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国内の電機8社の2013年度第2四半期決算(2013年4月1日~9月30日)と通期予想が出そろいましたので、概況を整理します。
リーマンショック後の需要減速、中国や韓国をはじめとしたアジア勢のシェア拡大、タイの洪水や東日本大震災、一時1ドル70円台となる円高など、様々な苦境を乗り越えて回復基調にあるように見受けられます。
最近の国内外の景気持ち直し、円安影響で、構造改革や強みを活かした得意分野へのシフトの進み具合によって、各社の業績に差が出てきています。
NEC、富士通
ICT関連事業が中心のNECと富士通は、官公庁を中心とした国内のシステム開発は堅調であったものの、スマートフォン関連事業の不振が大きく影響しています。
NEC
売上高、営業損益、純損益の全指標で、前年度同期を下回っています。
- ・パブリック事業やエンタープライズ事業が寄与して増収となったものの、システムプラットフォーム事業の減収に加え、携帯電話販売事業や電子部品事業の非連結化による減収
- ・スマートフォン関連事業の新規開発を停止したことにより、販売できなくなった製品や部品の処分で約110億円の特別損失を計上
通期予想は、売上高:3兆円、営業損益:1,000億円、純損益:200億円
- 前回予想を据え置いています。
富士通
売上高、営業損益、純損益の全指標で、前年度同期を上回っています。
- ・携帯電話の大幅減収やネットワークサービスも減収となったものの、システムインテグレーションが増収、北米向けオーディオナビゲーション機器や光伝送システムの伸長、LSIや電子部品の増収が寄与
- ・スマートフォン関連事業で200億円超の営業赤字を計上し、年間出荷予想を下方修正
通期予想は、売上高:4兆6,200円、営業損益:1,400億円、純損益:450億円
- 前回予想に対し、売上高を700億円増と、上方修正しています。
日立製作所、東芝、三菱電機
日立製作所や東芝及び三菱電機は、リストラ主導型の回復から、得意分野での売上拡大と利益増加というパターンに移行しつつあります。
日立製作所
売上高、営業損益、純損益の全指標で、前年度同期を上回っています。
- ・国内ICT投資の復調、自動車関連事業の拡大などにより増収
- ・円安効果(前年同期比440億円増)に加え、グループ横断での部材集中購買によるコスト構造改革(約430億円)などで営業利益拡大に寄与し、期首時点の純利益予想150億円を大きく上回る結果
通期予想は、売上高:9兆2,000億円、営業損益:5,000億円、純損益:2,100億円
- ・前回予想を据え置いています。
- ・中国金融引き締めの影響や新興国を中心としたリスクを考慮
東芝
売上高と営業損益は前年度同期を上回っていますが、純損益は税金費用増加の影響で下回っています。
- ・メモリやストレージ事業に加え、㈱ニューフレアテクノロジーの新規連結効果で増収となった電子デバイス部門が増収をけん引(同部門の営業損益は上期では過去最高を達成)
通期予想は、売上高:6兆3,000円、営業損益:2,900億円、純損益:1,000億円
- ・前回予想に対し、売上高で2,000億円増、営業損益で300億円増と、上方修正しています。
- ・上期増収とNADN型フラッシュメモリ好調による営業損益増などを見込む
三菱電機
売上高と純損益は前年度同期を上回っていますが、営業損益は重電システムと情報通信システムの2部門の減益により下回っています。
- ・中国や韓国のスマートフォンメーカー向けのファクトリーオートメーション(FA)、海外の昇降機や自動車機器事業、国内外の空調機器の伸長に加え、円安の好影響
通期予想は、売上高:3兆9,500円、営業損益:2,200億円、純損益:1,200億円
- ・前回予想に対し、売上高で1,400億円増、営業損益で150億円増、純損益で100億円増と、全ての指標を上方修正しています。
- 円安影響に加え、中国などの海外昇降機事業が好調、アジアでのFAシステム事業や北米の自動車機器事業が堅調
ソニー、パナソニック、シャープ
ソニーやパナソニック及びシャープは、旧来ハードウェアの底打ちが見えない部分があるものの、安定した事業を持つことによる事業全体の成長を目指しています。
決算発表翌日(11/1)のソニーとパナソニックの株価が対照的な値動きを見せていました。
(通期予想を下方修正したソニーが11%安、上方修正したパナソニックは6%高)
これまでは、リストラが先行していたソニーの評価が高く、年央に時価総額で逆転していましたが、住宅や自動車関連が好調なパナソニックが夏以降は再逆転しました。
ソニー
売上高、営業損益、純損益の全指標で、前年度同期を上回わり、純損益が158億円の赤字に縮小しています。
- ・構造改革を進めたテレビ事業の赤字は縮小し、販売が好調なスマートフォンがけん引したエレトロニクス事業は3年ぶりに黒字に転換したものの映像事業が赤字
- ・営業利益は、構造改革費用125億円(前年同期228億円)、持分法による投資損失25億円(同35億円)を計上
通期予想は、売上高:7兆7,000億円、営業損益:1,700億円、純損益:300億円
- ・前回予想に対し、売上高で2,000億円減、営業損益で600億円減、純損益で200億円減と、全ての指標を下方修正しています。
- ・ビデオカメラ及びデジタルカメラ、PC、液晶テレビの年間販売台数の下方修正が影響
- ・なお、グループ全体の構造改革費500億円は、変更なく見込まれています。
パナソニック
売上高、営業損益、純損益の全指標で、前年度同期を上回っています。
- ・国内通信事業者向けスマートフォンの新製品開発中止やヘルスケア事業の譲渡に加え、薄型テレビなどのデジタルコンシューマー関連事業が減収したものの、グローバルでの市場回復による車載関連事業の伸長と国内住宅関連事業の堅調、円安効果が寄与
通期予想は、売上高:7兆4,000円、営業損益:2,700億円、純損益:1,000億円
- ・前回予想に対し、売上高で2,000億円増、営業損益で200億円増、最終損益で500億円増と、全ての指標を上方修正しています。最終黒字は3期ぶり
- ・プラズマテレビや国内個人向けスマートフォン事業からの撤退などで巨額のリストラ費用を計上する下期は最終赤字と見込んでいるものの、住宅及び車載関連事業などの増収を見込む
- ・なお、今期の構造改革費を約1,200億円予定していましたが、半導体やデジタルカメラなどの赤字事業分を前倒しして約1,700億円まで積み上げしています。
シャープ
売上高、営業損益、純損益の全指標で、前年度同期を上回っていますが、純損益は依然赤字となっています。
- ・液晶事業の営業損益が8四半期ぶりに黒字化し、太陽電池や複写機の販売が堅調で、特に液晶テレビの販売は5%減の369万台であったものの、強みの60インチ以上の市場は伸長
通期予想は、売上高:2兆7,000円、営業損益:800億円、純損益:50億円
- ・前回予想を据え置いています。
- ・なお、これまでの公募増資と第三者割当増資で約1,265億円を調達し、今後は営業キャッシュフロー改善で内部留保を厚くしていくとしています。
- ・液晶テレビ組立工場の売却を一部見直し、メキシコ工場などは当面自社で保有することとし、中国やマレーシア工場についてもすぐに売却することはないとしています。
2013年度第2四半期決算と通期予想
電機各社の決算発表
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