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先日(2017年10月31日)、NECから2017年度第2四半期決算(2017年4月1日~9月30日)と通期予想が発表されましたので、概況を整理します。
パブリック部門が増収増益になったことと、為替影響による売上高増100億円程度などにより、全体では増収増益となっています。
このパブリック部門の増収増益は、2017年1月に日本航空電子工業を連結子会社にした影響で、2017年度上期は売上高で約1,240億円、営業利益で約80億円の上乗せがあったとしています。
その影響を除くと前年同期から微減の状況であり、主力のICT関連事業は縮小し、前年度はプラスだったエンタープライズ部門も前年同期に流通・サービス業の大型案件があった影響で6.0%の減収となっています。
NECの2017年度第2四半期(2017年4月1日~9月30日)の決算概要は、以下の通りです。
売上高は、前年同期に対して869億円(7.2%)増の1兆2,880億円
営業損益は、同35億円増の73億円
純損益は、同57億円増の188億円
2017年度の通期決算予想は、売上高及び営業利益は前回予想を維持し、純損益を50億円上方修正しています。
これは、2017年6月にルネサスエレクトロニクスの株式を売却したことが大きく貢献しています。
- ・売上高:2兆8,000円、営業損益:500億円、純損益:350億円
- ・戦略投資の具体化として、エンタープライズ事業でのソリューション開発で30億円に加え、IOT基盤開発とグルーバル成長投資で20億円を新たに追加し、全体で80億円を見込んでいます。
- ・指名停止の影響を再検証して、パブリックとシステムプラットフォーム事業で売上高で400億円、営業利益で100億円を見込んでいます。
- ・研究開開発費:売上高比4.1%の1,160億円(前年度実績:1,093億円)
売上高、営業損益、純損益(2017年度第2四半期累計)
売上高、営業損益及び純損益ともに、全指標増収増益となっています。
売上高は、前年同期に対して869億円(7.2%)増の1兆2,880億円
- ・パブリック部門が増収したことに加え、為替影響による売上高増100億円程度などにより、全体では増収となっています。
- ・なお海外売上比率は、27.3%(前年同期21.2%)となっています。
営業損益は、前年同期に対して35億円増の73億円
- ・エンタープライズやテレコムキャリア部門が減益したものの、パブリック部門やその他が増益したことにより、全体では増益となっています。
純損益は、前年同期に対して57億円増の188億円
- ・営業利益の増益に加え、為替差損益の改善などが寄与して、全体では増益となっています。
セグメント別(2016年4月1日~2016年6月30日)
セグメント別では、パブリックとその他の2部門が増収増益となり、エンタープライズとテレコムキャリ及びシステムプラットフォームの3部門が減収減益となっています。
パブリック事業
売上高:前年同期比38.7%増の4,070億円(営業損益:同67億円増の150億円)
- ・売上高は、社会公共領域は消防・防災システムなどが減収したものの、社会基盤領域は日本航空電子工業の連結子会社化などにより増収し、全体では増収となっています。
- ・営業損益は、売上が増加したことなどによります。
エンタープライズ事業
売上高:前年同期比6.0%減の1,918億円(営業損益:同35億円減の158億円)
- ・売上高は、流通・サービス業向けの減収などにより、全体では減収となっています。
- ・営業損益は、売上の減少に加え、IoT関連の投資費用の増加などにより減益となっています。
テレコムキャリア事業
売上高:前年同期比3.7%減の2,675億円(営業損益:同33億円減の6億円)
- ・売上高は、海外において海洋システムが大型案件の一巡により減収したことに加え、国内の通信事業者の設備投資が低調に推移したことなどにより、全体では減収となっています。
- ・営業損益は、売上が減少したことなどによります。
システムプラットフォーム事業
売上高:前年同期比2.0%減の3,330億円(営業損益:同14億円減の63億円)
- ・売上高は、ハードウェアの減少などにより、全体では減収となっています。
- ・営業損益は、売上が減少したことになどによります。
その他
売上高:前年同期比3.1%増の887億円(営業損益:同40億円改善の△58億円)
- ・スマートエネルギー(電極、蓄電システム、ユーティリティ向けソリューションなど)などの事業を含んでいます。
- ・売上高は、海外向けセーフティ事業が増加したことなどにより、全体では増収となっています。
- ・営業損益は、売上の増加に加え、費用の効率化などにより改善しています。
その他
自己資本は8,597億円(自己資本比率31.6%、2017年3月末比0.2ポイント悪化)
- ・総資産:2017年3月末に対し324億円減の2兆7,164億円
- ・負債:同226億円増の1兆6,905億円
