書籍 日本を破滅から救うための経済学

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日本を破滅から救うための経済学
-再活性化に向けて、いまなすべきこと-

野口 悠紀雄(著)
出版社:ダイヤモンド社

日本を破滅から救うための経済学

消費税だけでは、30%近い税率でも財政再建できない!

デフレスパイラル論はまったくの間違い
インフレこそが最も過酷な税である
厚生年金は2033年頃に破綻する
1ドル=60円台後半も不思議ではない
教育こそ最も重要な成長戦略

一橋大学、東京大学の教授、スタンフォード大学の客員教授を経て、現在は早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授の著者が、綿密なデータ分析と独自のシミュレーションをもとに、これまでの通説に対し新たな視点でマクロ経済を解説しています。

前々著の「未曾有の経済危機 克服の処方箋」(2009年4月 ダイヤモンド社)では、世界経済危機が起きた真の理由と克服に向けて提言し、前著の「世界経済が回復するなか、なぜ日本だけが取り残される」(2010年5月 ダイヤモンド社)では、実体経済の分析から行き詰まる日本経済の課題と今なすべき戦略を解説していました。

そして本著では、消費税問題から、デフレ問題、赤字国債発行の問題点、年金破綻、為替政策まで、主に政策面での課題対策を提言しています。

専門用語や多くの分析データが掲載されていて、じっくりと読まなければ詳細が理解できない部分もありますが、日本経済が抱えている諸問題に対する政策の方向性について、新たな視点で考えることができる一冊です。

これまでの通説と本著の指摘に対し、「現在の日本経済を自分はどう理解し、今後の活性化に向けて自分は何をすべきか」を、自分なりに考え行動していく必要があると思います。

デフレスパイラル論

これまでの認識

デフレのために日本経済が活性化できず、そこから脱却するためには金融緩和が必要である。

本著の指摘

  • ・物価や賃金の下落は、長期的には中国の工業化、2009年においては原油下落によってもたらされたもの。
  • ・そこから脱却するためには、企業のビジネスモデルを転換させる必要がある。

社会保障

これまでの認識

  • ・スローガン「強い経済、強い財政、強い社会保障」
  • ・2009年に作成された財政検証「経済中位」では
    賃金上昇率 2010年度が3.4%、2016年度からは2.5%と想定
    運用利回り 2009年度が1.5%、以降徐々に上昇し、2020年度は4.1%と想定

本著の指摘

  • ・厚生年金は、2033年頃には積立金がゼロになって破綻する可能性が強い。
  • ・2010年度を1とすると
    2040年度の受給者は1.22に増加し、保険料納付者は0.8に減少する。
    (保険料納付者が8割に減り、受給者が2割以上増える)

為替レート

これまでの認識

異常な円高が企業の利益を圧迫している。

本著の指摘

  • ・各国間の物価上昇率の違いを調整した「実質レート」で見ると、現在のレートはむしろ円安である。
  • ・日本の金融政策は、1990年代後半以降、円高を阻止するために運営されてきた。
    しかし、各国の金利が経済危機以降低下したため、日本が金融緩和を進めても、かつてのような円安を実現することはできない。

経済成長が必要なことは言うまでもないが、成長を実現するのは民間企業の努力であって政府の計画ではない。

政府がなすべきことは、成長のための基本条件を整備するすること。

特に重要なのは、財政再建と高度な人材育成。

これからの日本は、産業構造を改革し、脱工業化を推進すべき。

その基礎をつくるためには、高等教育が必要。

しかし人口に占める割合を見ると、学士・修士・博士のについては日米間に大きな差はないが、専門職大学院は量的と質的に大きく差がある。

アメリカのプロフェッショナル・スクールが人口比約1.5%で全日制であるのに対し、日本の専門職大学院は約0.3%で夜間休日制と量的と質的に大きく差がある。

金融では「ウィンブルドン現象」と言われるが、人材面で日本を世界に開き、世界から専門家を呼ぶことも効果的である。

参考

未曾有の経済危機 克服の処方箋[2009年4月 ダイヤモンド社]

世界経済が回復するなか、なぜ日本だけが取り残されるのか
[2010年5月 ダイヤモンド社]

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