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『Who You Are 君の真の言葉と行動こそが困難を生き抜くチームをつくる』(日経BP、2020年)は、奴隷文化の改革、武士道による支配、世界最大の帝国の建設、刑務所文化の変革といった4つの歴史上の事例を検証しながら、リーダーたちが強い文化をつくるために使ったテクニックを整理した一冊です。
4つの歴史の整理だけにとどまらず、各リーダーたちのテクニックが現在にどのように適用できるのかを再整理しているのに加え、現代企業が取り組んでいる具体的事例も随所で紹介していますので、身近なものとして腹落ちします。
また本書では、並外れた力はあるが文化を壊してしまう社員として、三つのタイプの最悪な社員について整理し、さらに厄介な境界例を紹介しています。
そこでここでは、本書を参考にして、文化崩壊の兆候と対応、文化の破壊者のタイプについて整理します。
文化の破壊者タイプを知っておくことで、組織に潜んでいる破壊者を見つけ、企業文化の破壊を未然に防ぐことに役立ちそうです。
文化崩壊の兆候と対応策
文化がどうのように機能するかを理解するためには、文化が機能していない残念な状況を調べてみる必要がある。
多くの企業が実現に努力する文化規範が「顧客第一主義」であるが、「顧客第一主義」は素晴らしい企業理念ではあるものの、やりすぎるとあだとなる。
戦略は進化し、状況は変わり、人は新しいことを学ぶが、そのときに文化を変えなければ文化の下敷きになってしまう。
意思決定の分散か集中かを考えるうえで考えておくべき要素は「平時か戦時か」という点で、平時と戦時では異なる経営スタイルが必要とされる。
平時から戦時モードに切り替えることは簡単であるが、戦時から平時モードに切り替えることは難しい。
ほとんどのCEOは平時から戦時へ、またその反対へと文化を切り替えることはできず、ほとんどのCEOは性格的にもどちらか一方にしか合っていない。
そのため、変化を起こす必要がある場合には、取締役が古いCEOをクビにして、新たな状況に対応できる誰かを連れてくることである。
但し、平時のCEOのもとで働きたがる重役は戦時のCEOのもとでは働きがらないし、その逆も同じであることを認識しておく。
文化崩壊の兆候と対応
1.辞められては困る人がよく辞める。
- ・社員が辞めるのは仕方ないが、辞められて困る人が間違った理由で辞めているのであれば、何かを変えるべきである。
業績はいいのに離職率が同業他社より高いとしてら、企業文化に問題がある。
- ・企業文化に合うと思って採用した人が、ここに合わないと感じているとしたら、最悪の兆候である。
2.自社の最重要課題がうまくいいていない。
- ・自社の最重要課題に対応しているが改善の兆しが見受けられない場合、本当に対応している社員に報いていない可能性がある。
- ・表面的な成果ではなく、裏方として貢献している社員を報いるように文化を変える。
3.ありえないことをやる社員がいる。
- ・ありえないことをしている社員がいたら、企業文化がそれを許しているのだと思われる。
- ・ありえないことをやる社員をクビにして、ショッキングなルールをつくるなりして、全力で企業文化をプログラムし直す。
文化を形づくったり変えたりするのに、見せしめほど強力な手法はない。
見せしめは、何か悪いことが起きてそれを正す必要があるとき、絶対に忘れられない警告になり、悪いことが二度と起きないように文化を変えることができる。
見せしめを見たり聞いたりすれば、誰にでもその教訓がわかる。
文化の破壊者のタイプ
異端者
自社の弱点を発見し、改善のために働いてくれる頭がよくて献身的な社員が必要であるが、そうした社員の中には会社を改善するために弱点を発見するのではなく、自分の理論を証明するために弱点を探す者が出てくる。
彼らはあらゆる経営判断を疑い、信頼を壊し、企業文化を崩壊に導く。
崩壊しようとする主な理由
- ・無力感
自分が経営陣と接する術がないと感じ、不平を言うことだけが自分の意見を聞いてもらえる方法だと思っている。
- ・もともと反逆者タイプ
- ・未成熟で衝動的
経営者は現場の業務の隅々まで熟知しているわけではないことを理解できないため、何かが壊れていたら全て経営者の責任だと決めつける。
信頼性のなさ
非常に頭がいいのにもかかわらず、全く信頼できない人間はいる。
極端に信頼性を欠く人物は、何か根本的な性格上の問題を抱えていることが多く、その理由は、自己破壊的な衝動であったり、秘密の内職であったり、様々である。
チームの頼っている人が、何の説明もなく信頼に欠く行動をとっても許されるとしたら、他のメンバーもまた信頼に欠く行動をしてもいいと思ってしまう。
根性曲がり
「頭のいい最悪社員」はどのレベルにもいるが、それが幹部社員だった場合、その影響は特に破壊的となる。
無礼な言動といった意味での「悪い性格」ではなく、攻撃のチャンスをうかがうような人間、攻撃が個人的であるほど喜ぶといった性格である。
経営幹部がいつも愚かな振る舞いを繰り返していれば、会社の足を引っ張ることになり、企業が大きくなると、円滑なコミュニケーションは最優先の課題となる。
会議にこういう「根性曲がり」がいると誰も口を開こうとしなくなり、その結果、会社全体がゆっくりと腐っていく。
怒りの代弁者
ありえないほど働き者で、不屈の闘志を持っていて、どんな障害にも屈せず、どんな問題にもひるまず、誰を怒らせても気にせず、仕事をやり遂げるタイプである。
彼らは独善的なので適切な仕方について話し合うことすら難しく、経歴は典型的な採用基準とは離れており、企業にとっては大量破壊兵器となる。
このタイプを部下に持ったら、彼らは怒りをぶちまけるのは得意だが、批判を受け止めるのは苦手だということを覚えておく。
完璧主義者でもあり、そもそも自分は周囲に歓迎されないと疑ってしまう傾向が強い。
「怒りの代弁者」を使いこなすカギ
- ・彼らの行いを注意するのではなく、彼らの行いが生み出す逆効果を注意する。
- ・彼らを変えるのは不可能だと覚悟しておく。
- ・彼らが得意なことに集中してコーチングを行う。
「怒りの代弁者」の改善に努力していると、それが特別扱いだとして他の社員の怒りを買ってしまうので注意すべきである。
企業文化からの逸脱が隠れた多様性だと後でわかることもあるが、個人の成果よりも文化の一貫性の方が重要で、「怒りの代弁者」タイプをクビにした方がいいこともある。
それは、いくら仕事ができていても、企業文化に大きく反することは許されないと宣言していることに等しい。
関係する書籍
-
Who You Are
君の真の言葉と行動こそが困難を生き抜くチームをつくる
ベン・ホロウィッツ(著)、ヘンリー・ルイス・ゲイツ・ジュニア、辻 庸介(その他)、浅枝 大志、関 美和(翻訳)
出版社:日経BP(2020/4/17)
Amazon.co.jp:Who You Are
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