電子マネー普及における金融政策

電子マネー普及における金融政策

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電子マネーは、それ自身に貨幣価値を持っており直接的に決済を完了させる役割を持っている。

そこで電子マネーが通貨として使用される様になった場合、金融政策が有効に機能するかを考えてみることにする。

電子マネーを流通面で考えた場合の分類には、大きくクローズド・ループ型オープン・ループ型があると考えられる。

まずクローズ・ループ型の電子マネーは、消費者(購入者)から店舗側に電子マネーが流れた後に発行体である金融機関に還流されるため、預金通貨が流動的になったこととして考えられる。

一方オープン・ループ型の電子マネーの場合は、受け取った電子マネーは他の決済に利用できるため発行体である金融機関に還流する頻度はクローズド・ループ型電子マネーに比べると少なくなると考えられる。

そのことは、資金(現金)需要が低下する可能性があることになりかねないと考えられる。

1.資金(現金)需要低下の可能性

資金(現金)需要が増加するのは、金利が低くなっていく場合や所得が増加していく場合及び金融機関間の往復費用が高くなっていく場合等であると考えられる。

仮に金利や所得が一定であると想定した場合、オープン・ループ型電子マネーの普及により金融機関間の往復費用は著しく低下すると考えられる。

2.電子マネー導入後の金融政策

今後において、利用環境インフラの整備や相互互換性の確保及び利用者保護を含めた法制度が整備されていくと、電子マネーの信頼性が向上し通貨として利用される様になっていくと考えられる。

その様な状況においても、中央銀行が市中の通貨供給量を調整することが不可能になるとは考えにくい。

それは、社会経済全体が全て電子マネーに変わるとは考えにくく、必ず資金(現金)が必要になる場合があり電子マネー保有から資金(現金)に換金されることが考えられる。

その場合は、金融機関の資金(現金)需要は存在し、従来の金融政策で機能すると考える。

しかし電子マネーの普及に伴って従来の金融政策での波及効果には限界があると考えられ、その状況下においての対応策を講じる必要があると考える。

対応策

案-1:全ての決済金融商品に準備預金を義務化する。

電子マネーを含めて全ての決済金融商品に対し準備預金制度を義務化することにより、準備需要を安定化することができる。

さらに準備率を同一にすることにより、準備預金制度の存在自体がもたらす配分上のひずみを軽減できると考える。

特に資金(現金)以外の決済金融商品が増加する可能性があること、国際化の進展に伴い円預金と外貨預金との組み合わせが複雑になる可能性があること等を考慮すると、準備率の同一化は有効であると考える。

案-2:中央銀行で電子マネーを発行する。

中央銀行が電子マネーを発行すると言うことは、通貨の代わりに電子マネーを発行することになるため、従来と同様の金融政策が機能すると考えられる。

この対応策は民間金融機関の競争を制約してしまうことになり、その競争を制約することにより技術革新が遅れる可能性があると言う問題がある。

しかしながら、中央銀行が発行する電子マネーであれば民間金融機関が発行する電子マネーよりも法貨としての保証がつき、全ての人が安心して利用できると言う利点もある。

これからの金融政策は、金融技術の革新をより政策の中に含めて対応していかなければならないと考える。

これまでも金融技術の進展は通貨供給量を変化させてきており、金融政策に色々な面で影響を与えてきている。 

しかし今後は、その技術革新スピードがこれまでよりも早くなり、ネットワークを介することにより技術の伝達も早くなると考えられる。

またこれまでも金融の国際化が進展してきており、さらにインターネットの発達等により低コストで個人も参加できる様になる可能性があると考えられる。

そのことから、今後はいかに金融技術の発展と金融政策が目標とする経済の安定化の両方を実現していくかが大きな課題となっていくと考える。

特にインターネット等の普及により、色々な情報が瞬時に世界を駆け巡り市場を混乱させたり、決済の電子化と低コスト化に伴い、資産等の取引を含む電子商取引市場に経験と充分に情報を持たない個人が金融市場に参加してくる可能性があると考えられる。

これまでは色々な経済活動に対する経験と情報を多く待っている金融機関が介在して市場を調整してきたが、今後においてはその対応も困難になっていく可能性がある。

そのため、それらの状況を視野にいれた金融政策を検討していく必要があると考える。さらにインターネットにより市場がより統一化されてくると考えると、世界各国で起こる経済的な混乱は以前よりも増して他国に影響を与える可能性があるため、それらへの対応も検討していく必要があると考える。

また資金(現金)需要を低下させ中央銀行の金融政策を困難にさせる可能性があると言う問題は、この電子マネーが出てくる以前から起こっている問題である。

これまでにも決済性の高い、準備を必要としない資産に資金(現金)が移行して準備需要が低下し、中央銀行が影響を与えられなくなる位まで必要準備が低下した場合には、通貨供給量による調整が困難になる可能性があることは指摘されていた。

その意味においては、電子マネーはその一つと考える事ができるが、電子マネーの導入はこれまで以上に経済にとって影響を与えることになると考える。

以上のことから電子マネーの普及やインターネットを介した電子商取引の発展は、国内外の経済に大きな影響を与えることになる。

特に電子マネーは実験段階から実用段階に移行しつつある中で、その利用環境の整備に加えて金融政策をどの様にして対応していくかを国際規模で早期に検討していく必要があると考える。

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