現金及び現金同等物の期末残高は、2017年3月末に対し1,325億円増の3,725億円(前年同期:2,709億円)
- ・フリーキャッシュ・フローは、前年同期比283億円増の753億円
営業活動によるキャッシュ・フロー:同171億円増の501億円
投資活動によるキャッシュ・フロー:同112億円増の252億円
- ・財務活動によるキャッシュ・フローは、559億円
スマートエネルギー事業の見直し
NEC及びNECエナジーデバイスが保有するリチウムイオン電池事業を担う持分法適用関連会社のオートモーティブエナジーサプライ(AESC)の全株式を日産自動車に譲渡し、日産自動車は同社が持つバッテリ事業及びバッテリ工場と一緒に、NECのスマートエネルギー事業をGSRキャピタルに譲渡することを発表しました。
株式譲渡契約の締結に向けて、GSRキャピタルとの交渉を進めており、本株式譲渡により約100億円の営業外利益を計上する予定であるものの、現時点では2017年度業績予想には織り込んでいないとしています。
2018年1月に新たな中期経営計画を発表予定
「テレコムキャリア事業の見直しが大きなポイントになる」として、縮小が続く通信機器事業の改革を進める考えを示しています。
通信事業者だけを対象にしたハードウエアの事業は縮小していくとして、通信事業者のサービス領域に拡大したり、通信技術を他の企業に展開したりする必要があるとしています。
さらに、以下の対策が重要としています。
- ・パブリックは国内事業のなかで利益率を高めていくこと
- ・エンタープライズにおける成長をどう勝ち取り、収益を高めること
- ・海外事業の成長がこれまでは思い通りにいっていないところもあり、スピードを上げて海外事業の柱を作ること
2017年度の通期決算予想
2017年度の通期決算予想は、売上高及び営業利益は前回予想を維持し、純損益を50億円上方修正しています。
これは、2017年6月にルネサスエレクトロニクスの株式を売却したことが大きく貢献しています。
- ・売上高:2兆8,000円(対前年度:5.1%減)
- ・営業損益:500億円(同:82億円)
- ・純損益:350億円(同:77億円)
戦略投資の具体化として、エンタープライズ事業でのソリューション開発で30億円に加え、IOT基盤開発とグルーバル成長投資で20億円を新たに追加し、残りの30億円を調整額に残して全体で80億円を見込んでいます。
指名停止の影響を再検証した結果、
- ・当初は売上高で600億円、営業利益で150億円の影響としていましたが、
- ・再検証した結果、売上高では400億円、営業利益で100億円となり、影響が減ってきており、
- ・指名停止期間も当初の想定から短くなり、下期ですべてが終わるとしています。
パブリック事業
- ・売上高:前年度に対し1,488億円増の9,150億円(営業利益:同218億円増の550億円)
- ・売上高は、社会公共領域は指名停止の影響により減収を見込むものの、社会基盤領域は日本航空電子工業の連結子会社化などによる増収を見込んでいます。
- ・営業利益は、売上増に加え、宇宙事業の採算性改善や前年の偶発損失引当金繰入等の減少などにより増益を見込んでいます。
エンタープライズ事業
- ・売上高:前年度に対し64億円増の4,150億円(営業利益:同67億円減の330億円)
- ・売上高は、流通・サービス業向けは減収を見込むものの、製造業及び金融機関向けは増収し、全体では微増を見込んでいます。
- ・営業利益は、プロジェクトミックスの悪化に加え、IoT関連の投資費用の増加などにより減益を見込んでいます。
テレコムキャリア事業
- ・売上高:前年度に対し54億円減の5,950億円(営業利益:同49億円増の230億円)
- ・売上高は、海洋システムなどの海外既存事業が減収するものの、新規事業の伸長により微減を見込んでいます。
- ・営業利益は、5G開発費増があるものの、海外事業の改善により増益を見込んでいます。
システムプラットフォーム事業
- ・売上高:前年度に対し348億円減の6,850億円(営業利益:同6億円減の290億円)
- ・売上高は、指名停止の影響に加え、携帯電話端末事業などのハードウェアの減収を見込んでいます。
- ・営業利益は、費用効率化や前年の偶発損失引当金繰入等の減少などがあるものの、売上減に伴い減益を見込んでいます。
その他
- ・売上高:前年度に対し200億円増の1,900億円(営業利益:同20億円改善の△180億円)
- ・売上高は、海外事業やスマートエネルギー事業で増収を見込んでいます。
- ・営業利益は、IoT基盤の投資費用の増加があるものの、スマートエネルギー事業の改善に加え、海外事業の採算性改善を見込んでいます。
2017年度(2018年3月期)
電機各社の決算発表
2017.11.15 2017年度第2四半期決算:日立、東芝、三菱電機
2017.11.06 2017年度第2四半期決算:NEC
2017.11.04 2017年度第2四半期決算:富士通
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