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米国クラウドビジネス最前線
森 洋一 (著)
出版社:オーム社
クラウドの第2幕がわかる。
米国企業の最新技術と製品動向を徹底分析、日本への警鐘
米国のクラウドは啓蒙期から成長期に入り始めた。
こうした動きを受けて、日本でもクラウド導入機運が高まり、多くのベンダーが対応を開始している。
しかし、日本的クラウド騒ぎの荒しさの中には何か違和感がある。
本著は、シリコンバレーに在住し、クラウドコンピューティングを始め多くの最新技術動向を調査している著者が、約60社の企業と70人近い人物を紹介しながら、米国で始まったクラウドの背景や文化、支える技術やプレーヤーの動向、日本との差異を解説しています。
クラウドを提供するプロバイダーやプロダクトを開発するベンダー、それらを利用するユーザーが、米国情報を正確に理解し、それを起点とした現状を認識し、日本における課題と対応策を整理するうえで、大いに参考になります。
クラウドは第2のインターネットへ向かう
第1世代のインターネットは、すべてのユーザーに新しい世界を開放した。
これを一般向けITの開放とするならば、
- ・第2世代のインターネットと言えるクラウドは、主として企業ユーザー向けの新たなITの開放となる。
- ・クラウド利用のメリットは、直接のハードウェアやソフトウェアの投資、運用管理費などの削減である。
代わった主役の座
クラウドの世界の主役は、デベロッパーである。
彼らが、技術的知識に乏しいユーザーの代表となって、ベンダーやプロバイダーと議論する。
米国において、IBMやHPなどの大手ITベンダーは完全に守勢に回っている。
クラウド市場を牽引しているのは、一般向けサービスを展開しているアマゾンやグーグルである。
コンピュータ文化の違い
シリコンバレーでは、
オープンソース活動が自由な環境から自然発生的に始まり、エンジニアは自由に社外のエンジニアと交わり、その中から新たな創造活動を追及している。
日本では、
- ・企業内IT部門のエンジニアは、納期と品質、本番後のトラブルに追われて新たな知識吸収の時間もない。
- ・ITベンダーは、研究や海外活動が削減され、不得手な英語に加えグローバル視点のないマーケティング活動や外向き志向も海外志向も後退し、売上至上のみである。
クラウドビジネスへの取り組みの違い
米国のクラウドプロバイダーは、自社データセンターの余力を利用したサービスが初期形態とし、ビジネスが順調に立ち上げれば新規投資をする。
日本の場合は、あたかも「新たな市場が出現する」と誤解して、多大な投資をしたクラウドサービスを立ち上げ、大きな売上を予測している。
クラウドプロバイダーの動向
アマゾンの緻密なビジネスプランとコミュニティとの共用サイクル
- ・自社データセンターの余力利用や既存コミュニティの活用からクラウドビジネスが始まり、絶え間ないシステム改良で機能を拡大してきている。
- ・支払い決済(FPS:Flexible Payments Service)や物流受託(FBA:Fulfillment By Amazon)へ展開している。
グーグルの壮大な構想
- ・「オープン化によるネットワーク社会の推進」を基本哲学とし、ウェブ戦略ビジョンとアップエンジンを重ね合わし、デベロッパーコミュニティを確立している。
- ・検索エンジンでコンシューマー向け市場を手掛けて広告ビジネスを確立し、その余力でエンタープライズ市場に向かう。
- ・全面の武器はアップスとアップエンジン、後方にはクロームとアンドロイドのOS
- ・プロモーションのエントリーサービスから入り、コミュニティの評価や意見を取り入れながら有償へと導いていく。
マイクロソフトの挑戦
- ・Windows Azureの正式リリースは、大手ITベンダーに対する挑戦開始である。
- ・ライセンスからサブスクリプションへとビジネスモデルを変換しながら、ITベンダーの牙城であるオンプレミス領域の切り崩しを図ることが狙いである。
ホスティングからのクラウドビジネスへの展開
- ・ゴーグリッド(GoGrid):ホスティング型ハイブリッド
- ・ラックスペース(Rackspace):オープン化と低コスト
仮想化技術の戦い
大きなシェアを持つVMwareがクラウドでも強いのか、それを追うCitrix SystemsのXenがいいのか、新規参入のKVMやマイクロソフトのハイパーVが善戦するのか、予断を許さない戦いが繰り広げられている。
現状を見る限り、大手のクラウドプロバイダーはXenを採用し、エンタープライズユーザーにはVMwareが浸透している。
以上、ここでは本著の一部を紹介しましたが、その他にクラウドストレージやグリッド関連の技術動向やサービス、米国連邦政府のクラウド、クラウドデータセンターの動向などについて詳細な解説があり、最新動向を知るうえで大変参考になります。
一方、クラウドビジネスが救世主かのように誇張する日本のITベンダーに対し、多くの示唆を与えていると思います。
「売上至上主義の単なるベンダー間競争」ではなく、「新たなコンピュータ利用技術」の創造、さらには「新たな文化」の創造という視点で、クラウドビジネスへの取り組みを考え直すことも必要ではないでしょうか。
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