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先週4月27日、富士通(株)と日本電気(株)(NEC)が、2011年度(平成23年度)通期決算と2012年度の通期予想を発表しました。
両社とも前年度に対し減収減益となり、NECは1月の最終損益予想をさらに下回り2期連続の最終赤字・無配となりました。
特に、スマートフォンを中心とする携帯電話の売り上げが、富士通は大幅増でNECは大幅減となり、両社の売り上げに影響したようです。
両社の2011年度の決算概要は、以下の通りです。
富士通
2011年度の連結決算は、
売上高が前期比1.3%減の4兆4,675億円、営業利益は同20.6%減の1兆530億円、
最終利益は22.5%減の427億円
欧州の経済不安や円高による輸出の減少に加え、タイ洪水によるカーナビやLSIの売上減が影響したが、スマートフォンを中心とする携帯電話の売り上げは好調で、当初計画700万台を大幅に上回る800万台を出荷
事業構造改善費用として151億円、災害による損失75億円等を特別損失に計上
NEC
2011年度の連結決算は、
売上高が前期比2.5%減の3兆368億円、営業利益は同27.5%増の737億円、
最終損益は1,102億円の赤字
1月にリストラ費用などを含め1,000億円の赤字を予想していたが、株式評価損などが加わり赤字幅が拡大
売上高の減少は、パーソナルソリューション部門の945億円減収(売上6,610億円)が大きく影響
その主な要因は、個人向けパソコン事業を昨年7月に中国レノボと統合、スマートフォンを中心とする携帯電話の出荷が当初計画740万台に対し420万台となったこと
両社の事業部門別の業績概要は、以下の通りです。
富士通
テクノロジーソリューション
□2011年度決算概要
- ・通信キャリアの投資増加により携帯電話基地局などのネットワークプロダクトが増収したが、サーバ関連が減収
- ・システムインテグレーションは、製造、流通、ヘルスケア関連の投資が回復しているものの金融及び公共分野の大型システム商談減少などで、ほぼ前年並み
- ・ネットワークサービスは減収
ユビキタスソリューション
□2011年度決算概要
- ・パソコン
企業向けの大型ロット商談があったものの、個人向け市場で販売価格の低下や、タイの洪水に起因するHDD調達難の影響を受けて、ほぼ前年並み
- ・携帯電話
事業統合効果やスマートフォン市場の拡大により増収
- ・モバイルウェアのオーディオ・ナビゲーション機器
震災やタイの洪水により車両生産が停滞した影響を受けて減収
デバイスソリューション
□2011年度決算概要
- ・LSIは、次世代スーパーコンピュータシステム用CPUの出荷完了した影響、震災影響やタイの洪水影響によりデジタルAV向けを中心として減収
- ・電子部品も半導体パッケージなどの所要が伸び悩み
- ・岩手工場を(株)デンソーに譲渡(予定日2012 年10 月1 日)について最終契約を締結。これに伴い59億円を事業構造改善費用として特別損失に計上
富士通の2012年度業績見通し
- ・国内でネットワークプロダクトが伸長、オーディオ・ナビゲーション機器、電子部品が回復し増収となる見込み
- ・国内ICT投資の回復は製造・流通分野などで進むが本格的回復は下半期になるとの見込み
- ・営業利益は増収効果に加え、ハードウェア製品を中心にグローバルベースでコストダウンを進める
NEC
ITサービス事業
□2011年度決算概要
- ・官公庁向け大型案件の実行に加え、投資が持ち直し傾向にある製造業や自治体で法改正対応、医療機関での電子カルテ導入拡大など需要を取り込み増収
- ・売上増や費用削減、SI革新の推進等による原価低減に加え、不採算案件の抑制により増益
□2012年度業績見通し
- ・スマートフォン関連や金融再編および日系企業の海外進出加速などの事業機会を捉えて増収を目指す
- ・M2Mやビッグデータ活用などの新規事業を拡大
- ・売上増や構造改革効果により増益を目指す
- ・クラウドや海外事業拡大、新規事業の立ち上げ等へ先行投資
プラットフォーム事業
□2011年度決算概要
- ・ソフトウェア:仮想化、クラウド基盤などの運用管理領域の伸長により増収
- ・ハードウェア:タイ洪水の影響により減収
- ・企業ネットワーク:タイ洪水の影響を受けたが、国内大型案件の獲得により増収
□2012年度業績見通し
- ・ソフトウェア:データセンター向けなど運用管理領域の伸長に加え、クラウド対応やビッグデータ対応製品の展開加速により増収を目指す
- ・ハードウェア:省エネやBCPなどに対応した製品の販売に注力し増収を見込む
- ・企業ネットワーク:大型案件に加え、ワークスタイル革新やデータセンター向けソリューションの拡大により増収を見込む
キャリアネットワーク事業
□2011年度決算概要
- ・国内はデータトラフィック増などの需要拡大による事業機会を獲得
- ・海洋システムは大型プロジェクトの実行と案件獲得による増収
- ・モバイルバックホールはIP化対応の新機種で中南米やロシアなどで拡大
□2012年度業績見通し
- ・国内はデータトラフィック増などの需要拡大による事業機会の獲得に注力
- ・海外はサービス&マネジメントの拡大と海洋システムの大型プロジェクト実行により大幅な増収を目指す
社会インフラ事業
□2011年度決算概要
- ・航空宇宙及び防衛システム分野が減少
- ・放送、消防及び防災などの社会システム分野の増加
□2012年度業績見通し
- ・社会システム分野は、放送の投資一巡、消防及び防災の増加により前年並み
- ・航空宇宙及び防衛システム分野の増加により増収を目指す
パーソナルソリューション事業
□2011年度決算概要
- ・モバイルターミナル:携帯電話の出荷台数減により若干の減収
- ・PCその他:個人向けPCの非連結化などに伴い減収
□2012年度業績見通し
- ・モバイルターミナル:携帯電話の出荷台数増も単価下落や機種の変化により微減
- ・PCその他:個人向けPCの非連結化などに伴い減収
なお低迷しているNECは、次期中期計画の策定を開始し、2012年度は構造改革の推進、ITサービス、キャリアネットワーク、社会インフラ、エネルギーの4本柱を軸としたグローバル事業拡大に注力するとしています。
【参考】
2012.4.27 富士通㈱「2011年度(2012年3月期)通期決算」発表資料
2012.4.27 日本電気㈱「2011年度(2012年3月期)通期決算」発表資料
当サイト
2012.2.4 国内電機各社の決算 2011年度(平成23年度)第3四半期と通期予想
電機とITの決算 ≫ 富士通とNECの2011年度(平成23年度)通期決算
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