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ソーシャルシフト
これからの企業にとって一番大切なこと
斉藤 徹 (著)
出版社:日本経済新聞出版社
「ソーシャルメディア」とは、
- ・ソーシャルメディアが誘起する不連続で劇的な変化
- ・そして、マーケティング、リーダーシップ、組織構造に及ぶビジネスのパラダイムシフト
◇ソーシャルメディアが社会にもたらす本質的な変化
◇企業と生活者との新しいコミュニケーションのカタチ
◇すべての顧客接点で、素晴らしいブランド体験を提供するための仕組み
◇それを実現するためのリーダーシップや組織のあり方
◇具体的に企業を変革するためのステップ
本著は、ソーシャルメディアのビジネス活用に関するコンサルティング事業を幅広く展開している(株)ループス・コミュニケーションの代表取締役である著者が、自らの経験と多くのインタビューに基づき、「新しい時代」の「あるべき企業像」を言及した一冊です。
本著の執筆活動のかなりの部分は、2,000人を超える Facebook のグループ「ソーシャルシフトの会」において議論を繰り返して進められ、参加者の意見も多く反映されているのも特徴です。
また本著には、マーケティングやブランドに関する先行理論、ソーシャルメディアを活用している企業事例が多く紹介されています。
Facebook、Twitter、Google+、mixiなどのソーシャルメディアが企業と生活者との新たな関係を創出してきている現在において、これからのビジネスのあり方を学ぶのに大いに役立ちます。
ソーシャルメディアの出現
情報伝達のコアが「友人や知人とのつながり」へと移行し始めた。
「一方向に情報を届ける薄い関係性」ではなく、
「信頼で結ばれたエモーショナルな深い関係性」が大切になる。
Facebookの今後5年の方向性(CEOザッカーバーグ氏)
次の5年間、重要となる指標は、
人々が得た価値の量、費やした時間、アプリの数、動かした経済など
共有される情報量は、指数関数的な割合で増加している。
一人当たりの情報共有量は約2倍(シェアの法則)、少なくとも今後2年間はこのトレンドは続く。
我々は(共有の成長に関する)指数関数カーブの「屈曲部」にいる。
今後開発される機能は、共有に指数関数的成長をもたらす。
企業が直面するパラダイムシフト
不誠実さが通用しない。透明性の時代が訪れる。
共感がパワーとなり、企業には人間性が回帰する。
生活者が、企業のバリューチェーンに参加する。
大企業に、オープン化の波が押し寄せる。
ソーシャルメディアで共感される会社になるためのポイント
1.社会に対する自社の付加価値を見直す。
2.顧客に対する貢献姿勢を明確にする。
3.信頼される企業になる。
4.生活者と同じ目線で対話交流をする。
5.社会に対する貢献姿勢を明確にする。
ソーシャルメディア活用の類型化と41の事例
「ブランディング」、「商品開発」、「コマース」、「顧客支援」に分類し、企画及び運営者へのインタビューや独自の考察を加え、ソーシャルメディア活用の事例が紹介されています。
【紹介されている事例】
コカ・コーラ、伊藤ハム、日本航空、P&G、米国ホンダ、ザッポス、NHK_PR、ペプシ、ルノー、ナイキ、NPR、ビタミンウォーター、Facebook、シースミック、良品計画、スターバックス、デル、I-800-Flowers.com、豚組、リーバイス、トップアドバイザー、バーバリー、ユニクロ、ハブスポット、ニッセン、B&Q、スレッドレス、エッツィー、ディーゼル、メイシーズ、ベストバイ、コムキャット、米国航空会社、ソフトバンク、モバイル、ソーラーウィンズ、シマンテック
オープンリーダーシップにおけるゴールデンルール
顧客や社員の持つパワーを尊重する。
絶えず情報を共有して信頼関係を築く。
好奇心を持ち、謙虚になる。
オープンであることに責任を持たせる。
失敗を許す。
企業をソーシャルシフトする6つのステップ
ステップ1:プロジェクトのコアをカタチづくる。
ステップ2:ブランドコンセプトを練り上げる。
ステップ3:すべての顧客接点を改善する。
ステップ4:オープンに対話できる場をつくる。
ステップ5:顧客の声を傾聴する仕組みを構築する。
ステップ6:社員の幸せと顧客の感動を尊ぶ社風を育む。
ソーシャルメディア・ポリシー
コミュニケーションガイドライン:生活者を対象
社員向けガイドライン:一般社員を対象
運用チーム向けガイドライン:ソーシャルメディア運用チームを対象
その他、参考となる主な記述
炎上の予防と発生時の対応
従来型と比較したオープンリーダーシップの特徴
ソーシャルメディアポリシーと企業事例
