このページ内の目次
昨日、国内主要電機8社の2011年度(平成23年度、2011年4月~2012年3月)の通期決算と2012年度予想が出揃いましたので整理します。
欧州及び東アジアの景気減速や為替円高、タイの洪水による部品調達の逼迫に、総崩れしたテレビ関連事業がさらに追い打ちをかけ、国内の電機各社は苦境に立たされています。
2011年度通期の最終損益は、以下の通りです。
・重電系総合メーカー3社は通期で最終黒字
日立製作所(3,471億円)、三菱電機(1,120億円)、東芝(737億円)
・弱電系家電メーカーの3社は大赤字
シャープ(△3,760億円)、ソニー(△4,567億円)、パナソニック(△7,722億円)
・ITサービス事業中心の2社、富士通(427億円)、NEC(△1,102億円)
5月11日、市場では以下の動きがありました。
- ・「家電量販店大手のビックカメラが同業のコジマを買収する」と報じ、テレビ販売不振で家電製品市場は縮小が続いています。
電機各社が構造改革を急ぐ中、川下の量販店でも再編が続きそうです。
- ・テレビ関連株がそろって次第安を展開しました。
ソニーは1,200円台割れ(1987年4月以来25年ぶり)、パナソニックは570円割れ(1971年1月以来41年ぶり)、シャープも400円を割れ(41年ぶり)の安値
2012年度は、シャープ以外の7社が黒字を見込んでいます。
パナソニックはテレビ事業を中心として工場売却や人員削減を進めており、シャープは台湾企業の出資を受け入れて液晶事業などの立て直しを目指ものの300億円の赤字を予想しています。
電機各社が構造改革を推進し、業績が回復することを期待しています。
国内電機各社の2011年度通期決算と2012年度の予想
NEC、富士通、三菱電機、シャープの4社に関しては、先に当サイトで整理していますので、以下では業績のみを載せておきます。
日本電気㈱
富士通㈱
㈱日立製作所
2011年度通期決算の概況
売上高は増収、営業利益は減益となるものの、純利益は2期連続で過去最高を更新
純利益はコスト削減や一部事業の売却益も貢献
東日本大震災の影響:売上高で2400億円、営業利益で750億円、純利益で650億円
タイの洪水被害の影響:売上高で800億円、営業利益で200億円、純利益で150億円
[情報・通信システム]
- ・売上高は前年比6.8%増の1兆7,642億円、営業利益は31億円増の1,017億円
- ・ソフトウェア/サービスの売上高は、前年比9%増の12,222億円、営業利益は前年並の862億円(ソフトウェア、サービス、ハードウェアともに増収)
- ・国内のサービスや海外のストレージ、コンサルティングなどの増加により増収
[電力システム]
- ・売上高は同2.4%増の8,324億円、営業損失は560億円悪化の△339億円の赤字
- ・国内の火力発電システムなどが堅調に推移し微増
- ・欧州の火力発電の不具合による追加費用などにより、大幅に減益
[社会・産業システム]
- ・売上高は同4%増の1兆2,049億円、営業利益は92億円増の491億円
- ・国内プラント関連案件の増加、海外の昇降機事業が堅調に推移し増収増益
[電子装置・システム]
- ・売上高は同2%増の1兆1,017億円、営業利益は127億円増の499億円
- ・日立メディコがアロカを子会社化したことなどにより増収
- ・構造改革の推進、日立工機のコスト削減などにより増益
[建設機械]
- ・売上高は同6%増の7,987億円、営業利益は140億円増の631億円
- ・国内復興需要、アジア向けのマイニング機器などの伸長により、中国市場の減少をカバーして増収増益
[高機能材料]
- ・売上高は同2%増の1兆4,371億円、営業利益は74億円減の770億円
- ・日立金属が自動車向け製品での好調により増収
- ・日立金属、日立電線は増益したもの、日立化成が災害などの影響で、全体で減益
[デジタルメディア・民生機器]
- ・売上高は同10%減の8,588億円、営業損失は258億円減の109億円の赤字
- ・光ディスク関連製品や薄型テレビの価格下落の影響などにより、減収減益
参考
- ・ウエスタンデジタルに売却した日立グローバルストレージテクノロジーズによるHDDドライブ事業の業績(2011年1~12月)は、売上高同13%減の4,608億円
- ・営業利益は同36%減の368億円(HDDの出荷台数は同8%減の1億470万台)
2012年度の見通し
- ・社会イノベーション事業を5グループ体制に再編し、横断的組織として社会イノベーションプロジェクト本部を新設
