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先日、NECと富士通から2016年度第1四半期決算(2016年4月1日~2016年6月30日)と通期予想が発表されましたので、概況を整理します。
ICT関連事業が中心の両社は、
- ・NECは、前年同期に対し減収減益となり、営業赤字額としてはリーマンショック後に次いで大きな結果となりました。
- ・富士通は、国内外での減収と為替影響約450億円などにより全体として減収となりましたが、営業利益はパソコンや携帯電話でのコストダウンや費用効率化などにより増益となりました。
NECと富士通の2016年度第1四半期(2016年4月1日~2016年6月30日)の決算概要は、以下の通りです。
なお、NECは2016年度から国際財務報告基準(IFRS)を任意適用しておりますので、以下指標はIFRSに基づいています。(富士通は2014年度から適用)
NEC
- ・売上高は、前年同期に対して686億円(11.7%)減の5,187億円
- ・営業損益は、同224億円減の△299億円
- ・純損益は、同145億円減の△201億円
- ・全セグメントで減収し、第1四半期の営業赤字額としてはリーマンショック後の2009年4~6月期に記録した400億円に次いで大きい結果となり、エンタープライズ事業以外は赤字となりました。
- ・2016年度の通期決算予想は、4月予想を維持しています。
- 売上高:2兆8,800億円、営業損益:1,000億円、純損益:500億円
- 日本航空電子工業㈱に対する公開買付け及びレノボNECホールディングス社の株式一部譲渡などによる変動要因は検討中
富士通
- ・売上高は、前年同期に対して785億円(7.4%)減の9,866億円
- ・営業損益は、同161億円増の△112億円
- ・純損益は、同48億円増の△141億円
- ・SI事業は過去最高を記録した2016年3月期に続いて伸長したものの携帯電話やLSIなどの減収に加え、円高影響の450億円が減収要因となり、全セグメントで減収となりました。
営業利益は、デバイスソリューション事業以外の2事業が増益となりました。
- ・2016年度の通期決算予想は、4月予想を維持しています。
- 売上高:4兆6,000円、営業損益:1,200億円、純損益:850億円
- 営業利益には、ビジネスモデル変革費用450億円を下期に見込む
- 出荷台数:PC400万台(2015年度実績400万台)、携帯電話310万台(同360万台)
NEC
売上高、営業損益、純損益(2016年4月1日~2016年6月30日)
売上高と営業損益及び純損益の全指標が前年同期を下回り、営業赤字額としてはリーマンショック後の2009年4~6月期に記録した400億円に次いで大きな結果となりました。
- ・売上高は、前年同期に対して686億円(11.7%)減の5,187億円
- 全セグメントが減収となり、特にパブリック、キャリアの売上減が影響しています。
- パブリック分野で前年までに大型案件が一巡し、キャリア分野では以前から続く国内キャリアの投資抑制に加え、海外、特に中南米の需要がずいぶん遅れているとしています。
- なお海外売上比率は、22.8%(前年同期23.1%)となっています。
- ・営業損益は、前年同期に対して224億円悪化の△299億円
エンタープライズ分野以外が減益となり、エンタープライズ分野以外は赤字となりました。
- ・純損益は、前年同期に対して145億円悪化の△201億円
法人所得税費用が減少したものの、営業損益や為替差損による税引前四半期損益の悪化が影響しています。
セグメント別(2016年4月1日~2016年6月30日)
セグメント別では、5部門全てが減収、エンタープライズを除く4部門が減益となりました。
パブリック事業
売上高:前年同期比19.3%減の1,175億円(営業損益:同32億円減の△26億円)
- ・売上高は、官公向けで前期にあった大型案件の売上減少に加え、公共向けが消防・救急無線のデジタル化需要の一巡で現象したことが影響して減収となりました。
