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フレームワークに頼りすぎると既存の延長線の手段しか考えられない危険性もありますが、SWOT分析は内部環境(「強み」と「弱み」)と外部環境(「機会」と「脅威」)を整理し、経営や事業戦略を立案するための有効なフレームワークのひとつです。
SWOT分析に当たっては、「内部環境」と「外部環境」を同時並行で分析し、今後の戦略を考えていくことが必要となります。
そこで、あえて「擦り合わせ型」と「モジュール型」の製品特性の観点から、「内部環境」と「外部環境」分析の優先順位が変わっていくのかを考えていきます。
NECのPC事業の1980年代と2000年代のSWOT分析
前回、NECのPC事業の1980年代と2000年代のSWOT分析をしましたが、もう一度整理すると以下の通りです。
- ・1980年代は、国内にPC市場は形成されていない状況であり、自社の「強み」を発揮して「擦り合わせ型」で製品を開発し、「機会」に乗じて市場を創造してきました。
「擦り合わせ型」製品:内部環境→外部環境
- ・一方2000年代は、PCは「モジュール型」製品となり差別化が困難な状況となり、外部環境に応じて自社の内部環境を適合させてきました。
「モジュール型」製品:外部環境→内部環境
NECのPC事業約30年の歴史において、1997年に「DOS-V」機に移行したことで、これまでの「強み」を大きく転換することになりました。
「DOS-V」機は、インテルCPUとWindowsのOS上で、プラットフォームが統一化されたため、メーカー独自の付加価値を搭載する範囲も限られてきます。
PC市場も、まさにモジュール化による「破壊的イノベーション」でした。
さらにPCのハードウェア性能も、ユーザーが利用する(期待する)性能を上まわるようになると、ハードウェアだけの差別化は困難となり、Windows上で動くソフトウェアやネットワークを介したサービスへと差別化ポイントは変わってきました。
「モジュール型」製品のSWOT分析
「モジュール型」製品になった際には、「外部環境」に合わせることを優先しすぎて独自性を失い、新たなイノベーションを創出できなくなる危険があります。
特に近年は、既存の延長線からのSWOT分析ではなく、資源ベースから「内部環境」とポジショニングベースから「外部環境」を分析し、不確実な事業環境を意識した戦略を策定することが必要となります。
製品そのものの価値を訴求するだけではなく、製品を取り巻く利用価値を訴求できるビジネスモデルを考えていくことが必要です。
2015.1.13 SWOT分析は、経営や事業の戦略を立案するための有効なフレームワーク
2015.1.14 SWOT分析の例、NECのPC事業における1980年代と2000年代の比較
2015.1.16 SWOT分析のあり方、「擦り合わせ型」と「モジュール型」
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