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国内主要電機の2013年度(2014年3月期)通期決算発表に基づいて、各社の海外売上の状況について整理します。
そして、直近の見込み及び中期計画などから、今後の海外展開への取組みについても補足します。
2013年度(2014年3月期)は、各社の構造改革に加え、国内での消費税増税前の駆け込み需要、円安の好影響、グローバルでの市場回復、特に中国をはじめとする新興国を中心とした自動車関連や社会インフラなどの事業を展開してきた企業は業績を伸ばしています。
各社の今後の成長戦略においても、国内市場を維持しながら、新興国を中心とした海外の事業拡大が中心となっています。
グローバル競争で勝っていける製品の開発に加え、進出先の社会情勢や為替変動を考慮した展開など、各社の本格的な復活は今後の舵取りにかかっています。
電機各社の海外売上構成の推移
各社の海外売上高及び地域構成の推移は以下の通りです。
中期計画を見ても、社会インフラや製品などの注力事業は異なるものの、各社とも新興国を中心として積極的な海外展開を計画しています。
各社の地域別売上推移と中期計画
NEC
2013年4月26日「2015中期経営計画」
- ・社会ソリューション事業へ集中、海外売上比率25%の早期実現。
海外売上 2012年度:4,831億円(16%)→2015年度:7,500億円(23%)
- ・方針:パブリック・エンタープライズ・スマートエネルギー、テレコムキャリア、システムプラットフォーム事業を中心に、アジア(新興国・発展途上国)への注力、現地主導型ビジネスの推進。
地域別売上
2012年度 | 2015年度 | 基本方針 | |
---|---|---|---|
アジア・ 中南米 |
2,500億円 | 4,500億円 | 都市化に伴う高度化への対応 |
中近東・ アフリカ等 |
260億円 | 600億円 | 国家インフラの基盤整備 |
欧州・北米 | 2,070億円 | 2,400億円 | 全体最適化とインフラ刷新 |
合計 | 4,831億円 | 7,500億円 |
富士通
2014年5月29日「2014年度経営方針」
- ・方針:グローバルでのビジネス領域拡大。
- 従前の日本、海外の区分をなくし、5リージョン体制に再編。
- グローバルでの商品・サービス力強化のため、 グローバルデリバリー部門を再編・強化。
- ・特にテクノロジーソリューション分野で、2016年度3兆8,000億円を目指す(2013年度:3兆2,430億円)
地域別売上
2013年度 | 2016年度 | |||
---|---|---|---|---|
売上高 | 構成比 | 売上高 | 構成比 | |
日本 | 2兆1,434億円 | 64% | 2兆4,000億円 | 61% |
EMEIA | 7,384億円 | 22% | 8,700億円 | 22% |
米州 | 2,574億円 | 8% | 3,100億円 | 8% |
アジア | 1,242億円 | 4% | 2,300億円 | 6% |
オセアニア | 1,007億円 | 3% | 1,200億円 | 3% |
日立製作所
2014年5月12日「2015中期経営計画-進捗状況について-」
- ・方針:社会イノベーション事業をグローバルに提供し成長。
- ・2013年度は、
- アジアの成果取り込みに加え、北米・中国で売上拡大。
- 「オペレーションのグローバル化」から「経営のグローバル化」へ進化。
- 研究開発をグローバルに展開。
地域別売上
2013年度 | 2015年度 | 主な事業 | |
---|---|---|---|
中国 | 1兆736億円 | 1兆2,200億円 | ビル、政府・自治体、建設、 金融、ヘルスケア |
アジア | 9,899億円 | 1兆2,900億円 | 電力、水道、ビル、鉄道、 製造、自動車 |
欧州 | 8,121億円 | 8,600億円 | 鉄道、原子力、ヘルスケア |
北米 | 9,102億円 | 1兆円 | 自動車、金融、石油・ガス、 電力、ヘルスケア |
グローバル事業比率
2012年度 | 2013年度 | 2014年度 | 2015年度 |
---|---|---|---|
41% | 45% | 47% | 50%超 |
東芝
2014年5月22日「2014年度 経営方針説明会」
- ・方針:海外比率拡大、BtoBシフト加速で着実に成長。
地域別売上
2013年度 | 2016年度 | |
---|---|---|
日本 | 42% | 37% |
欧米 | 31% | 32% |
新興国 | 27% | 31% |
BtoC | 16% | 10% |
BtoB | 84% | 90% |
参考:主な指標(2013年度実績~2016年度見通し)
2013年度 | 2014年度 | 2015年度 | 2016年度 | |
---|---|---|---|---|
売上高 | 6兆5,025億円 | 6兆7,000億円 | 7兆円 | 7兆5,000億円 |
営業利益 | 2,908億円 (4.5%) |
3,300億円 (4.9%) |
4,000億円 (5.7%) |
4,500億円 (6.0%) |
純利益 | 508億円 (0.8%) |
1,200億円 (1.8%) |
1,700億円 (2.4%) |
2,000億円 (2.7%) |
ソニー
2014年5月22日「経営方針説明会」