- ・営業損益は、不採算案件の改善はあったものの、売上高の減少などが影響して減益となりました。
エンタープライズ事業
売上高:前年同期比3.1%減の665億円(営業損益:同3億円増の37億円)
- ・売上高は、製造業向けが堅調に推移したものの、流通・サービス業向けで前年同期にあった大型案件の売上減少が影響して減益となりました。
- ・営業損益は、売上高が減収したものの、システム構築サービスの収益改善などが寄与して増益となりました。
テレコムキャリア事業
売上高:前年同期比15.3%減の1,211億円(営業損益:同45億円悪化の△69億円)
- ・売上高は、国内キャリアの設備投資抑制に加え、海外キャリアの設備投資でも中南米の需要が遅れていることなどが影響して減収となりました。
- ・営業損益は、売上高の減少したことなどが影響して減益となりました。
システムプラットフォーム事業
売上高:前年同期比6.2%減の1,502億円(営業損益:同89億円減の△45億円)
- ・売上高は、サーバーやストレージなどのハードウェアが減少したことなどが影響して減収となりました。
なお、6~7月でサーバー売上が戻ってきており、クラウドへの移行が進んだことによるサーバー市場構造が変化したか否かについて判断するのは時期尚早としています。
- ・営業損益は、売上高の減少に加え、保守・サービスの収益が悪化したことなどが影響して減益となりました。
その他
売上高:前年同期比9.3%減の633億円(営業損益:同22億円悪化の△84億円)
- ・売上高は、スマートエネルギー事業が減少したことなどが影響して減収となりました。
- ・営業損益は、売上高の減少したことなどが影響して減益となりました。
その他
自己資本は7,134億円(自己資本比率30.6%、対前年度比0.1ポイント改善)
- ・総資産:前年同期比1,965億円減の2兆3,324億円
- ・負債:同1,382億円減の1兆5,535億円
現金及び現金同等物の期末残高は、前年同期比386億円増の2,309億円
- ・フリーキャッシュ・フローは、同172億円減の637億円
- 営業活動によるキャッシュ・フロー:同188億円減の738億円
- 投資活動によるキャッシュ・フロー:同16億円増の△101億円
- ・財務活動によるキャッシュ・フローは、同230億円増の△187億円
中期経営計画の注力事業の、セーフティ事業、グローバルキャリア向けネットワーク事業、リテール向けITサービス事業の3事業は、順調に進行しているとしてます。
セーフティ事業では、オーストラリア連邦政府機関のCrimeTracに生体認証システム、米国のジョン・F・ケネディ国際空港に入国審査用の顔認証システム、品川区に標的型攻撃による情報漏えいを防止する新たなセキュリティ機能を構築・納入した以外にも、国内では複数の実証実験を進めるなどの実績をあげているとしています。
富士通
売上高、営業損益、純損益(2016年4月1日~2016年6月30日)
売上高は前年同期を下回ったものの、営業損益及び純損益は増益しています。
- ・売上高は、前年同期に対して785億円(7.4%)減の9,866億円
- 国内は3.4%の減収となり、サービスはシステムインテグレーションやアウトソーシングを中心に伸長したものの、携帯電話やLSIの減収が影響しています。
- 海外は12.7%の減収で、欧米向けのインフラサービスや北米向けネットワークプロダクトが売上減となったほか、為替影響により約450億円減収しています。
- クラウドビジネスの実績は約600億円(2016年度通期見通しは3500億円)
- なお海外売上比率は、40.1%(前年同期37.6%)となっています。
- ・営業損益は、前年同期に対して161億円改善の△112億円
- LSIなどの減収影響はあったものの、国内サービスの増収効果、パソコンや携帯電話でのコストダウンや費用効率化などにより改善しています。
- また、前年同期に国内ネットワーク事業で、従業員の再配置等に係る一時費用を負担していた影響もあります。
- ・純損益は、前年同期に対して48億円改善の△141億円
金融損益40億円の損失、急速な円安進行に伴う為替差益の計上、持分法による投資利益20億円などによるものです。
