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先日(2017年1月31日)、富士通から2016年度第3四半期決算(2016年4月1日~2016年12月31日)と通期予想が発表されましたので、概況を整理します。
売上高は為替影響で海外は15.6%の減収となったものの国内は前年同期並みとなり、営業利益はパソコンや携帯電話でのコストダウンや費用効率化に加え、国内のネットワークプロダクトやサービスの増収により増益となりました。
富士通の2016年度第3四半期(2016年4月1日~2016年12月31日)の決算概要は、以下の通りです。
売上高は、前年同期に対して2,077億円(6.1%)減の3兆2,005億円
営業損益は、同616億円増の632億円
純損益は、同429億円増の322億円(106億円の赤字から黒字化)
売上高は、LSIや携帯電話が減収となったものの、サービスがシステムインテグレーション(SI)やアウトソーシングを中心に伸長し、PCやモバイルウェア、ネットワークプロダクトも増収となりました。
営業利益は、LSIや海外サービスが減収の影響を受けましたが、PCや携帯電話でコストダウンや費用効率化などにより改善し、国内のネットワークプロダクトやサービスの増収により、増益となりました。
2016年度の通期決算予想は、前回予想を維持しています。
- ・売上高:4兆5,000円、営業損益:1,200億円、純損益:850億円
- ・営業利益には、ビジネスモデル変革費用450億円を下期に見込む
- ・出荷台数:PCは前回予想通り400万台(2015年度実績400万台)、携帯電話は前回予想から10万台増の320万台(同360万台)
売上高、営業損益、純損益(2016年度第3四半期累計)
売上高は前年同期を下回ったものの、営業損益及び純損益は増益しています。
売上高は、前年同期に対して2,077億円(6.1%)減の3兆2,005億円
- ・国内は3.4%の減収とほぼ前年同期並みで、サービスはシステムインテグレーションやアウトソーシングを中心に伸長したものの、携帯電話やLSIの減収が影響しています。
- ・海外は15.6%の減収で、為替影響を大きく受けたほか、欧州向けのインフラサービスが売上減となりました。
なお海外売上比率は、37.8%(前年同期42.0%)となっています。
営業損益は、前年同期に対して616億円増の632億円
- ・LSIや海外サービスが減収影響を受けたものの、パソコンや携帯電話がコストダウンや費用効率化などにより改善し、国内のネットワークプロダクトやサービスの増収により、増益となりました。
- ・また、ビジネスモデル変革費用の負担が前年同期に比べ144億円減少しましたことも寄与しています。
純損益は、前年同期に対して429億改善の322億円
- ・金融損益21億円(前年同期比12億円の増益)、持分法による投資利益27億円(前年同期比115億円の減益)となっています。
- ・また、国内関連会社の損失に備えた引当金計上、前年同期に中国で上場している関連会社の公募増資に伴う一時金の計上が寄与しています。
セグメント別(2016年4月1日~2016年12月31日)
セグメント別では、2部門が減収増益、1部門が減収減益となっています。
テクノロジーソリューション事業
売上高:前年同期比5.8%減の2兆1,837億円(営業損益:同366億円増の1,039億円)
- ・売上高は、国内は3.9%の増収、海外は20.3%減収
- ・営業損益は、海外サービスの減収影響があったものの、国内のサービス、ネットワークでの増収効果が上回ったことに加え、ビジネスモデル変革費用の負担が前年同期比137億円減少したのが寄与しています。
サービス事業
- ・売上高:同6.4%減の1兆8,455億円(営業損益:同21億円減の824億円)
国内は3.1%増収、海外は20.0%減収
- ・国内は、システムインテグレーションが金融分野向けの大型プロジェクト商談がピークを超えたものの、製造業、サービス業、通信キャリア向けの伸長により増収となりました。
- ・インフラサービスもアウトソーシングを中心に増収となりました。
- ・海外は、為替影響を受けたほか、欧州・米国向けが低調で減収となりました。
システムプラットフォーム事業
- ・売上高:同2.2%減の3,381億円(営業損益:同388億円改善の215億円)
国内は7.7%増収、海外は23.2%減収
- ・国内は、ネットワークプロダクトが通信キャリア向けの携帯電話基地局で増収となりました。
