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先日(10月26日)、NECから2012年度上期(第二四半期2012年4~9月)の決算が発表されましたので、その概要を整理しておきます。
売上高、営業損益、経常利益、純損益の全ての指標において、前年同期比も今年7月予想も大きく上まり、中間期としては4年ぶりに黒字となりました。
各指標の概要は、以下の通りです。
- ・売上高:1兆4,478億円(前年同期比:0.3%増、7月予想:478億円増)
ITソリューションやキャリアネットワークがけん引し、液晶関連の特許を鴻海精密工業へ約95億円で売却計上したことが寄与。
- ・営業利益:474億円(前年同期差:407億円増、同:464億円増)
大幅増益となったITソリューションやキャリアネットワークを中心に、全セグメントで黒字化を達成(中には、130億円の構造改革効果も含む)
- ・経常利益:299億円(同:403億円増、同:460億円増)
- ・純損益:80億円(同:190億円増、同:320億円増)
営業利益増加、持分法投資損益の改善、レノボ株式売却計上により黒字に転換。
なお、2012年度の通期予想については、景気先行き不透明などを理由に当初予想を据え置いています。
NECセグメント別の上期決算(2012年4~9月)
ITソリューション事業
- ・売上高:5,783億円(前年同期:7.8%増)、営業利益:228億円(同:221億円増)
内、ITサービスの売上高は3,918億円(同:8.0%増)、プラットフォームの売上高は1,866億円(同:7.2%増)
- ・ITサービスは、通信業、製造業、流通サービス業などで堅調に推移したことに加え、豪州CSG社の連結化により増収となりました。
また、ワークスタイル変革、パッケージ領域、IT基盤などを中心としたクラウド案件の活性化、スマートデバイスの業務活用なども立上げりつつあるようです。
- ・プラットフォームは、大型案件のハード及びソフトウェアを中心に増収となりました。
キャリアネットワーク事業
- ・売上高:3,120億円(同:10.1%増)、営業利益:270億円(同:117億円増)
- ・国内事業が堅調に推移したことに加え、米国コンバージス社の連結化などにより増収となりました。
- ・海外事業については、サービス&マネジメントや海洋システムは増収したものの、モバイルホールでは投資抑制の影響を受けて減収となりました。
社会インフラ事業
- ・売上高:1,419億円(同:1.1%増)、営業利益:82億円(同:21億円増)
- ・社会システム分野で、消防・防災の需要維持、航空宇宙・防衛システム分野が堅調に推移したことにより増収となりました。
パーソナルソリューション事業
- ・売上高:3,025億円(同:14.6%減)、営業利益:12億円(同:22億円減)
- ・モバイルターミナルは、携帯電話の出荷台数が170万台(対当初計画:30万台減)となり減収となりました。
- ・PCその他は、タブレットの立ち上がりやビジネスPCの増加はあったが、個人向けPCの非連結化により減収となりました。
但し、個人向けPCの非連結化の影響を除くと、前年同期比9%の増加となっています。
その他事業
- ・売上高:1,130億円(同:12.0%減)、営業利益:130億円(同:100億円増)
- ・液晶ディスプレイ用パネル事業の非連結化、電子部品事業やエネルギー事業の減少などにより減収となりました。
- ・営業利益は、液晶関連特許の売却などにより増益となりました。
構造改革の進捗
- ・2012年度内に400億円の改善効果を確保でき、人員削減計画を完了。
- ・事業構造改革やグループスタッフの効率化で200億円(応募者数:2,393人)、外部リソース削減で40億円、役員や管理職及び一般従業員の月収削減などで160億円。
事業構造改革の状況
- ・携帯電話事業の構造改革を推進中(170億円の改善効果)
- ・NECカシオモバイルコミュニケーションズ及びNEC埼玉の開発・生産体制のスリム化が完了し約500人削減で110億円、海外JDM(Joint Design Manufacturer)の本格活用をスタート。
プラットフォーム事業では体制のスリム化完了により60億円、NECトーキン(電子部品事業)ではキャパシタ事業の再構築が完了。
今後3年間の重点テーマ:成長戦略、経営基盤強化
- ・「成長戦略」では、世界中の政府・企業に対する社会インフラ基盤提供に注力
- ・「経営基盤強化」では、収益基盤の強化と資産効率化の推進
をあげています。
また次期中期計画では、
「経営再建と安定的なキャッシュフロー創出」「成長のための戦略実行等競争優位の構築」を果たす期間と位置付けています。
以上、第二四半期の業績は好調でしたが、本格的な回復基調に転換したかは今後の業績を見定めていくことが必要と考えます。
- ・当期の海外売上比率は16.1%と前年度並みで、目標とする2012年度25%(2017年度50%)までには中期戦略の迅速な実行が必要です。
- ・主力事業の「ITソリューション事業」は依然として国内IT投資に依存しており、投資意欲回復待ちの中で他社との差別化が課題となります。
特にITサービスは、製造業や流通サービス業を中心とした投資の再開、堅調な通信事業者など、プラットフォームは、三井住友銀行向け勘定系システムの受注案件の下期業績一部貢献が期待されます。
- ・「パーソナル事業」においては、携帯電話やビジネスPCの一層の拡大に加え、立ち上がりつつあるタブレットの飛躍(特に業務活用)が必要と考えます。
参照
電機他社の発表予定
・富士通 株式会社:2012年10月31日
・株式会社 日立製作所:2012年10月30日
・株式会社 東芝:2012年10月31日
・三菱電機 株式会社:2012年10月31日
・パナソニック 株式会社:2012年10月31日
・ソニー 株式会社:2012年11月1日
・シャープ 株式会社:2012年11月1日
電機とITの決算 ≫ NECの2012年度上期決算、増収増益で黒字化
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