富士通が新経営方針を発表、IT企業からDX企業へ変革して2022年度デジタル領域の売上1兆3,000億円

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富士通の経営方針と決算

富士通の経営方針と決算資料を参考にしてATY-Japanで作成

 

2019年9月26日、時田社長が就任して以来初めてとなる経営方針を発表しましたので、概要を整理します。

2022年度のテクノロジーソリューションの売上高を3兆5,000億円(年平均成長率3%)、営業利益率10%を目指すというものです。

そのために、DX(デジタル・トランスフォーメーション)を含むデジタル領域を成長させるとともに、従来型ITについても強固なビジネス基盤をベースに収益拡大するとしています。

「IT企業からDX企業へ」という目指す姿を掲げ、新社長の決意を感じます。

「これからはテクノロジーをベースにして、社会やお客さまに価値を提供する会社になる。その意味でDX企業になると定義した」というのが今回の発表の狙いのようです。

しかし、デジタル化を牽引する富士通にしては、2022年度デジタル領域の売上高1兆3,000億円は少ないように感じますし、その内訳も達成施策(売り方)も明らかになっていません。

富士通やNECなどの国内IT企業は、直近の国内投資の堅調に下支えさえされており、その収益構造は依然として従来システム(レガシーシステム)が中心となっています。

「既存の従来型IT領域で顧客基盤を軸にシェア拡大と収益性を確保しながら、デジタル領域でビジネス伸長を目指す」という「両利きの経営」が実行できるか、富士通が今回発表した経営方針の進捗に注目していきたいところです。

 

前回の経営計画と実績

2015年6月、前社長の田中社長就任時に、在任中の達成目標として以下の目標(表記「前回目標」)を掲げていました。

しかし、直近の業績結果は以下の通りとなっており、全ての目標値を達成することができませんでした。

前回目標2017年度実績2018年度実績2019年度予想
営業利益率 10%以上 4.5% 3.3% 3.5%
フリー
キャッシュフロー
1,500億円以上 1,778億円 1,035億円 500億円
自己資本比率 40%以上 34.8% 36.5% 未発表
海外売上比率 50%以上 36.8% 36.3% 未発表

富士通の決算資料を参考にしてATY-Japanで作成

 

2019年4月26日に発表した「2018年度(2019年3月期)通期決算」では、サービスオリエンテッドカンパニーとして、つながるサービスで収益力を高め、成長を目指し、この実現に向けて「形をかえる」と「質をかえる」取り組みをしており、今後は「質をかえる」取り組みに集中するとしていました。

また、2019年7月25日に発表した「2019年度(2020年3月期)第1四半期決算」では、022年度の達成目標としているテクノロジーソリューション事業の営業利益率10%については、当面は国内サービス、ネットワークと海外事業がブースターエンジンとなるとしていました。

 

2019年9月26日発表の経営方針

2019年9月26日、時田社長就任以来初めて発表した経営方針の概要は、以下の通りです。

1.基本方針
DXを含むデジタル領域を成長させるとともに、従来型ITについても強固なビジネス基盤をベースに収益拡大

2.経営目標

  • ・持続的な成長と収益性の向上
    2022年度のテクノロジーソリューションの売上高を3兆5000億円(年平均成長率3%)、営業利益率10%を目指す。
  • ・2022年度のデジタル領域の売上高1兆3,000億円(内、3,000億円のビジネス創出)
    デジタル領域の売上高、2018年度実績8,300億円(全体売上高の26%)、2019年度予想9,500億円(同30%)、2022年度まで年平均成長率3%の1兆3,000億円(同37%)を目指す。
  • ・単年度1,500億円以上の安定的なフリーキャッシュフロー(FCF)創出を目指すを目指す。
  • ・非財務面での取り組み
    責任ある世界企業として(グローバルれレスポンシブルビジネス)

3.その他

  • ・2019年10月1日付けで、時田社長がCDXO(Chief Digital Transformation Officer)に就任
  • ・DXビジネスに特化した新会社を2020年1月に設立(スタート時のDXコンサルティング人員は500人超で、2022年度には2,000人に拡大)