⇒ インフラシステム、情報・通信システム、電力システム、建設機械、高機能材料
- ・「スマトラ」で財務体質を強化、成長投資に向けたキャッシュ創出などに取り組む
- ・日立グループ中国アジア地区総裁を設置、外国人取締役を2人選出してグローバル経営体制を確立
- ・情報通信システムは、ソフトウェアなどの減収を見込む一方、サービスの金融分野での大型案件などが堅調に推移するなどから増益を見込む
- ・電力システムは、新興国などにおける火力発電が堅調に推移、自然エネルギー事業の増加などにより、前年並みの見通し
一時費用及び原価低減などにより、営業利益が大幅に改善する見通し
- ・社会産業システムは、海外プラント関連機器や工事、中国を中心とした昇降機が堅調に推移することにより、増収増益の見通し
- ・電子装置システムは、半導体製造装置や工業材料、電動工具伸長により増収増益
- ・建設機械は、新興国や米国での油圧ショベル伸長、中国市場の回復などにより増収
- ・高機能材料及びオートモティブシステムは、自動車向け製品を中心に伸長などで、増収増益の見通し
- ・デジタルメディア民生機器は、白物家電や業務用空調は堅調に推移するが、薄型テレビの大幅減少などで減収、事業構造改革や収益改善などで大幅に増益の見通し
㈱東芝
2011年度通期決算の概況
[デジタルプロダクツ]
- ・売上高は前年比13%減の1兆6,640億円、営業損益は571億円減の△282億円
- ・テレビなどの映像事業が新興経済地域で伸張したが、国内のテレビ販売減、価格下落などで減収
- ・パソコン事業も急激な円高や欧米の伸び悩みで減収
- ・損益面ではパソコンはコスト削減の徹底などで増益、映像事業は地上デジタル放送への移行完了に伴い国内の販売減、価格下落も響き悪化
[電子デバイス]
- ・売上高は同8%減の1兆6,163億円、営業利益は190億円増の902億円
- ・民生危機向けの需要低迷により、全体で減収
- ・メモリはスマートフォン向けなどで販売増、記憶装置事業のHDDを中心に好調、液晶ディスプレイ事業改革などにより、全体で増益
[社会インフラ]
- ・売上高は同6%増の2兆4,128億円、営業利益は同46億円増の1,342億円
- ・電力社会インフラシステム事業が、買収によるグローバル展開の加速と火力及び水力発電システムを中心に好調で増収増益
[家庭電器]
- ・売上高は同4%減の5,768億円、営業利益は31億円減の57億円
- ・LED照明が好調であったが、白物家電の需要減などにより減収減益
2012年度の見通し
- ・デジタルプロダクツ部門は、堅調なパソコン事業、流通事務用機器事業の買収効果、映像事業の改善施策効果を見込み、部門全体として増収増益の見通し
- ・電子デバイス部門は、システムLSIなどの改善、メモリやハードディスクなどの統合ストレージ伸長により増収増益の見通し
- ・社会インフラ部門は、電力社会インフラ及び医用システムなどが堅調で増収増益
- ・家庭電器部門は、LEDなどの一般照明事業の堅調、白物家電の改善により増収増益
参考:パソコン売上高(営業利益) 単位:億円
2009年度:8,890(△88)、2010年度:9,174(101)、2011年度:8,229(114)
ソニー㈱
2011年度通期決算の概況
[コンスーマープロダクツ&サービス(CPS)]
- ・売上高は前年度18.5%減の3兆1,368億円、営業損益は2,406億円減の△2,298億円
液晶テレビ、PC、デジタルカメラなどのデジタルイメージング製品、ゲームが減収
- ・営業損益は、減収による売上総利益の減少、売上原価率の悪化などによるもの
構造改革費用として、前年度の287億円に対し当年度は96億円を計上
[プロフェッショナル・デバイス&ソリューション(PDS)]
- ・売上高は同12.6%減少の1兆3,138 億円、営業損益は同479億円減の△202億円
主にコンポーネントカテゴリーの減収による
- ・営業損益には、構造改革費用として前年度の199億円に対し265億円を計上
[映画]
- ・売上高は同9.6%増の6,577億円、営業利益は46億円減の341億円
米国のネットワーク向け売上及びケーブルテレビ向けに制作した番組の売上が増加
- ・営業利益は、スパイダーマン関連商品の権利売却(営業利益214億円)計上したが、前年度GSN支配権取得にともなう270億円の評価差益、SPE保有のHBO持分売却益合計303億円を計上したことなどによる
[音楽]
- ・売上高は同5.9%減の4,428億円、営業利益は同20億円減の369億円
主要作品のヒットがあったものの、円高及びパッケージメディアの継続縮小が影響
