国内電機各社の2011年度(平成23年度)決算にみる各社の海外売上

国内電機各社の2011年度(平成23年度)決算にみる各社の海外売上

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今回の国内主要電機の2011年度(平成23年度)通期決算発表に基づいて、各社の海外売上の状況について整理します。

そして、直近の予測及び中期計画などから、今後の海外展開への取組み(確認できた企業は売上計画値)についても補足します。

2011年度は、欧州及び東アジアの景気減速や為替円高、タイの洪水による部品調達の逼迫、そこにテレビ関連事業が総崩れした状況ではありましたが、中国をはじめとする新興国を中心として、自動車関連や社会インフラなどの事業を展開してきた企業にとっては売上確保の軸となっています。

また各社の今後の成長戦略においても、国内市場を維持しながら、新興国を中心とした事業拡大が中心となっています。

今後、国内での節電要請が予想される中、商品企画から生産・販売に係る現地主導型ビジネスの強化など、各社のグローバル展開の成否が業績に大きく影響しそうです。

昨日、ソニーとパナソニックが「次世代テレビの本命とされている有機ELテレビ事業で提携交渉に入った」と報じられました。
先行する韓国勢に対抗して、「日本連合」でテレビ事業の生き残りを託す形となりますが、有機ELテレビが期待通りに普及するかどうかも含め、提携実現には様々な課題を解決していくことが必要となりそうです。

国内電機各社の2011年度通期決算概要と今後の取組み(2012年度は予想)

日本電気㈱

2011年度の概要

海外売上高は前年比微増の4,815億円。売上比は21億円増の16%
米国含むその他地域は増収したものの、アジアで同3.5%と欧州同4.9%の減収

キャリアクラウド事業:タイ、ベラルーシ、アルゼンチン等の通信事業者向け支援

パブリックセーフティ領域:グローバル・ビュー社を買収
アルゼンチンでの映像監視サービス

米国コンバージス社の通信事業者向け事業支援システム事業の買収

今後の取組み

中期経営計画「V2012」重点施策の一つとして、2012年度海外比率25%を目指しているが、今後新たに策定を予定中
重点施策:C&Cクラウド戦略の推進、グローバル事業の拡大、新規事業の創出

海外5極の地域統括会社を軸とした現地主導型の事業運営を推進中
北米、中華圏、APAC(アジア太平洋地域)、EMEA(ヨーロッパ、中東、アフリカ)、中南米

富士通㈱

2011年度の概要

海外売上高は前年比2.3%減の1兆5,171億円。売上比は813億円減の43%
為替影響を除くと1%増収、営業利益は80億円、EMEA中心に前年比128億円改善

EMEAの売上高は同3.8%減の8,175億円。為替影響を除くとほぼ前年並み
パソコンがトルコ、中東、ロシアなどの新興国向けに伸長し、サービス事業は北欧や英国民需向けで増収(営業利益は同184億円の改善)

米州の売上高は同7%減の2,775億円。
オーディオナビゲーション機器やLSIが減収、サービス事業も米国などで伸び悩み(営業利益は4億円と、前年比21億円減の4億円)

APAC中国の売上高は同4.1%増の4,219億円。
オーディオ・ナビゲーション機器が減収となるものの、LSIが増収
(営業利益は同34億円減の76億円、オーディオ・ナビゲーション機器の減収影響)

今後の取組み

早期達成水準として海外売上高40%超、長期の成長ビジョンとして50%超を目指す

真のグローバル化加速(国内外の一体化):グローバル・インテグレーション加速横串機能による国内外の一体化

㈱日立製作所

2011年度の概要

海外売上高は前期比2%増の4兆1,314億円。売上比は847億円増の43%
アジアで同3.5%減となるものの、欧州で横ばい、北米で11.3%の増収

電力システム部門などが前年を下回る

オートモティブシステム部門は、世界的な自動車需要の回復で増加

情報通信システム部門も、北米を中心にストレージなどの堅調で前年を上回る

今後の取組み

「2012中期経営計画」達成に向け、社会イノベーション事業のグローバル展開加速
「地域事業や地域にフォーカスした成長戦略の実行、コスト構造改革、ビジネスモデルの改革、人財戦略、地域と歩む企業」の5つの方針に取り組み中

グローバル成長戦略では、日立グループ中国アジア地区総裁を2012年4月に設置
中国北京を拠点に、ASEAN、ミャンマーへの事業拡大を図り、2015年には中国での売上高を2010年比で1.6倍を目指す。

2012年6月の株主総会では、これまでゼロだった外国人取締役を2人選出

㈱東芝

2011年度の概要

海外売上高は前年比6.3%減の3兆3,248億円。売上比は2,219億円減の55%
アジアで同7.9%、欧州で同10.7%、北米で3%の減収

デジタルプロダクツ部門は、パソコン事業において急激な円高による外貨換算調整、欧州における伸び悩み

電子デバイス部門では、液晶ディスプレイ事業においてAFPD社を売却

社会インフラ部門では、ランディス・ギア社の買収効果

今後の取組み

2011年5月24日「経営方針説明会」:注力事業の成長の加速と新たな収益基盤の確立をめざすとともに、グローバル事業の展開を加速させ、グローバルトップへ挑戦

新興国地域への展開、注力事業の強化加速、世界初、世界NO.1商品・サービス開発などを推進

デジタルプロダクツ部門では新興国での地域密着、社会インフラ部門では海外拠点展開などによる売上拡大を目指す

ソニー㈱

2011年度の概要

海外売上高は前年比12.7%減の4兆3,885億円。売上比は6,402億円減の68%
アジアで同12.4%、中国で11.9%、欧州で同17.6%、米国で16.1%と全地域で減収

