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4月末から5月初めにかけて、国内電機各社から2012年度(平成24年度、2013年3月期)の通期決算が発表されました。
ここでは、富士通とNECの決算概要を整理しておきます。
富士通
-
- ・売上高は、前年比1.9%減(為替影響を除くと3%減)の4兆3,817億円で、5期連続の減収となりました。
主力のテクノロジーソリューション部門は増収増益となりましたが、他2部門の落ち込みを補うまでには至っていません。
- ・売上高は、前年比1.9%減(為替影響を除くと3%減)の4兆3,817億円で、5期連続の減収となりました。
- ・さらに、構造改善費用1,162億円、現存損失342億円などを特別損失に計上したことにより、729億円の赤字となりました。
テクノロジーソリューション
- ・売上高は、ほぼ前年並みで、国内は1.2%の増数となりました。
- ・サーバ関連は大型商談の減少などの影響で減収、ネットワークプロダクトは通信トラフィックの増加対策などで増収となりました。
- ・システムインテグレーションは、大型商談の減少などがあったものの、製造及び公共分野を中心とした投資回復で増収となりました。
- ・海外は1.6%の減収(為替影響を除くと4%の減収)となりました。
欧州の景況悪化、北米通信キャリアへの光伝送システムの減収などが影響しました。
ユビキタスソリューション
- ・パソコンは、企業向けロット商談はあったものの、個人向け販売台数減により減収となりました。
(2011年度:602万台、2012年度:583万台、2013年度予想:535万台)
- ・携帯電話は、フィーチャーフォン市場の縮小、スマートフォンの競争激化により伸び悩んでいます。
(2011年度800万台、2012年度650万台、2013年度予想:520万台)
デバイスソリューション
- ・LSIは、デジタルAV向け市況回復遅れの影響に加え、アジア向けを中心に減収となり、全体で減収となりました。
- ・電子部品は、アジア向け半導体パッケージが増収したものの、国内の電池や半導体パッケージの減収、米国向け電池の減収の影響で、全体で減収となりました。
NEC
- ・売上高は、前年比1.1%増の3兆716億円と増収に転じました。
パーソナルソリューション事業が減収となりましたが、ITソリューション事業、キャリアネットワーク事業、社会インフラ事業の増収が貢献しています。
- ・営業利益は、売上増に加え、構造改革や原価低減などにより、対前年409億円増の1,146億円となりました。(構造改革は、予定通り約400億円の営業利益効果)
- ・最終損益は304億円で、3期ぶりに黒字となりました。
ITソリューション事業
- ITサービスでは、製造業や流通・サービス業向けなどが堅調に推移し、プラットフォームでは大型案件によりハード・ソフトが増加しました。
キャリアネットワーク事業
- 国内事業が堅調に推移し、米国コンバース社の事業支援システム事業を連結化したことにより増収となりました。
社会インフラ事業
- 社会システム分野において、消防・防災、航空宇宙・防衛システム分野が堅調に推移しました。
パーソナルソリューション事業
- 個人向けパソコン事業の非連結化、携帯電話の出荷台数の減少などにより、減収となりました。
携帯電話:当初計画430万台 → 実績290万台
IT分野を中心とした両社ですが、グローバル競争の中で苦戦を強いられています。
特に、PCでの厳しい価格競争や市況減に加え、スマートフォンやタブレット端末においても価格競争が始まっています。
2012年度の決算結果は、時期こそ違いますが、両社の共通の課題への対応途中といえると考えています。
そして、主軸のIT事業に関しては、国内を中心に両社とも堅調であったことも共通しています。
- ・富士通は、構造改革途中ですが、着実な実施による収益構造の転換、成長分野へのリソースシフトの実現を期待しています。
- ・NECは、一応の構造改革の効果が出て増収増益に転じているかのように見えますが、本物かどうかは2015中期計画の初年度でもある2013年度の計画達成が必要となります。
両社は、ここ数年構造改革に追われているようにも見受けられますが、今回の中期計画では「売上規模拡大よりも収益構造の改革」に注力しているように思えます。
両社の売上高は、かつては5兆円規模でした。
今回の中期計画では、富士通は具体的な売上目標はあげていませんが、NECは3兆2,000億円としています。
また海外売上比率においても、
- ・富士通は、2012年度34%に対し2015年度は具体的な目標値は上げていませんが、2011年の時点では50%を目指す方針を示していましたし、
- ・NECは、2012年度16%に対し2015年度25%を目標にしています。
「安定的な収益構造の確立」も必要と思いますが、グローバル競争の中で勝ち残っていくためにも、
- ・海外の競合企業と対等に勝負できるまでの規模拡大、そのための体制確立も必要でしょうし、
- ・「知の探索」とのバランスを考慮した「両利きの経営」も必要です。
コスト削減のために、研究開発費を削減したり、分野を集中したりすることは避けるべきです。
両社の今後のイノベーションと成長戦略実現に期待しています。
参考:2015年度の目標値
営業利益 | 当期純利益 | フリー・キャッシュ・フロー | |
---|---|---|---|
富士通 | 2,000億円以上 | 1,000億円以上 | 1,000億円以上 |
NEC | 1,500億円以上 | 600億円以上 | 1,000億円以上 |
参考:電機各社の決算発表
電機とITの決算 ≫ 富士通とNECの2012年度通期(2013年3月期)決算
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