顧客接点における顧客の声の特性
ソーシャルシフト関連の組織
本著では、ソーシャルメディアの時代において、企業または個人が「とるべき対応」について具体的に提言されており、大変参考になります。
私も多くのセミナーや研修をお手伝いしていますが、ソーシャルメディア活用をテーマにしたイベントには多くの参加があります。
しかし、参加者の中には、
「ソーシャルメディアを活用すれば、売り上げが上がる」という安易な期待を持っている方、またそれを誇張する講師の方もいらっしゃいます。
ツールありきではなく、その根底となる企業戦略や取り組み姿勢を再確認し、経営のあり方そのものを振り返り、その上でのメディア戦略を考えるべきではないでしょうか。
そして、トップから現場担当者に至る人達それぞれが、「自分が企業のブランド体現者である」という意志を持って、日々活動することが重要です。
本著で紹介されている主なフレームワーク
製品関与マップ(リチャード・ヴォーン)
上下の軸:高関与=検討時間が長い、低関与=検討時間が短い
左右の軸:論理的=検討が論理的、感覚的=検討が感覚的 におこなわれる
ソーシャルメディア時代の購買モデル
(電通モダン・コミュニケーション・ラボ)
SIPS:Sympathize(共感)、Identity(確認)、Participate(参加)、Share & Spread(共有・拡散)
生活者のブランドへの参加レベル(下から順に)
パーティパント(参加者) ⇒ ファン ⇒ ロイヤルカスタマー ⇒ エバンジェリスト(伝道師)
顧客ロイヤリティ向上のためには、「すぐれた体験」と「信頼できるサービス」
業種にかかわらず、共通のもの
ブランドエッセンスとブランドパーソナリティ
(博報堂)
[ブランドエッセンス]
①事実・特徴:卓越したドライビング性能
②機能価値:抜群のハンドリングと走行感
[ブランドパーソナリティ]
③情報価値:感動、疾走感、高揚感
④社会・生活価値:知的な成功
◇ブランド価値を高めるコンタクトポイント戦略
(スコット・M・デイビス、マイケル・ダン)
顧客接点
- ・購買前体験:Webサイト、広告、販促用印刷物
- ・購買体験:製品サービスの品ぞろえ、購買時点ディスプレイ、販売担当員
- ・購買後体験:製品サービス品質、ロイヤリティプログラム、カスタマーサービス
顧客種別と顧客接点で異なるリサーチ内容
ソーシャルメディア運営、5つの形態
(Jeremiah owyang[Altimeter Group])
中央統制、自然発生、ハブ&スポーク、チームのHUB化、全社員ソーシャル化
アドボカシー・トライアングル
(グレン・アーバン)
統合的品質管理、顧客管理 ⇒ リレーションマーケティング ⇒ 顧客支援
「はじめに」から引用
生活者は変わった。
今、人々が望んでいるのは、騒がしい説得広告ではなく、控えめで共感を呼ぶメッセージ。
代わり映えのしない商品ではなく、細部まで心配りされた逸品。
画一的なサービスではなく、心のこもったおもてなし。
独りよがりの広報ではなく、誠実で真摯な対話姿勢。そして、生活者の進化したニーズに応え、企業の価値を高められるのは、会議室か らマイクロマネジメントを試みる管理職ではない。
顧客接点の最前線で、会社に高い忠誠心を持つ人たち。時に理不尽な統制と闘いながらも、顧客に貢献しようと必死に努力を続けている現場の社員たちだ。彼らの真摯でひたむきな行動が生活者の心を打つ。
顧客体験が共感の連鎖を呼び、ソーシャルメディア上をポジティブな評判が波紋のように広がっていく。
そして現場社員をバックアップするのは、彼ら彼女らを信じて後方から支援する管理職と、力強くリーダーシップの変革をはかる経営者だ。この三位一体の仕組みができない企業は、透明性の時代に生き残るのは困難だろう。
【参考】
斉藤 徹,2010年11月5日
マーケティング3.0時代、ソーシャルメディアのビジネス活用術
ソーシャルメディア時代の購買モデル
電通モダン・コミュニケーション・ラボ
SIPS ~来たるべきソーシャルメディア時代の新しい生活者消費行動モデル概念~
ブランドエッセンスとブランドパーソナリティ
博報堂ブランドコンサルティング,2009年
図解でわかるブランドマーケティング[新版]
スコット・M・デイビス、マイケル・ダン,2004年
ブランド価値を高める コンタクト・ポイント戦略
ソーシャルメディア運営、5つの形態
アドボカシー・トライアングル
グレン・アーバン、スカイライトコンサルティング (監修),2006年
アドボカシー・マーケティング 顧客主導の時代に信頼される企業
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