「減損会計」が企業経営に与える影響

「減損会計」が企業経営に与える影響

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1996年11月11日、時の橋本総理が「フリー・フェアー・グローバル」をうたい文句に会計ビックバンを宣言した。

2000年3月期の決算から、連結決算制度・キャッシュフロー計算書・税効果会計等の新たな会計基準が日本でも順次導入された。

これらによって企業経営の透明性が高められてきたが、日本経済にも大きな影響があった。

この会計ビックバンの総仕上げとして「減損会計」が2006年3月期の決算から日本でも強制的適用される。

減損会計とは土地等の固定資産の収益性が低下し、投資額の回収が見込めなくなった場合に、一定の条件下で帳簿価額を減額する会計処理である。

減損会計の対象となる固定資産は、工場の建物・機械装置・土地から本社ビル等の全ての有形固定資産と営業権・特許権・商標権等の無形固定資産及び賃貸ビル・マンション等の投資不動産である。

現在の会計基準では、固定資産のうち設備等は減価償却を行い、毎期一定のルールに従って減額処理が行われてきたが、土地は減価償却が行われず取得時の価額のまま貸借対照表に計上される。

減損会計ではこれらの固定資産が将来的に生み出すキャッシュフローの合計が帳簿価額を下回ることが確実であると見込まれる場合に、固定資産を回収可能額まで減額し、差額を減損損失として損益計算書に計上しなければならない。

1.導入の背景

(1)日本の会計基準と国際的な会計基準との調和

現在の国際的な資本市場において、投資家は企業に出資した資金がいかに効率良く活用され、高いキャッシュを生み出しているかを主眼として投資判断を行っている。

このため米国会計基準やIAS(国際会計基準)等は、投資家が期待する企業情報を適切に開示するためのキャッシュフロー情報の充実、資産及び負債の適正な評価を可能にするために基準を変更する等の対応を図ってきた。

これに対し日本ではこのような対応が遅れたため、日本企業が公表する企業情報に対して海外投資家等からの信頼性が失われている。

(2)日本固有の経済環境の影響

日本では、バブル期に多くの企業が不動産投資や新規事業を行うために多額の投資を行い資産を増大させた。

しかしバブル崩壊及びその後の長期的な景気の低迷により、これらの資産の時価や収益性が著しく低下し、実際の価値が帳簿価額を大幅に下回る状況となっている。

日本の会計基準では資産を基本的に取得原価で評価しているため、価値の下落が貸借対照表上には表面化されず、多額の含み損を抱えていると考える。

そこで、資産の適正な評価を行い、企業情報の透明化を図るために減損会計の導入が求められた。

2.企業経営に与える影響

資産の簿価と実際の価値との食い違いに関係する会計基準として、事業用土地については2002年3月31日までの時限立法として土地再評価法が施行された。また販売用不動産については2001年3月期より強制評価減が義務化されている。

これまでにおいて、土地や不動産等の処理を積極的に行ってきた企業については、減損会計による影響は少ないと考えるが、消極的な対応を取ってきた企業では含み損が一挙に損失として計上され、大きく影響を受けることが予想される。

その結果として減損会計導入後に損失が一挙に計上されることとなり、投資家等からはマイナス評価を受ける。

また今回の減損会計では対象となる資産が広範になるため、事業環境の悪化はあらゆる業種業態の企業に減損処理の影響を与えることになると考える。

この様な減損会計の導入による影響に対し、各企業は固定資産の保有目的を明確に区分した上で以下の様な処理を行うことが必要となる。

(1)帳簿価額を上回るキャッシュを生み出すことが出来るか否か

現在使用している事業用資産については今後の事業環境等を考慮し、帳簿価額を上回るキャッシュを生み出すことが出来るか否かを明確にする。

(2)著しく不採算な事業からは撤退

著しく不採算な事業からは撤退し、保有資産を売却する。

また今後事業を行うために保有している資産については、減損会計の影響を考慮した上で再度事業計画を見直し、計画の実行または中止を判断する。

さらに現在未処理の遊休資産については、早期に処分する。

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