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先週、国内電機主要8社から、2012年度(平成24年度)第2四半期(2012年4~9月)業績と通期予想が出そろいました。
そこで、2012年度の各社の業績を整理します。
東証の業種別時価総額比率は、首位の「電気機器」は年初の14%から今や12%にまで低下し、10%を占める自動車など「運送機器」と逆転する可能性も出てきました。
昨日、トヨタが純利益を200億円の上方修正して7,800億円になる見込みを発表しましたが、日本経済の「けん引役」でもある電機各社の復活を期待しています。
- ・売上高は、NEC以外の7社が前回の予想に対して下方修正しました。
- ・営業利益は、富士通が200億円、東芝が400億円、パナソニックが1,200億円、シャープが550億円と、5社が下方修正しました。
- ・最終損益では、パナソニックが前回予想500億円から一転7,650億円の赤字(8,150億円下方修正)、シャープが同2,500億円損失から4,500億円の赤字(2,000億円下方修正)となり、富士通(350億円)と東芝(250億円)も下方修正したものの黒字を確保しています。
特に今回のパナソニックとシャープの発表には、ショックを受けました。
パナソニック発表の中、「課題認識と今後の対応について」の社長説明で、
- ・全売上の1/4に過ぎないデジタルコンシューマー関連が今回下振れの8割となり「当社はこの分野で負け組」、大規模投資からのリターンで埋められず減損している「普通の会社ではない」と発言がありました。
- ・決して開き直りではなく再出発の決意と思いますが、トップとしての強いリーダーシップで牽引して欲しいと感じました。
営業キャッシュフローがマイナスのシャープは、
- ・決算短信「3.継続企業の前提に関する重要事項等」において、「継続企業の前提に関する重要な疑義を生じさせるような事象及び状況が存在しております。」とし、「これらの具体的な対応策を実施することにより、継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められないと判断しております。」と記載しました。
- ・9月末に主力2行から3,600億円(来年6月末期限)の追加融資を受けて年度内の資金繰りに目途はついたらしいですが、来年9月には2,000億円の新株予約権付社債(CB)の償還期限が迫っているようです。
何としても、今年度中に構造改革を断行して、回復基調に転換して頂くことを期待しています。
各社の2012年度通期の業績予想
各社の2012年度通期の業績予想は、以下の通りです。
NEC
- ・全ての指標において、唯一前回予想を維持しました。
- ・第二四半期の業績は好調でしたが、本格的な回復基調に転換したかは今後の業績を見定めていくことが必要と考えます。
- ・上期の海外売上比率は16.1%と前年度並みで、当面の目標とする25%(2017年度50%)までには中期戦略の迅速な実行が必要です。
- ・主力事業の「ITソリューション事業」は依然として国内企業のIT投資や通信会社の設備投資に依存するところが大きく、競合他社との差別化がさらに必要となります。
- ・パーソナル事業においては、携帯電話やビジネスPCの一層の拡大に加え、立ち上がりつつあるタブレットの飛躍(特に業務活用)が必要と考えます。
富士通
- ・売上は、テクノロジーソリューションで600億円、デバイスソリューションで650億円など、前回予想に対して1,100億円下方修正して4兆4,200億円になる見込みです。
- ・営業利益は、デバイスソリューションで270億円、ユビキタスソリューションで50億円など、合計200億円下方修正して1,000億円になる見込みです。
- ・純利益は、経常利益の減少に加え、LSI事業の特別損失100億円を織り込んで、350億円下方修正して250億円になる見込みです。
- ・テクノロジーソリューション
売上600億円下方修正(国内50億円増、海外650億円減)
国内サービス事業が堅調でしたが、欧州を中心とした景気悪化の影響、ネットワークプロダクトでの北米通信キャリアの投資回復遅れの影響を考慮して下方修正(円高による為替影響150億円も織り込む)。
- ・ユビキタスソリューション
売上100億円下方修正(国内50億円増、海外150億円減)
パソコンの国内外での市況悪化や価格低下、モバイルウェアの車両減産の影響を考慮して下方修正。
- ・デバイスソリューション
売上650億円下方修正(国内400億円減、海外250億円減)
スマートフォン向けを除く民生機器を中心とした所要減でLSIで300億円減、パソコン向けを中心とした所要減や為替の影響を織り込み電子部品で350億円減。
日立
- ・建設機械部門や高機能材料部門などの不振を考慮して、売上のみ1,000億円下方修正して9兆円になる見込みです。
但し、売却事業の影響を除くと1%減にとどまる見込みです。
- ・「2012 中期経営計画」では、売上高10兆円、営業利益率で5%超、最終利益で2,000億円台、D/Eレシオで0.8倍以下、株主資本比率20%の指標を掲げていますが、売上高は1兆円下回る以外の指標は計画通りを見込んでいます。
東芝
- ・売上で3,000億円、営業利益で400億円、純利益で250億円と、全てを下方修正しました。
