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トレードオフ -上質をとるか、手軽をとるか-
ケビン・メイニー(著)、有賀 裕子 (訳)
出版社:㈱プレジデント社
中途半端はだめ! 戦略は捨てることなり!
成功したければ、「上質か手軽か」の一方を選ぶべきだ。
「上質さと手軽さ」は、トレードオフの関係にある。
新聞業界から雑誌の世界で長年記者として活躍してきた著者が、数多くのインタビューや企業研究を通して、ビジネスを「上質と手軽」の2軸に分けて戦略を論じた書籍です。
iphone、スターバックス、COACH、キンドル、フェデックス、新聞、格安航空会社などの多くの事例を紹介し、「大成功して後に大失敗した商品」「大成功しそうでしなかった商品」など、全てを「トレードオフ」で説明しています。
成功した例:マクドナルド、エルメス、iphone、フェデックス
失敗した例:スターバックス、COACH、ティファニー
様々なビジネスを事例として紹介ながら、その戦略を2軸に分類し、考察の正しさを裏づけている点においては説得力があり、自分たちの現状及び今後の戦略をチェックする上で参考になりました。
個人的な希望を言えば、
「上質か手軽」かの二社択一をどこで判断すべきなのか、状況が変化した時にどんな選択を考えれば良いのか
など、具体的な戦略論まで掘り下げて、実践的なレベルまで示唆できれば、より充実した内容になったと思います。
上質さ」と「手軽さ」
ヒット商品のほとんどは、「上質か手軽」かのどちらかで他を圧倒している。
上質さとは、
- ・断片的なものではなく、経験全体を指す。
- ・上質=経験+オーラ+個性
- ・愛されること
手軽さとは、
- ・望むものの入手しやすさの度合いを指す。
- ・すぐに手に入る、実行しやすい、使いやすい、価格が安いなどがポイント
- ・必要とされること(消費者の習慣の一部になる)
「上質か手軽か」をめぐる選択は、傾向が一致しているわけではない。状況に応じて揺れ動き、刻々と移り変わる場合もある。
「上質と手軽」は、年齢層や所得や国などのセグメントごとに考える必要がある。
テクノロジーの進歩は、「上質さと手軽さ」の水準を着実に押し上げていく。
テクノロジーの発展に見合った改善がなされない商品やサービスは、不毛地帯に飲み込まれる運命にある。
幻影
- ・多くの企業は、「上質さと手軽さ」の両面で卓越することを期待するが、それは不可能である。
- ・二兎を追う企業や商品は幻影を見ているにすぎず、経営資源や時間をムダにした挙句に迷走する。
「上質と手軽」の選択を見誤らないための五カ条
1.テクノロジーの進歩を見落としてはいけない
2.商品やサービスの成否は、目新しいかどうか、時流に乗っているかどうかよりも、上質と手軽のさじ加減で決まる。
3.上質と手軽のどちらをどれだけ重視するかは顧客層ごとに異なる。
4.商品やサービスを小さく生むと、小回りが利くため、テクノロジーの進歩や競合他社の動きに対応しやすい。
5.新しいテクノロジーは必ずといってよいほど不毛地帯で産声をあげる。
最後の章では、上質と手軽のトレードオフという概念を個人にも当てはめていたのも興味深いところでした。
- ・世の中で活躍著しい人は、「上質または手軽」のどちらかを極めている。
=何かの分野を極めたスペシャリストになるか、身近で頼られる人になるか
- ・競争相手とひしめくように、用意された階段を上っていくか、自分だけの階段をつくって、そのてっぺんに身を置くか
- ・既存領域で一番になれないならば、絶対に他人に負けない自分の強みを考え、それにふさわしい領域を切り開けばよい。
夢や志を持ち、人生に筋の通った考えを持っていれば、何らかの分野を極める方法を見つけられるかもしれません。
「捨てる勇気」と「賭ける勇気」
企業戦略においても、個人においても、改めて考えた書籍でした。
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