国内電機の2013年度第3四半期決算と通期予想、ソニー、パナソニック、シャープは増収増益でも、本格的回復は構造改革次第

国内電機の2013年度第3四半期決算と通期予想、ソニー、パナソニック、シャープは増収増益でも、本格的回復は構造改革次第

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ソニー、パナソニック、シャープの3社の2013年度第3四半期(2013年4月1日~12月31日)と通期予想が出そろいましたので、概況を整理します。

円安の好影響に加え、国内での消費税増税前の駆け込み需要、グローバルでの市場回復などにより増収増益となりましたが、本格的業績回復には今後の構造改革の実現次第となりそうです。

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ソニー、パナソニック、シャープの3社の2013年度第3四半期(2013年4月1日~12月31日)の決算概要は、以下の通りです。

ソニー

  • ・売上高は、前年同期に対して8,332億円(16.4%)増の5兆9,010億円
  • ・営業損益は、同585億円増の1,415億円
  • ・純損益は、同620億円増の112億円
  • ・通期決算予想は、営業損益で900億円減、純損益で1,400億円減と、下方修正しています。
    売上高:7兆7,000億円、営業損益:800億円、純損益:△1,100億円
    営業損益下方修正の要因は、MP&C分野、HE&S分野、デバイス分野で想定を下回る見込み、資産売却計画見直しによるものです。
    なお構造改革費用は、グループ全体で約700億円(前年度775億円)見込んでいます。

パナソニック

  • ・売上高は、前年同期に対して2,402億円(4.4%)増の5兆6,798億円
  • ・営業損益は、同1,412億円増の2,632億円
  • ・純損益は、同8,668億円増の2,430億円(過去最高)
  • ・通期決算予想は、全ての指標について前回予想を据え置いています。
    売上高:7兆4,000円、営業損益:2,700億円、純損益:1,000億円
    全体的な構造改革費用は、約1,700億円を見込んでいるが、事業転換の前倒しのために増加の可能性もあるとしています。

シャープ

  • ・売上高は、前年同期に対して3,748億円(21.0%)増の2兆1,573億円
  • ・営業損益は、同2,477億円増の815億円(黒字化)
  • ・純損益は、同4,421億円改善の177億円(黒字化)
  • ・通期決算予想は、売上高で2,000億円増、営業損益で200億円増と、上方修正しています。
    (売上高の上方修正の主な内訳は、太陽電池部門で1,200億円増、液晶部門で30億円増、電子デバイス部門で20億円増)
    売上高:2兆9,000円、営業損益:1,000億円、純損益:50億円

ソニー

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売上高、営業損益、純損益(2013年4月1日~12月31日)

売上高、営業損益、純損益の全指標で、前年同期を上回っています。

  • ・売上高は、前年同期に対して6,332億円(16.4%)増の5兆9,010億円となっています。
    主に為替の好影響に加え、「プレイステーション4(PS4)」の発売及びスマートフォンの大幅な増収が寄与しています。

    なお海外売上比率は、71.6%となっています。
  • ・営業損益は、前年同期に対して585億円増の1,415億円となっています。
    主に為替の好影響に加え、テレビの損失縮小によるホームエンタテイメント&サウンド(H&S)部門の収益改善、PS4発売によるゲーム分野と金融分野の増益が貢献しています。
    なお、当第3四半期において、デバイス分野で減損321億円、モバイル・プロダクツ&コミュニケーション(MP&C)分野で減損82億円、ゲーム分野で評価損62億円が計上されています。
  • ・純損益は、前年同期に対して620億円増の112億円となっています。
セグメント別(2013年4月1日~12月31日)

セグメント別では、4分野が増収増益、2分野が増収減益、1分野が増収減益、1分野が減収減益となっています。

イメージングプロダクツ&ソリューション(IP&S)分野は、前年同期比3.6%減の5,546億円(営業損益:同69億円増の189億円)

  • ・売上高は、為替の好影響があったものの、市場縮小によるビデオカメラやコンパクトデジタルカメラが減収
  • ・営業損益は、為替の好影響により増益

ゲーム分野は、前年同期比33.8%増の7,154億円(営業損益:同9億円減の24億円)