- ・社会インフラ部門は国内外の需要を取り込み上方修正したものの、デジタルプロダクツと電子デバイスの部門は映像事業や半導体事業を中心として減収減益となる見込みです。
ソニー
- ・売上のみ2,000億円下方修正して、6兆6,000億円になる見込みです。
- ・イメージング・プロダクツ&ソリューション部門は、コンパクトデジタルカメラの年間販売台数の見通しを前回1,800万台から1,600万台とし、売上及び営業利益とも下方修正しました。但し、前年度比では増収増益。
- ・ゲーム部門は、携帯型ハードウエアの年間販売台数の見通しを前回1,200万台から1,000万台とし、売上を下方修正しました。但し、前年度比では減収減益。
- ・モバイル・プロダクツ&コミュニケーション部門は、PCの年間販売台数の見通しを前回920万台から850万台とし、売上及び営業利益を下方修正しました。
前年度比では、ソニーモバイルが連結され大幅増収するものの、営業損益については多額の評価差益を計上したことなどにより大幅悪化します。
- ・ホームエンターテイメント&サウンド部門は、液晶テレビの年間販売台数の見通しを前回1,550万台から1,450万台とし、売上を下方修正しました。なお、前年度比では大幅減収、損失の大幅縮小です。
- ・デバイス部門は、電池関連製品やイメージセンサーの売上が想定を下回る見込みで減収するものの、営業利益はケミカルプロダクツ関連事業の売却益などにより増益を見込んでいます。
- ・映画部門は、映画作品の公開スケジュールの見直しなどにより、売上を下方修正しました。但し、前年度比では増収増益です。
- ・音楽及び金融部門は、売上及び営業利益とも修正はありませんでした。
パナソニック
- ・売上で8,000億円、営業利益で1,200億円、純損益で8,150億円と、オートモーティブ部門を除いた全ての部門で下方修正しました。
- ・市場悪化、新興国の景気減速の影響などにより、デジタルコンシューマー関連商品の大幅な減収減益の見込みで、AVCネットワークス部門を大幅に下方修正しました。
- ・営業外費用として、第2四半期にのれん・無形資産の現存損失含む構造改革費用、第3四半期以降も見込み、純損益は繰延税金資産の取り崩しを法人税等に計上しています。
- ・今後の対応として、デジタルコンシューマー関連事業のスリム化と構造改革(薄型テレビ・パネル事業で2012年度営業利益1,100億円改善見込み)、キャッシュフロー創出(フリーキャッシュフロー2012年度目標2,000億円)、新中期計画の策定(4領域、56BU)
三菱電機
- ・売上のみ1,000億円下方修正して、3兆6,400億円になる見込みです。
- ・中国をはじめとする設備投資の抑制に加え、欧州市場の新車販売不振などにより、産業メカトロニクス部門で売上800億円、営業利益190億円下方修正したのが大きく影響しています。
- ・防衛省などへの費用過大計上や不適切な請求問題については現在も調査が継続中で、返納金などによる影響を今期業績予想には織り込まれていません。
(総務省に関しては7月4日に2,600万円を国庫に納付)
シャープ
- ・売上で400億円、営業利益で550億円、純損益で2,000億円と、全て下方修正しました。
- ・エレトロニクス機器に関しては、ほぼ前回予想通りですが、液晶及び太陽電池部門の下方修正が大きく影響しています。
- ・AV通信機器部門は、液晶カラーテレビの年間売上見通しを3,500億円(800万台)から3,700億円(800万台)に、携帯電話は売上2,400億円は修正なく台数を前回630万台から640万台に、前回予想から上方修正したものの、営業赤字は続きます。
- ・特別損失が900億円から1,650億円(750億円増)、法人税等調整額が200億円から750億円(550億円増)
- ・CPは3月末時点で3,510億円だったのに対し9月末時点で1,675億円(1,835億円減)、短期借入金は同2,123億円から5,112億円(2,989億円増)となっており、CPの減少を短期借入金でカバーしている状況です。
今回、各社の下方修正の主な理由として、信用不安が長期化しているヨーロッパ、景気の減速が鮮明になっている中国での売上低迷、円高の定着などをあげていますが、グローバル化への遅れに加え、かつての特需期における大型投資の負担も重くのしかかっているのではないかと考えています。
その対応策として、薄型テレビをはじめとするデジタル家電事業への投資抑制、資産の売却や流動化、雇用調整などを提示していますが、そこから起因する強み事業の減速や企業内の停滞感などの「負のスパイラル」に陥らないよう、構造改革を実行して頂きたいと考えています。
特にデジタル家電においては、もはや単品量産型ではグローバル市場において勝てなくなっているのかもしれません。
リバース・イノベーション、新たなソリューションやビジネスモデルの開発に期待しています。
参考:当サイト
・2012.10.28 NECの上期決算、増収増益で黒字化
電機各社の発表「2012年度 第二四半期 連結決算発表」
電機とITの決算 ≫ 国内電機の2012年度上期決算と通期業績予想
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富士通の2012年度上期決算(第2四半期2012年4~9月)は海外不振で赤字、通期予想も下方修正