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トルネード キャズムを越え、「超成長」を手に入れるマーケティング戦略
ジェフリー・ムーア(著)、中山宥(翻訳)
出版社:海と月社
『キャズム』と対をなすハイテク・マーケティングのバイブル
・さらに強力なマーケットを開拓するには、どんな手段が最適か?
・成長を活かし、引き続き維持するのに、最も効果的な方法は?
・マーケットが落ち着いたとき、その変化にどう対応すれば生き延びられるか?
本著は、『キャズム』というハイテク市場におけるマーケティング理論で知られているジェフリー・ムーア氏が、「超成長マーケットという巨額の富が動く世界の正体」や「ビジネス戦略への影響」を分析し、市場でシェアを獲得し、マージンを増やすための効果的方策を提示しています。
1997年に東洋経済新報社から出版された「トルネード経営『超成長』への戦略」と内容はほとんど同じですが、本著の方がわかりやすく訳されているように感じました。
取り上げられている事例は1990年代半ばのものですが、(ムーア氏の論理ではありますが)ハイテク産業の遍歴を体系的に整理することができます。
そして、この論理を展開することで、今後の業界動向について仮設してみてはいかがでしょうか。
しかし、近年のハイテク産業の動向は、同年代にクレイトン・M・クリステンセン氏が提唱した「破壊的イノベーション」ではないかと、個人的には思います。
トルネードの期間中、トルネード後の市場シェア
トルネードの期間中は、
マーケットは、ごく短い間に「超成長」を遂げて、3桁の成長率を記録し、
その猛威にあおられながら、新しい製品カテゴリーが急速に広まってく。
トルネード後の市場シェアは、
圧倒的なシェアを占めてマーケットリーダーの座に君臨する「ゴリラ」が1社と
それに続き、差は大きいが生き残った1社の「チンパンジー」
そして残りは、トルネードの需要増の海に飲み込まれながら、わずかなシェアを獲得した「サル」の群れとなる。
製品のライフサイクル
【初期市場】
- ・興奮が巻き起こる時期
- ・少数の熱狂的な技術愛好者と尾錠提唱者によって形成される
【キャズム(断層)】
- ・深刻なスランプに陥る時期
- ・初期市場の興味が冷めてくる一方で、製品の未熟さを嫌って食指を動かさない
【ボーリングレーン】
- ・特定のニッチな顧客を狙いすます時期
- ・顧客側の強いニーズと開発企業側の積極性を土台に、ニッチ分野の需要を満たすホールプロダクトが生み出される
- ・戦略:顧客中心のニッチ戦略
【トルネード】
- ・メインストリーム市場が開花する時期
- ・一般の顧客層が、新しいパラダイムをインフラとして採用しはじめる
- ・戦略:大衆市場向けの一般的な戦略を推し進めて、標準インフラを広く普及させる
【メインストリート】
- ・アフターマーケットの時期
- ・基本的なインフラが普及し終えて、さらなる可能性の追求に取り組みはじめる
- ・大企業に成長して大量に商品を供給するが、利益率も少なく、後発市場の開拓で可能性を拡大する
- ・戦略:顧客中心アプローチに戻り、マスカスタマイゼーションを通じて、インフラに付加価値を加える
【終焉】
- ・商品生命の終わり
- ・マーケットリーダーになったばかりでも、次のパラダイムに取って代わられる
売り手側は、
マーケットの段階が移り変わるに合わせて、ビジネス戦略を大胆に変更していかなければならない。
自分たちのマーケットが今ライフサイクルのどこに位置するのかを確認し、自らのポジションにふさわしい優位性を求めてしのぎを削らなければならない。
しかし、ある戦略からまったく別の戦略へスムーズに移行できるかは、経営陣のずば抜けた柔軟性が求められる。
「普及学の基礎理論」と「キャズム理論」
エベレット・M・ロジャーズ氏の「普及学の基礎理論」では、
顧客を5つのタイプに区分し、イノベーターとアーリーアダプターを合わせた層に普及した段階で、新技術や新流行は急激に拡がっていくとしている。
- ・イノベーター(テクノロジーマニア)
- ・アーリーアダプター(ビジョナリー)
- ・アーリーマジョリティ(実利主義者)
- ・レイトマジョリティ(保守派)
- ・ラガード(懐疑主義者)
一方、『キャズム』理論では、
- ・アーリーアダプターとアーリーマジョリティでは要求が異なる。
- ・『キャズム』を超えてメインストリーム市場に移行するためには、マーケティングアプローチを変えていくことが必要と説いている。
破壊的イノベーション
「破壊的イノベーション」とは、
イノベーションモデルの一つで、確立された技術やビジネスモデルによって形成された既存市場の秩序を乱し、業界構造を変化させてしまうイノベーション
狭義には、「技術イノベーション」
一時的に主要性能を下げて、異なる価値を提供する状態
広義には、「産業イノベーション」
別市場で根付いた後に持続的な改良によって性能を向上し、既存の主要市場を浸食してしまう状態
【目次】
第一部 市場を知りつくして、「超成長」を遂げるとき
第1章 トルネードとは何か
第2章 キャズム―飛翔の前の試練を越える
第3章 ボウリング・レーン―「ニッチ」で連鎖反応を
第4章 トルネード―ひたすら売って勝利せよ
第5章 メイン・ストリート―「勝者の壁」を攻略する
第6章 自分の立ち位置を正確につかむために
第二部 最強の戦略を練り上げ、夢を現実にする
第7章 戦略的パートナーシップの意義と問題点
第8章 優位に立つための必須条件
第9章 間違いだらけのポジショニング
第10章 実行のための社内体制強化法
【参考】
・トルネード経営―「超成長」への戦略:東洋経済新報社 (1997/08)
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