- ・海外は、ネットワークプロダクトが北米向け光伝送システムが新機種投入の端境期にあたり、減収となりました。
ユビキタスソリューション事業
売上高:前年同期比2.8%減の7,432億円(営業損益:同417億円改善の284億円)
- ・売上高は、国内は同1.3%増収、海外は同10.0%減収
- ・PC及び携帯電話の売上高が同6.9%減の4,447億円、モバイルウェアの売上高が同4.2%増の2,985億円
- ・スマートフォン市場の成長鈍化の影響で前年同期から大幅な売上減となったものの、パソコンは法人向けが堅調で増収となりました。
- ・モバイルウェアもオーディオ・ナビゲーション機器が前年同期に対し、伸長しました。
- ・海外は、為替影響を除けば、ほぼ前年同期並みとなり、欧州向けパソコンが減収となったものの、モバイルウェアが欧米中心に伸長しています。
- ・営業損益は、パソコンの国内向けの増収効果に加え、米国ドルに対する円高の進行による国内拠点での購入部材コストダウンや費用効率化により改善しました。
携帯電話は、減収影響はあるものの、コストダウンや費用効率化により改善しました。
デバイスソリューション事業
売上高:前年同期比12.3%減の4,065億円(営業損益:同197億円減の46億円)
- ・国内は同18.2%減収、海外は同6.9%減収
- ・LSIの売上高は同17.9%減の2,007億円、電子部品は同6.2%減の2,066億円
- ・LSIはスマートフォン向けを中心とした減収に加え、LSI及び電子部品ともに米国ドルに対する円安進行により減収となりました。
- ・営業利損益は、減収の影響に加え、第1四半期に実施した工場施設の法定点検実施に伴う費用負担などが影響しています。
その他
自己資本は8,095億円(自己資本比率25.6%、対前年度比1.3ポイント増)
- ・総資産:前年同期比649億円減の3兆1,613億円
- ・負債:同849億円減の2兆2,151億円
- ・純資産:同199億円増の9,462億円
現金及び現金同等物の期末残高は、前年同期比164億円増の3,809億円
- ・フリーキャッシュ・フローは、同468億円増(収入増)の△367億円
営業活動によるキャッシュ・フロー:同611億円増(収入増)の942億円
投資活動によるキャッシュ・フロー:同143億円減(支出増)の△1,309億円
- ・財務活動によるキャッシュ・フローは、同460億円減の389億円
また、ニフティの消費者向け部門を2月に分社化し、家電量販大手のノジマに売却することで合意しています。
売却予定日は4月1日で、売却額は250億円となり、簿価(非公開)を差し引いた百数十億円の売却益を、来期初めに利益計上を予定しています。
2016年度の通期決算予想
セグメント別では見直しがあるものの、全体では前回予想からの変更はありません。
テクノロジーソリューション
- ・売上高:前回予想から400億円減の3兆1,000億円(営業利益:同150億円減の2,300億円)
- ・売上高は、サービス事業での欧州を中心に海外サービスの所要(400億円)減の影響を織込んでいます。
- ・営業利益は、サービス事業でのビジネスモデル変革費用の組替影響(60億円減)と売上減の影響(70億円減)を合わせた130億円減に加え、システムプラットフォーム事業での為替影響による部材コストアップ影響(20億円減)が主な要因です。
ユビキタスソリューション
- ・売上高:前回予想から300億円増の1兆150億円(営業利益:前回予想通り210億円)
- ・売上高は、好調を反映して、モバイルウェアで250億円、携帯電話もスマートフォンを50億円増額が寄与しています。
- ・営業利益は、ビジネスモデル変革費用の組替や為替変更影響による減額影響があるものの、売上増や費用効率化でカバーし、全体で変更はありません。
デバイスソリューション
- ・売上高:前回予想通り5,500億円(営業利益:前回予想から70億円改善の60億円)
- ・営業利益は、第3四半期の為替影響に加え、所要の減少が底を打ち、回復基調が見えたためとしています。
2016年度(2017年3月期)
電機各社の決算発表
株式会社 東芝(2017年2月14日仮、3月30日発表予定)
2017.3.07 2016年度第3四半期決算:NEC
2017.3.06 2016年度第3四半期決算:富士通
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