  • ・売上高は、為替の好影響に加え、PS4の発売が寄与して増収
  • ・営業損益は、増収の影響はあったものの、PS4発売に伴う費用増加により減益

MP&C分野は、前年同期比40.3%増の1兆2,691億円(営業損益:同650億円改善の△76億円)

  • ・売上高は、為替の好影響に加え、スマートフォンの販売台数の大幅増により増収
  • ・営業損益は、スマートフォンの大幅な増収により損失縮小

HE&S分野は、前年同期比16.2%増の9,430億円(営業損益:同315億円改善の△23億円)

  • ・売上高は、為替の好影響に加え、高付加価値モデルの導入による液晶テレビの製品ミックス改善により増収
  • ・営業損益は、液晶テレビの製品ミックス改善及び費用削減により損失縮小

デバイス分野は、前年同期比9.4%減の6,203億円(営業損益:同564億円悪化の△10億円)

  • ・売上高は、ゲーム向けシステムLSIの減収と前年同期にケミカルプロダクツ関連事業の売上が含まれていたことにより減収
  • ・営業損益は、電池事業での損失計上、タイ洪水による損害の保険収益減少により悪化

映画分野は、前年同期比6.7%増の5,605億円(営業損益:同181億円減の102億円)

  • ・売上高は、劇場興行及び映像ソフト収入が減少したものの、円安の好影響に加え、米国テレビ番組「ブレイキング・バッド」の映像ソフト収入及び会員制ビデオ・オン・デマンド収入の増加などにより増収
    (内訳は、映画製作が2,887億円、テレビ番組制作が1,495億円、テレビ局などメディアネットワークが1,216億円)
  • ・営業損益は、音楽出版カタログの売却益と「ブレイキング・バッド」の増収があったものの、劇場興行と映像ソフト収入の減少及び米国テレビ向け制作費増加などにより減益

音楽分野は、前年同期比14.5%増の3,716億円(営業損益:同107億円増の422億円)

  • ・売上高は、円安の好影響に加え、音楽制作でのリリース作品の好調により増収
    (内訳は、制作が2,661億円、楽曲のライセンスなどの出版が451億円、アニメーション作品の制作など映像メディアプラットフォームが525億円)
  • ・営業損益は、持分法投資損益が前年同期損失に対し利益を計上したことに加え、円安の好影響により増益

金融分野は、前年同期比12.9%増の7,818億円(営業損益:同400億円増の1,330億円)

  • ・売上高は、ソニー生命の特別勘定の運用損益の大幅改善などにより増収
  • ・営業損益は、ソニー生命の一般勘定の運用益改善などにより増益
その他

パソコン事業を、投資ファンドの日本産業パートナーズと受け皿会社を新設して移管(ソニーは受け皿会社の株式の過半数を持たない方針)

  • ・パソコン「VAIO」ブランドは1996年投入されましたが、ここ数年は低迷が続き、昨年10月には今期の出荷台数の予想を、620万台から580万台(前年度760万台)に下方修正しています。
  • ・パソコンを含むMP&C分野は2期連続の赤字で、事業の再生の加速を目指す。
    正式発表はされていませんが、売却額は400~500億円、一方の売却による在庫や設備関連の損失額は700~800億円といわれています。

テレビ事業を、分社化して完全子会社として運営

  • ・過去2年間で収益性は改善したものの、今期黒字化は困難な状況(9期連続の赤字で、前年度は696億円の営業赤字)
  • ・商品ラインナップの強化、4Kなどの高付加価値商品の販売構成比を高め、安定的に利益計上できる体制構築を目指すとしています。

主なエレトロニクス製品の年間見通しは、スマートフォンを前回予想から下方修正しています。

  • ・ビデオカメラ:230万台(前年度370万台)
  • ・デジタルカメラ:1,200万台(同1,700万台)
  • ・スマートフォン:4,000万台(同3,300万台)と前回予想を200万台下方修正
  • ・パソコン:580万台(同760万台)
  • ・液晶テレビ:1,400万台(同1,350万台)
  • ・据置型(PS3、PS2):1,500万台(同1,650万台)
  • ・携帯型(Vita、PSP):500万台(同700万台)

