ⅩⅠ.バーニーの論争から考える「経営理論の条件」

ⅩⅠ.バーニーの論争から考える「経営理論の条件」

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ⅩⅠ.バーニーの論争から考える「経営理論の条件」

リソース・ベースト・ビュー(RBV)は経営理論といえるのか

  • ・「リソース・ベースト・ビュー(RBV)」の命題はトートロジー(類語反復)となると批判され、重要なことは「その理論命題が実証分析できるか」であるとジェイ・バーニー教授が反論。
    その再反論として、「理論の世界で生じている問題は、理論の世界で解決されるべきである」と主張。その後、両者は未だ決着していない。
  • ・科学理論にとって重要な条件:その命題が反証可能であること。
  • ・実証手法については統計分析が多く用いられているが、理論の表現には自然言語が多く使われる。
  • ・自然言語を使って科学的な理論を構築するためには、反証可能性、コンストラクトと変数の違いなどの基本知識も必要になる場合がある。

1.企業リソースの重要性に注目

バーガー・ワーナーフェルト教授(1984年)

(1)マイケル・ポーター教授のSCPパラダイムの考えを、企業リソースの分野に応用することを提案。

(2)独占的な利益の追求は、製品・サービス市場においてだけでなく、企業リソースにも応用できる。
ある企業が持っているリソースが、何らかの理由によってライバル企業が模倣できないようになっていれば、企業はそのリソースから得られる便益を独占できる。

2.「リソース・ベースト・ビュー(RBV)」の命題

ジェイ・バーニー教授(1991年)

  • 命題①
    ある企業が経営資源(リソース)に価値があり、それが希少なとき、その企業は競争優位を獲得する。
  • 命題②
    そのリソースが、他社に模倣不可能で、またそれを代替するようなものがないとき、その企業は持続的な競争優位を獲得する。
1.RBVを批判

リチャード・プリム教授とジョン・バトラー教授(2001年)

(1)RBVは経営理論としての体をなしていない。

(2)命題①の「競争優位」という言葉の入れ替えを提案
競争優位→「他社よりも高い価値」「希少なもの」

(3)言葉を入替えた後の命題
ある企業のリソースに価値があり、希少なとき、その企業は「価値があり希少な」戦略を導入できる。
→トートロジー(類語反復)状態に近いことを指摘。

(4)トートロジー:常に真となる「論理命題」のこと。

2.プリム=バトラー論文に反論

ジェイ・バーニー教授(2001年)

(1)「言葉のすり替え」という手法そのものを批判。
この手法を用いれば、どのような経営学の理論命題もトートロジーになってしまう。

(2)経営学の理論において最も重要なことは、「トートロジーになるような言葉のすり替えが可能か」ではなく、「その理論命題が実証分析(データをとって数値化)できるか」である。

(3)RBVが実証分析できることを提示
ダニー・ミラー教授とジャマール・シャムジー教授(1996年)

ハリウッド産業での検証

  • ①安定期には大スターとの長期契約など「資産ベースのリソース」に価値があり、
  • ②不安定な競争環境ではプロダクションの映画製作能力など「知識ベースのリソース」に価値がある。
3.再び「理論命題が実証分析できるかであること」に反論

リチャード・プリム教授とジョン・バトラー教授(2001年)

(1)理論の世界で生じている問題は、理論の世界で解決されるべきである。

(2)「実証の世界でデータがとれるから深刻な問題でないと」と主張するのは、根本的に「社会科学における理論とは何か」をわかっていないからである。

その後、両者は未だ決着していない。

科学理論の規範となる考えを確立

哲学者カール・ポパー氏(1959年)

(1)科学理論にとって重要な条件:その命題が反証可能であること。
その命題が正しくない可能性が論理的に存在すること。

(2)論理命題は、反証可能な時だけ、それが現実世界で正しいか正しくないかを実証分析できる。

(3)論理命題が打ち立てられたら、観測・実験・データ解析などの実証研究を行い、その命題が現実世界に当てはまるかどうかを検証する必要がある。

(4)常に正しい命題は、命題を正しいと実証的に証明する意味がなく、それは科学的に理論的な命題とは言えない。

参考

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