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コトラーのマーケティング3.0
ソーシャル・メディア時代の新法則
フィリップ・コトラー、ヘルマワン・カルタジャヤ、イワン・セティアワン (著)、恩蔵 直人(監訳)、藤井 清美(訳)
出版社:朝日新聞出版
コトラーのマーケティング3.0
「消費者志向」はもう古い!
マーケティングは、モノを売り込む「製品中心」の「1.0」、顧客満足をめざす「消費者志向」の「2.0」を経て、「3.0」にバージョンアップした。
ソーシャル・メディア上の評判が、決定的な影響力を持つ時代のマーケティング原論!
本著は、「マーケティングの未来を形づくった50人のリーダー」の一人に選ばれたヘルマワン・カルタジャヤ氏率いるマーケティング・サービス会社のマークプラス社によって生み出された「マーケティング3.0」の基本コンセプトを、フィリップ・コトラー氏が加わり強化・体系化されたものです。
これまでのマーケティング・コンセプトを整理し、近年の取り巻く環境変化や他者の論考を考慮しながら、今後のマーケティングのあり方だけではなく、企業のあり方までを言及しています。
マーケティング3.0の基盤をつくるビジネス・トレンドを概説し、自社のビジョンやミッションや価値をステークホルダーにどうすればマーケティングできるかを説明し、貧困や環境破壊などのグローバルな課題を解決するための人間中心のビジネスモデルを解き明かしています。
企業のマーケターには大いに参考になり、必読の一冊です。
マーケティングは、
これまでは、市場をセグメント化することでターゲットを明確にし、ニーズを読み解き、そのニーズに合った製品にユニークなポジショニングをすることであり、顧客志向を貫くことが原点でした。
しかし近年の新しい流れの中では、人間の志や精神面にも目を向ける必要がある。
顧客を受動的なターゲットとしてとらえる伝統的なマーケティング発想では、機能面でしか満足が得られない。
マーケティング 1.0 | マーケティング 2.0 | マーケティング 3.0 | |
---|---|---|---|
目的 | 製品を販売する | 消費者を満足させる | 世界をよくする |
コンセプト | 製品開発 | 差別化 | 価値 |
ガイドライン | 製品説明 | ポジショニング | ミッション |
消費者関係 | 1対多数の取引 | 1対1の関係 | 多数対多数の協働 |
マーケティング3.0の構成要素
「協働マーケティング」「文化マーケティング」「スピリチュアル・マーケティング」の融合と位置づけられる。
協働マーケティングでは、
製品開発やコミュニケーションにおいて、顧客や他社を参加させる。
文化マーケティングでは、
文化的課題を自社のビジネスモデルの中心に据え、グローバル化によって引き起こされる消費者行動の変化に対応できるようにする。
スピリチュアルマーケティングでは、
精神を感動させる経験やビジネスモデルを提案し、心理精神的便益の実現が進められる。
どうすればマーケティングできるか
ステークホルダーに、どうすればマーケティングできるか
マーケティング3.0におけるチャネル管理は、
似通った目的をアイデンティティを持つ適切なパートナーを見つけ、統合してブランド・ストーリーを持たせる必要がある。
株主を納得させるためには、
- ・企業はミッションや価値に加えてビジョンを伝える必要がある。
- ・マーケティング3.0では、企業のビジョンは持続可能性という概念を包含していなければならない。
消費者が企業評価する基準は、
- ・企業が公的・社会的課題にどの程度取り組んでいるかを評価するようになる。
- ・マーケティング3.0段階の企業は、社会的課題に取り組んでいる。
グローバルな課題を解決するためには
1.貧困は、依然として人類が直面している問題のひとつである。
解決のための答えのひとつは、起業家や企業や貧しい人々によるソーシャル・ビジネス・エンタープライズ(SBE)の結成を奨励する。
マーケティング・ミックスにより、自社の製品やサービスを手ごろで入手しやすくする。
2.マーケティング3.0を実践している企業は、環境の持続可能性を推進している。
マーケティング3.0の原則
1.顧客を愛し、競争相手を敬う
2.変化を敏感にとらえ、積極的な変化を
3.評判を守り、何者であるかを明確に
4.製品から最も便益を得られる顧客を狙う
5.手ごろなパッケージの製品を公正価格で提供する
6.自社製品をいつでも入手できるように
7.顧客を獲得し、つなぎとめ、成長させる
8.事業はすべて「サービス業」である
9.QCDのビジネス・プロセス改善を
10.情報を集めM、知恵を使って最終決定を
以前、当サイトで、マーケティングの変化をITの視点で整理しましたが、本著からするとマーケティング2.0の段階でした。
本著では、マーケティング・コンセプトの進化を整理し、今後のマーケティングのあり方を解説しています。
しかし実際の現場では、「製品中心」「消費者志向」という販売を重視した短期的な志向が依然として行われており、本著で解説しているマーケティング3.0は中長期的な視点であり、取り組んでいる企業は少ないように感じます。
マーケティング「1.0」「2.0」「3.0」を適切に組み合わせることが、理想的なのかもしれません。
【参考】当サイト
2010.2.28 ITで「マーケティング形態」は変わるのか?
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