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パナソニック

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売上高、営業損益、純損益(2013年4月1日~12月31日)

売上高、営業損益、純損益の全指標で、前年同期を上回っています。

  • ・売上高は、前年同期に対して2,402億円(4.4%)増の5兆6,798億円となっています。
    デジタルコンシューマー関連事業が減収したものの、グローバルでの市場回復による車載関連事業の伸長と国内住宅関連事業の堅調が寄与しています。

    なお海外売上比率は、51.4%となっています。
  • ・営業損益は、前年同期に対して1,412億円増の2,632億円となっています。
    赤字事業の収益改善に加え、固定費削減や材料合理化も取り組みが下支えによります。
  • ・純損益は、前年同期に対して8,668億円増の2,430億円となっています。
    回路基板の事業構造改革費用217億円を計上したものの、第1四半期に年金制度変更に伴う一時益798億円を営業外収益に計上しています。
セグメント別(2013年4月1日~12月31日)

セグメント別では、2部門が増収増益、1部門が増収減益、1部門が減収増益となっています。

アプライアンス部門は、前年同期比8%増の9,032億円(営業損益:同79億円減の270億円)

  • ・売上高は、中国での家庭用エアコンの流通在庫調整により販売が減少したものの、円安の好影響により増収
  • ・営業損益は、合理化やコスト削減を推進したものの、円安のマイナス影響により減益

エコソリューション部門は、前年同期比8%増の1兆3,313億円(営業損益:同295億円増の735億円)

  • ・売上高は、国内での消費税増税前の駆け込み需要で全事業で販売増により増収
  • ・営業損益は、円安のマイナス影響があったものの、販売増及びコスト削減などにより増益

AVCネットワーク部門は、前年同期比4%減の1兆1,691億円(営業損益:同177億円改善の△64億円)

  • ・売上高は、BtoB事業の販売は伸長したものの、事業構造改革や需要低迷に伴うBtoC事業の販売減少により減収
  • ・営業損益は、BtoB事業の増益に加え、テレビ・パネル事業の構造改革効果があり改善したものの、以前営業赤字

オートモーディブ&インダストリアルシステムズ部門は、前年同期比9%増の2兆508億円(営業損益:同592億円増の864億円)

  • ・売上高は、自動車生産の好調と円安効果、インフォテイメント事業部などの車載関連事業の販売増などにより増収
  • ・営業損益は、自動車関連事業の販売増と円安の好影響などにより増益
その他

事業部制を軸としたグループ基本構造のもと、個々の事業も強さを取り戻すことをベースに、「課題事業の構造改革」「次なる成長に向けた戦略構築の仕組み」に取り組む。

  • ・プラズマディスプレイの生産終了、回路基板事業でも樹脂多層基板及び薄型・高密度配線板の事業終息など
  • ・次なる成長に向けて、テラモーターズ社へのEV用リチウムイオン電池の供給拡大の契約締結、トルコ配線器具メーカーのヴィコ社買収

BtoB事業へのシフトは、これから比重があがってくると予想(現状は、アプライアンス部門で40%台前半、AVCネットワークス部門は50%超、この1年間の伸長は1~2%)

テレビ事業部の年間見通しは、前年同期比14%減の2,980億円(営業損益:同20億円悪化の△34億円)

  • ・円安による影響が大きいものの、為替影響を除けば順調に改善しているとしています。
  • ・徹底した事業構造改革を推進し、来年度には赤字解消を目指す。

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シャープ

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売上高、営業損益、純損益(2013年4月1日~12月31日)

売上高、営業損益、純損益の全指標で、前年同期を上回っています。特に、純損益(累積)が黒字に転じました。

  • ・売上高は、前年同期に対して3,748億円(21.0%)増の2兆1,573億円となっています。
    高精細4K対応AQUOS、クアトロンプロ、IGZO液晶ディスプレイ搭載スマートフォン、国内市場向け太陽電池、モバイル端末向け中小液晶パネルや高性能カメラの販売好調が寄与しています。

