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先日(2月1日)、シャープから2012年度第3四半期(2012年4~12月)の決算が発表されましたので、その概要を整理しておきます。
第3四半期だけであれば、売上高、営業損益、経常損益、純損益の全ての指標で前年同期を上回りましたが、累計では前年同期から下回っています。
しかし、5期ぶりに四半期で営業利益が26億円(前年同期は△237億円)と黒字になりました。
液晶関連の不良在庫処分、工場などの設備の除去及び減損などの構造改革効果が貢献したようですが、来期以降の本格回復はこれからが正念場と考えています。
そして、今年9月までに新たに約2,000億の資金を捻出して資金不足を切り抜けるためにも、本業回復を急がなければならないことが見えてきました。
なお、本日現在の電機各社の速報値も最後に整理しておきます。
シャープの第3四半期累計
第3四半期累計の各指標の概要は、以下の通りです。
- ・売上高 :1兆7,824億円(前年同期比:6.4%減)
- ・営業損益: △1,662億円(前年同期差:1,754億円減)
- ・経常損益: △1,991億円(同:1,962億円減)
- ・純損益 : △4,243億円(同:2,108億円減)
なお、2012年度の通期予想については、セグメント単位では一部変更があったものの、全体では前回予想を据え置いています。
液晶事業の苦戦に加えて、不良在庫を中心に棚卸評価損300億円を原価計上したことなど、1,550億円の営業赤字は免れない見通しです。
セグメント別の第3四半期累計(2012年4~12月)
注:営業損益は振替未反映
エレクトロニクス機器
売上高:9,787億円(前年同期比23.2%減)、営業利益:223億円(同336億円減)
AV・通信機器
- ・売上高:5,404億円(同36.5%減)、営業損益:△158億円(同272億円減)
- ・液晶カラーテレビは、新興国で販売を伸ばしたものの、国内市場の低迷に加え、中国では尖閣問題に伴う不買運動の影響を受けています。
コスト面では、堺工場を鴻海精密工業との共同運営に昨年切り替えたことにより、パネルの調達費用がある程度適正化したとしています。
- ・携帯電話は、スマートフォン「アクオスフォン ゼータ SH-02E」が好調だったようですが、期初にクアルコムからの部品調達が滞った影響で通期では前期の実績を下回る見込みとしています。
健康・環境機器
- ・売上高:2,298億円(同4.3%増)、営業利益:248億円(同12億円増)
- ・エアコンや洗濯機などの販売が好調に推移しているようです。
情報機器
- ・売上高:2,085億円(同3.1%増)、営業利益:133億円(同75億円減)
- ・国内向けカラー複合機やインフォメーションディスプレイが好調に推移しているようです。
電子部品
売上高:8,037億円(同27.6%増)、営業損益:△1,621億円(同1,417億円減)
液晶
- ・売上高:4,765億円(同40.2%増)、営業損益:△1,273億円(同1,136億円減)
- ・スマートフォン向けなどが伸長したものの、タブレット端末向けなどは低調だったようです。
- ・亀山第2工場の稼働率は下期を通して6割程度だったとし、価格競争は激化している状況で通期計画(営業赤字1,440億円)に対し、赤字がさらに膨らむ可能性もあるとしています。
太陽電池
- ・売上高:1,490億円(同6.5%減)、営業損益:△142億円(同5億円増)
- ・国内ではメガソーラー案件などが伸長したものの、欧州の需要停滞が影響し、国内での売り上げが8割に達しています。
- ・国内は政策効果などにより産業用が伸びたようですが、価格競争が厳しく通期での黒字転換は困難としています。
その他電子デバイス
- ・売上高:1,782億円(同36.3%増)、営業損益:△205億円(同286億円減)
- ・スマートフォンやタブレット端末向けのカメラモジュールやLEDの販売が伸びたようです。
構造改革の進捗
- ・当初の年間目標4,000億円に対し、第3四半期累計で2,944億円(74%)進捗しています。
- ・内訳は、
「大型液晶事業のオフバランス化」で目標値1,100億円に対し1,100億円(100%)、「設備投資の圧縮」で目標値700億円に対し647億円(92%)と概ね達成していますが、
「在庫の適性化など」で目標値1,500億円に対し1,148億円(77%)、「第三者割当増資」が目標値669億円に対し49億円(7%)の進捗にとどまっています。
- ・特に「第三者割当増資」はクアルコムからの出資49億円のみで、鴻海グループとの協議にかかっているようです。
今年9月までに新たに約2,000億円の資金調達が必要
シャープは、これまでコマーシャル・ペーパー(CP)などの直接金融で資金を調達してきていましたが、今回の業績悪化でCPの新規発行が困難となり、みずほコーポレート銀行や三菱東京UFJ銀行からの支援に頼っている状況となっています。
両行は昨年9月末に、本社や工場などの固定資産を担保とし、追加で3,600億円を融資しました。
第3四半期決算の財務諸表を見ると、
- ・短期借入金は6,725億円(前年度末2,123億円に対し約3倍)になり、CPは80億円(前年度末3,510億円)に減少しています。
- ・そして、有利子負債の総額は1兆1,827億円となっていますが、手元資金は1,640億円しかありません。
この有利子負債の内、1年以内償還予定の社債が2,005億円あり、その大半が今年9月に償還期限のはずなので、それまでに本業海部による売上増と経費削減などにより新たに資金を調達しなければなりません。
大半が構造改革によるものとはいえ、第3四半期は営業黒字になりました。
来年度は、現在の商品ごとの16事業本部体制から顧客別の3カンパニー制(個人向け、法人向け、製造業向け)に変更することを発表しています。
液晶や太陽電池などの主要事業の競争は激しい状況ではありますが、第4四半期も構造改革の継続と本業の本格的な回復への転換を進め、来年度の復活を期待しています。
国内電機各社の発表値
参照
2013. 2. 4 NECの2012年度第3四半期決算、4期ぶりに黒字化(当サイト)
2012.11. 6 国内電機の2012年度上期決算と通期業績予想(当サイト)
電機他社の決算
・日本電気 株式会社:2013年1月31日
・富士通 株式会社:2013年2月7日発表予定
・株式会社 日立製作所:2013年2月4日
・株式会社 東芝:2013年1月31日
・ソニー 株式会社:2013年2月7日発表予定
・パナソニック 株式会社:2013年2月1日
・三菱電機 株式会社:2013年2月4日
電機とITの決算 ≫ シャープの2012年度第3四半期決算、5期ぶりに営業黒字
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