2012年2月15日、ソニー・エリクソンはソニーの100%子会社となり、社名をソニーモバイルとなる

液晶テレビ事業、欧州及び北米の市場環境悪化等による販売台数減少や価格下落の影響で減収

映画分野は、米国のネットワーク向け売上及びケーブルテレビ向けに制作した番組の売上が増加

今後の取組み

2012年4月12日「経営方針説明会」重点施策の一つとして、新興国での事業拡大を目指す(他施策:コア事業の強化、テレビ事業の再建、新規事業の創出など)

新興国売上(エレトロニクス事業)2011年度1兆8,000億円→2014年度2兆6,000億円

新興国重点施策:サプライチェーンマネジメントとグループ全体での訴求
構成比(AV/IT事業全体)2011年度50%→2014年度60%

パナソニック㈱

2011年度の概要

海外売上高は前年比11.8%減の3兆6,842億円。売上比は4,942億円減の47%
アジアで同13.2%、中国で11.5%、欧州で同13.3%、米国で9.7%と全地域で減収

米州では、中南米が堅調に推移したが、円高の影響もあり前年比90%

欧州、アジア、中国は、デジタルAV商品の需要が伸びず、前年比は90%を下回る

今後の取組み

中期経営計画の2年目として、3つのパラダイム転換中 → 数値目標は見直し予定
既存事業偏重からエナジーなどの新規事業分野へ、日本中心から徹底したグローバル志向へ、単品志向からソリューション・システム志向へ

グローバルに成長力を発揮するために、インド及びブラジルの全社プロジェクトや現地ならではの新規事業創出において、海外各地域の最前線が主導的な役割

美容健康商品のグローバル群展開、新拠点立上げ(インド、ベトナム、ブラジル)、大型空調の欧米展開加速

三菱電機㈱

2011年度の概要

海外売上高は前年比微減の1兆2,201億円。売上比は92億円減の34%
欧州で同5.1%増となるものの、アジアで同2.1%、北米で4.6%の減収

ビル事業は、中国ASEANでの昇降機の需要増加、中国及び韓国向け大口案件計上により、受注売上とも前年度を上回る

FAシステム事業は、韓国や台湾でのフラットパネルディスプレイ関連需要の減少などにより、受注は前年度を下回るものの、アジアでのスマートフォンなどの関連需要は底堅く、売上は前年度を上回る
自動車機器事業は、新興国市場の拡大や北米市場の回復により前年度を上回る

今後の取組み

「成長性、収益性・効率性、健全性」の3視点による「バランス経営」を推進し、強固な経営体質構築と持続可能な成長の実現を目指す
成長戦略の一つとして、中国やインドなどの新興国市場での事業拡大

「強い事業をグローバルでより強く」するための事業体制整備として
既存の事業拠点への設備投資(米国:電力用変圧器工場新設等)
拡大が著しい市場への対応に向けた製造会社(中国:FAシステム、自動車機器等)
新市場開拓に向けた販売拠点(インド、ベトナム)の設立等

シャープ㈱

2011年度の概要

海外売上高は前年比10.8%減の1兆2,747億円。売上比は1,544億円減の52%
中国で6.5%、欧州で同23.2%、米州で4.5%、その他で9%と全地域で減収

AV通信機器では、北米を中心に60型以上の大型モデルの販売が好調に推移

今後の取組み

2012年9月の創業100周年に向けて施策を展開中
オンリーワン商品の絶え間ない創出、大型液晶及び太陽電池等のデバイス事業の構造改革、財務体質の改善強化

2012年4月1日新体制で、オンリーワンデバイス・商品の創出と事業構造改革

健康環境機器で、グローバル展開を強化、アジアでの生産能力を強化
冷蔵庫・洗濯機の新工場をインドネシアに建設

大型液晶で、鴻海グループとの戦略的グローバルパートナーシップの構築

【参考】

・NEC:中期経営計画V2012(2010年2月)

・富士通:経営方針説明会(2011年6月17日)

・日立製作所:2012中期経営計画の進捗状況について(2012年5月10日)

・東芝:経営方針説明会(2011年5月24日)

・ソニー:経営方針説明会(2012年4月12日)

・パナソニック:新中期計画『Green Transformation 2012GT12)』(2010年5月)

・三菱電機:経営戦略(2011年11月)

・シャープ:経営方針

当サイト

・2012.5.11 国内電機の決算まとめ 2011年度通期決算と2012年度予想

・2012.5. 5 三菱電機とシャープの2011年度通期決算と2012年度予想

・2012.5. 3 富士通とNECの2011年度(平成23年度)通期決算と2012年度予想

・2011.5.16 国内電機の海外売上 2010年度(平成22年度)決算と中期目標

電機とITの決算 ≫ 国内電機の2011年度(平成23年度)決算にみる海外売上

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