    なお海外売上比率は、61.0%となっています。
  • ・営業損益は、前年同期に対して2,477億円増の815億円(黒字化)となっています。
    人件費を中心とした固定費や総経費の削減、設備投資の抑制などによるものです。
  • ・純損益は、前年同期に対して4,421億円改善の177億円(黒字化)となっています。
セグメント別(2013年4月1日~12月31日)

セグメント別では、5部門が増収増益、1部門が増収減益となっています。

プロダクトビジネスは、前年同期比15.8%増の1兆3,059億円(営業損益:同545億円増の626億円)

  • ・デジタル情報家電は、液晶カラーテレビの販売が欧米で低迷したものの、国内及び新興国で伸長、携帯電話は海外メーカーとの競争激化で減収したが、全体売上高では同2.1%減の5,515億円(営業損益:同252億円増の93億円)
  • ・健康環境は、エアコンや冷蔵庫などの販売好調により、売上高は同5.3%増の2,419億円(営業損益:同94億円減の153億円)
  • ・太陽電池は、国内の住宅用及びメガソーラーなどの産業用の販売伸長により、売上高は同85.8%増の2,768億円(営業損益:同300億円増の158億円)
  • ・ビジネスソリューションは、国内外でのカラー複合機の好調に加え、米国でのインフォーメーションディスプレイの伸長により、売上高は同13.0%増の2,355億円(営業損益:同87億円増の220億円)

デバイスビジネスは、前年同期比30%増の8,513億円(営業損益:同1,920億円増の441億円)

  • ・液晶は、スマートフォンやタブレット端末向けの中小液晶パネルに加え、大型液晶パネルの好調により、売上高は同30.6%増の6,223億円(営業損益:同1,620億円増の346億円)
    当第3四半期の営業利益260億円の内、CECパンダなど勅許関連のエンジニアリングフィーは約200億円、利益率9.4%(第2四半期は6.4%)
  • ・電子デバイスは、スマートフォン向けカメラモジュールやセンサー、LEDの販売伸長により、売上高は同28.5%増の2,290億円(営業損益:同300億円増の94億円)
その他

主な製品の年間販売見通しは、以下の通り前回予想を据え置いています。

  • ・液晶カラーテレビは800万台(前年度803万台)
    売上予想については、単価上昇を見込んで前回予想から200億円増の4,200億円に上方修正
  • ・携帯電話は550万台(前年度611万台)

今後の見通しについては、

  • ・デジタル情報家電では、高精細4K対応AQUOSや「クアトロンプロ」などの大型液晶テレビの拡大と新興国への販売強化を推進。
  • ・携帯電話では、IGZO液晶ディスプレイ搭載スマートフォンやタブレットのラインナップ拡充など、国内シェア回復を目指す。
  • ・亀山第2工場の稼働率は、第4四半期は40%程度の見込み。
    来年度以降は、スマートフォンやタブレットなども加えて50%に近づけたいとしています。

資金面では、当第3四半期に、公募による新株式発行などにより約1,203億円の資金調達、㈱デンソーや㈱マキタ及び㈱LIXILを割当先とする第三者割当増資174億円を実施しています。

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電機各社の決算発表

富士通 株式会社(2014年1月30日発表)

日本電気 株式会社(2014年1月30日発表)

株式会社 日立製作所(2014年2月4日発表)

株式会社 東芝(2014年1月30日発表)

ソニー 株式会社(2014年2月6日発表)

パナソニック 株式会社(2014年2月4日発表)

三菱電機 株式会社(2014年2月3日発表)

シャープ 株式会社(2014年2月4日発表)

電機とITの決算

 ≫ 2013年度第3四半期決算と通期予想:NEC、富士通

 ≫ 2013年度第3四半期決算と通期予想:日立製作所、東芝、三菱電機

 ≫ 2013年度第3四半期決算と通期予想:ソニー、パナソニック、シャープ

 ≫ 国内電機の2013年度第3四半期決算と通期予想のまとめ

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