セグメント別(2016年4月1日~2016年6月30日)
セグメント別では、2部門が減収増益、1部門が減収減益となっています。
テクノロジーソリューション事業
売上高:前年同期比6.4%減の6,727億円(営業損益:同111億円増の71億円)
- ・売上高は、国内は1.7%の増収、海外は18%減収
- ・営業損益は、国内サービスは増益、システムプラットフォームは再編費の負担減などにより改善しています。
- ・サービス事業
- 売上高:同5.4%減の5,783億円(営業損益:同50億円増の150億円)
- 国内は3.0%増収、海外は16.7%減収
- 国内は、システムインテグレーションが金融分野向けの大型プロジェクト商談がピークを超えたものの産業・流通分野や通信キャリア向けの伸長により増収、インフラサービスもアウトソーシングを中心に増収となりました。
- 海外は、為替影響を受けたほか、欧州・米国向けが低調で減収となりました。
- 営業損益は、海外向けを中心とした減収影響はあるものの、国内外ともに採算改善が進み増益となりました。
- ・システムプラットフォーム事業
- 売上高:同12.2%減の944億円(営業損益:同60億円改善の△78億円)
- 国内は4.7%減収、海外は27.7%減収
- 国内は、ネットワークプロダクトが顧客のインフラハードへの投資抑制により減収となりました。
- 海外は、北米向け光伝送システムが通信キャリアの投資抑制が続き減収となりました。
- 営業損益は、サーバ関連がPCサーバを中心に採算改善が進んだほか、ネットワークプロダクトは減収影響はあるものの前年同期に計上したビジネスモデル変革費用44億円の負担減の影響に加え、固定費低減効果により改善しました。
ユビキタスソリューション事業
売上高:前年同期比9.6%減の2,198億円(営業損益:同122億円増の46億円)
- ・PC及び携帯電話の売上高が同16.9%減の1,259億円、モバイルウェアの売上高が同2.5%増の939億円
- ・国内は10.3%減収、海外は8.5%減収
- ・パソコンは、法人向けは堅調だったものの、個人向けが低調で減収となりました。
2016年10月にWindows 7を搭載したPCの生産が終了することになり、駆け込み需要に期待されるとしています。
- ・携帯電話は、買い替えサイクル長期化もありハイエンド機種を中心に前年同期からは大幅な減収となりました。
- ・海外は、為替影響を除けば、ほぼ前年同期並みとなり、欧州向けパソコンが減収となったもののモバイルウェアが欧州を中心に伸長しています。
- ・営業損益は、減収影響はあるものの費用効率化により改善しました。
デバイスソリューション事業
売上高:前年同期比13.3%減の1,300億円(営業損益:同119億円減の△11億円)
- ・LSIの売上高は同20.9%減の637億円、電子部品は同4.5%減の666億円
- ・国内は23.2%減収、海外は3.6%減収
- ・LSIはスマートフォン向けを中心とした減収に加え、LSI及び電子部品ともに米国ドルに対する円安進行により減収となりました。
- ・営業利損益は、減収の影響に加え、LSIでの工場施設の法定点検実施に伴う費用負担や稼働低下が影響しています。
その他
自己資本は6,798億円(自己資本比率22.6%、対前年度比1.7ポイント減)
- ・総資産:前年同期比2,176億円減の3兆86億円
- ・負債:同983億円減の2兆2,017億円
- ・純資産:同1,192億円減の6,798億円
現金及び現金同等物の期末残高は、前年同期比415億円増の4,198億円
- ・フリーキャッシュ・フローは、同226億円増の236億円
- 営業活動によるキャッシュ・フロー:同326億円増の620億円
- 投資活動によるキャッシュ・フロー:同100億円減の△384億円
- ・財務活動によるキャッシュ・フローは、同146億円増の268億円
2016年度(2017年3月期)第1四半期決算
電機各社の決算発表
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