎるリスクをとって企業を危険にさらすか、リスクをとったときの結果を考えずに行動するようになる。
- ・良いデータを強調し、悪いデータを小さく見せる傾向
- ・事実の裏づけがない大きな賭と大胆な目標
- ・曖昧なデータに基づいて、とてつもないリスクをおかす動き
- ・経営陣の健全な行動様式の衰退
- ・外部要因への責任の押し付け
- ・組織再編への固執
- ・傲慢で超然とした姿勢
第4段階 一発逆転策の追求
リスクをとった行動の失敗が積み重なって表面化し、企業の衰退があきらかになり、一発逆転にすがろうとする。
- ・特効薬の追求
- ・救世主のような指導者への期待
- ・パニックと拙速
- ・抜本的な変化と革命の宣伝
- ・業績より売り込みの優先
- ・当初の業績回復とその後の失望
- ・混乱と皮肉な見方
- ・リストラの繰り返しと財務力の低下
第5段階 屈服と凡庸な企業への転落か消滅
- ・後退の繰り返し
- ・巨額を投じた再建策がいづれも失敗
- ・財務力の衰えと士気の低下
適切なポストに適切な人材の条件
1.適切な人材は、会社の基本的価値観にあっている。
2.適切な人材は、厳しく管理する必要がない。
3.適切な人材は、「肩書き」を持っているのではなく、
「責任」を負っていることを理解している。
4.適切な人材は、達成すると約束したことは必ず達成する。
5.適切な人材は、会社とその仕事に情熱をもっている。
6.適切な人材は、「窓と鏡」の成熟した思考様式を持っている。
失敗とは、外的な状態ではなく、心の状態である。
成功とは、倒れても倒れても起き上がる動きを果てしなく続けることである。
参考
ビジョナリー・カンパニー ― 時代を超える生存の原則[日経BP社 1995年9月]
ビジョナリー・カンパニー 2 - 飛躍の法則[日経BP社 2001年12月]
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