[金融]
- ・売上高は同8.1%増加の8,719億円、営業利益は126億円増の1,314億円
ソニー生命の保有契約高拡大による保険料収入増加などで、11.6%増の7,777億円
- ・営業利益は、ソニー銀行の為替差損益が差損に転じたことによる営業損益の悪化があったものの、主にソニー生命の増益が貢献
2012年度の見通し
- ・CPSは、液晶テレビは減収を見込むものの、デジタルイメージング製品やPCで見込まれることにより、全体で大幅な増収を見込む
- ・PDSは、半導体カテゴリーは中小型ディスプレイ事業売却による減収するものの、全体では増収を見込む(損益は大幅に改善し黒字化)
- ・映画は、劇場公開作品数増加にともなう劇場興行及び映像ソフト収入の増加、米国向けの番組収入の増加などにより、全体で増収を見込む
- ・音楽は、パッケージメディアの縮小が見込まれるものの、デジタル配信収入の拡大などで、ほぼ前年度並みを見込む
- ・金融は、引き続き堅調に推移することにより増収、営業利益は減少を見込む
パナソニック㈱
2011年度通期決算の概況
[AVCネットワークス]
- ・売上高は前年度比21%減の1兆7,135億円、営業損益は同951億円減の△678億円
- ・ノートパソコンなどの売上が前年度を上回るものの、薄型テレビやデジタルカメラなどの売上が減少し、全体では減収減益
- ・液晶テレビが同28%減の3,923億円、プラズマテレビが同41%減の2,838億円、デジタルカメラが同20%減の1,466億円、BDレコーダーが同2%減の1,145億円
[アプライアンス]
- ・売上高は同3%増の1兆5,342億円、営業利益は同25億円減の815億円
- ・洗濯機や電子レンジなどの売上が堅調に推移した結果増収、営業利益は原材料高騰の影響などが影響
[システムコミュニケーション]
- ・売上高は同10%減の8,408億円、営業利益は同303億円減の173億円
- ・小型複合機や業務用ハンディターミナル、携帯電話などの売上が減少が影響
[エコソリューション]
- ・売上高は同微減の1兆5,258億円、営業利益は同10億円増の589億円
- ・ライティング事業の売上減少するものの、エナジーシステムやハウジングシステム、環境システム事業が前年度と同水準の売上を確保し、全体でも前年度並み
[オートモティブシステムズ]
- ・売上高は同7%増の6,532億円、営業利益は同178億円減の49億円
- ・ハイブリッドカー用バッテリーなど、環境対応車向けデバイス売上が好調に推移し、増収となるものの、営業利益は合理化未達などにより大きく悪化
[デバイス]
- ・売上高は同16%減の1兆4,046億円、営業損益は同865億円減の△166億円
電子部品が同5%減の6,527億円、半導体が同40%減の1,541億円
- ・一般電子部品や半導体の売上が減少し、減収減益
[エナジー]
- ・売上高は同3%減の6,149億円、営業損益は同57億円減の△209億円
- ・太陽光発電システム事業が国内で堅調に推移するものの、リチウムイオン電池事業の売上が減少し、減収減益
2012年度の見通し
- ・大規模な構造改革とグループ再編を行った後の初年度
- ・「収益にこだわる」「商品を鍛える」「自ら変わる・変える」の3項目を共通基本指針として、新事業体制の真価を発揮
- ・テレビ事業は、約1,300億円の大幅な収益改善を見込む
構造改革効果による固定費の大幅圧縮、セット事業の不採算モデルの絞り込みとコストダウン、パネル事業での付加価値を確保できる非テレビ分野への用途展開など
- ・ソーラーやリチウムイオン電池などのエナジー関連、アプライアンスなどの成長事業での増販による増益を追求
- ・デバイスやシステムの事業では、最適な価値提案を継続的に行うソリューション型ビジネスモデルの構築
三菱電機㈱
シャープ㈱
国内電機各社の2011年度通期決算
【参考:当サイト】
・2012.5.5 三菱電機とシャープの2011年度通期決算と2012年度予想
・2012.5.3 富士通とNECの2011年度(平成23年度)通期決算と2012年度予想
・2012.2.4 国内電機各社の決算 2011年度(平成23年度)第3四半期と通期予想
【参照:2011年度 通期 連結決算発表】
電機とITの決算 ≫ 国内電機8社の決算 2011年度通期決算と2012年度予想
関連記事
前へ
拡張現実(AR)「ミライ系NEW HORIZONでもう一度英語をやってみる」を読んで、書籍との融合を実感
次へ
国内電機各社の2011年度(平成23年度)決算にみる各社の海外売上