- ・2013年度は大きな最終赤字を計上し、2014年度もエレクトロニクス事業の回復遅れにより、中期目標には遠く及ばず、500億円の最終損失になる見込み。
- ・次の2015年度からの3ヵ年を成長フェーズに位置づけ、持続的に収益があげられる企業へ変貌するため、2014年度は構造改革をやりきる年と位置づけ、徹底した変革に取り組む。
- ・事業構造改革としては、
- これまでにPC事業の収束、テレビ事業の分社化、本社間接費用の30%削減、販売会社費用の20%削減といった効果を達成。
- さらに、2013年度、2014年度で、事業構造の変革などに伴う費用として、3,000億円を計上。
- 2015年度以降には、年間1,000億円以上のコスト削減効果を見込む。
- 2015年度以降の中期経営計画は2014年度中に策定予定で、2015年度には連結営業利益で4,000億円規模を目指す。
パナソニック
2014年3月27日「2014年度 事業方針」
- ・2018年度売上10兆円規模を目指す。
- ・グローバル市場を「日本」、中南米も含めた「欧米」、アジア・中国・中東からなる「海外戦略地域」に分けて、地域軸から逆算の戦略を実行予定。
(参考)2012年度:日本3.8兆円、欧米1.7兆円、海外戦略地域:1.8兆円
- ・主な事業
- 家電事業では、海外コンシューマーマーケティングセンター設置などによりグローバル展開力を強化。
- 住宅事業では、特にASEAN・中国・インドにおいては電材事業を中心とした着実な成長、トルコ・CIS・中近東ではヴィコ社買収により獲得した販売網やブランド力活用により事業拡大。
- ・「53のマトリックス」で経営リソースを大胆にシフト
(○に経営リソースをシフト)
日本 | 欧米 | 海外戦略地域 | 2018年度 売上目標 | |
---|---|---|---|---|
家電 | ○ | 2.0兆円 | ||
住宅 | ○ | ○ | 2.0兆円 | |
車載 | ○ | ○ | 2.0兆円 | |
BtoB | ○ | ○ | ○ | 2.5兆円 |
デバイス | 1.5兆円 |
参考:主な指標(2013年度実績~2015年度見通し)
2013年度 | 2014年度 | 2015年度 | 2018年度 | |
---|---|---|---|---|
営業利益 | 3,051億円 | → | 3,500億円以上 (5.0%以上) |
|
収益性 | 黒字化、復配 | |||
構造改革 | ||||
フリーCF6,000億円以上 | ||||
成長 | 事業軸での成長戦略 | |||
地域からの逆算による成長戦略 |
三菱電機
2014年5月「三菱電機の経営戦略」
- ・方針
- 日本:事業展開の基盤地域として、着実な成長と収益性の向上。
- 欧米・中国等:さらなる事業競争力の強化と事業規模の拡大。
- 新興国市場:新たな市場開拓に向けた現地拠点と事業体制の整備を推進。
- ・地域別
- 欧州:既存主力事業の販売体制強化と未参入市場への拡販により事業拡大。
- 中国:インフラ・環境関連市場の拡大、生産自動化等の市場動向に合わせた事業拡大。
- 北米:生産体制の拡充をはじめ、事業競争力の強化による事業拡大。
- 新興国市場:販路開拓・商流整備、生産・開発の現地化、認知度向上等による事業競争力強化。
参考:主な指標(2013年度実績~2016年度見通し)
2012年度 | 2013年度 | 2014年度 | 2020年度 | |
---|---|---|---|---|
売上高 | 3兆5,672億円 | 4兆544億円 | 4兆2,200円 | 5兆円 |
営業利益率 | 1,521億円 (4.3%) |
2,352億円 (5.8%) |
2,600億円 (6.0%) |
(8.0%以上) |
ROE | 5.7% | 10.9% | 継続的に10%以上 |
シャープ
2014年5月12日「中期経営計画の進捗状況」
- ・2015年度営業利益率5%を目指し、基本戦略「『勝てる市場・分野』へ経営資源をシフト」「自前主義からの脱却、アライアンスの積極活用」「ガバナンス体制の変革による実行力の強化」を推進中。
- ・方針:ASEANを最重点地域とした海外事業の拡大。
- ・地域別
アジア- 成長ドライバーと位置づけ、徹底して事業拡大を図るべく必要なリソースを集中投下。
- アジア・パシフィック新体制下、ASEAN地域の成長ポテンシャル取り込み。
- アジアに続く重点市場と位置付け、特にサブサハラ地域を中心とした事業基盤構築と事業拡大。
- 流通ミックス・商品ミックスの変革による収益性改善。
- 地域ニーズを捉え、内陸部の中規模都市を攻略。
- 「健康環境商品のSHARP」としての白物ブランドの構築。
- 高収益ビジネスモデルのITサービス事業への取組み強化。
- 新規商品カテゴリ、新規販路開拓による新たな成長機会の創出。
- ソリューション(ドキュメント/エネルギー等)事業分野へのシフト。
- 汎欧を睨んだ効率的事業推進体制の構築。
地域別売上
2012年度 | 2013年度 | 2015年度 | |
---|---|---|---|
アジア | 21% | 21% | 31% |
中近東・ アフリカ |
4% | 5% | 8% |
中国 | 20% | 29% | 22% |
米州 | 38% | 29% | 29% |
欧州 | 17% | 16% | 10% |
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