 

テクノロジーソリューション

2017年度
実績
2018年度
実績
2019年度
予想
2022年度
目標
売上高 3兆527億円 3兆1,200億円 3兆1,500億円 3兆5,000億円
内、デジタル領域
(割合)
8,300億円
(26%)
9,500億円
(30%)
1兆3,000億円
(37%)
営業利益率 4.4% 4.6% 10%
連結フリー
キャッシュフロー
1,778億円 1,035億円 500億円 1,500億円以上
参考(テクノロジーソリューション)
国内売上 1兆9,983億円 2兆1,099億円 2兆1,700億円 未発表
海外売上 1兆543億円 1兆137億円 9,800億円 未発表
海外比率 34.5% 32.4% 31.1% 未発表
参考(連結業績)
売上高 4兆984億円 3兆9,524億円 3兆7,500億円 未発表
営業利益 1,825億円 1,302億円 1,300億円 未発表
純利益 1,693億円 1,046億円 1,050億円 未発表

2018年度以降の営業利益率は、その他/消去又は全社を加味
富士通の経営方針と決算資料を参考にしてATY-Japanで作成

 

経営方針(2019年9月26日発表)の経営目標

2019年度から2022年度にかけて年平均成長率3%で、テクノロジーソリューションの売上高3兆5,000億円、営業利益率10%を目指す。

2022年度の「デジタル」領域の売上高1兆3,000億円(年率12%増)、その内DXでは3,000億円のビジネス創出を目指す。

テクノロジーソリューションの営業利益の主な内訳は、国内サービスで700億円、ネットワークビジネスが200億円、DXが500億円、海外ビジネスで600億円など

そのために、DXビジネスに特化した新会社を2020年1月に設立し、2022年度にはDXコンサルティングの人員を2,000人に拡大する。

  • ・DXの伸長(M&A含む)
  • ・サービスビジネスの強化
  • ・ネットワークビジネスの改善
  • ・海外ビジネスの収益改善
  • ・投資の選択と集中

単年度1,500億円以上の安定的なFCF創出

  • ・成長投資
    DXの人材育成や社内DX実践、M&A等、積極的に投資
  • ・株主還元
    安定配当をベースとしつつ、成長ステージに即した株主還元を行う。自社株買いについても機動的に実施
  • ・財務体質強化
    社会インフラを支える企業にふさわしい財務健全性を確保

 

DXビジネス拡大に向けた取り組み概要

富士通では、DXを「デジタル技術とデータを駆使して革新的なサービスやビジネスプロセスの変革をもたらすもの」と位置付けて、「富士通の強みを生かしたDXビジネスを追求する」としています。

「テクノロジーと強固な顧客基盤に支えられた業務や業種ノウハウの蓄積」が富士通の強みであるが、「テクノロジーを顧客や社会の価値に変えるということにもっと取り組まなくてはならない」という課題もあることを指摘しています。

また、「業種や業務ごとに蓄積されたノウハウを横断的に活用し、クロスインダストリーな価値を生み出す活動に発展させる必要もある」としています。

 

そこで、DXビジネスを牽引する新会社設立を2020年1月に設立して、連結ベースで3,000億円規模のDXビジネス創出を目指すとしています。

この新会社は、DXコンサルタントを500人超でスタートし、2022年度には2000人に拡大する計画となっています。

なお、新会社を独立の組織として設立する狙いは、「既存のSI事業に引っ張られることなくDXビジネスを単体で伸ばす」、「顧客価値を追求していくためには他社のソリューションを活用してコンサルティングからインプリメントまでを担うことにある」としています。

  • ・新会社では、DXの提案から企画、構築、運用までをワンストップで提供
  • ・富士通の一部門とは位置付けず、自立したコンサルティングファームとして、また競争力のある集団として、富士通グループの枠を超えてビジネスを展開
  • ・戦略や業種コンサルティング、ソリューションコンサルティング、テクノロジーコンサルティングなどを提供し、富士通製品にこだわらず、社内外から最適な製品を用いてソリューションを提供
  • ・対象分野は、まずは、DXが進んでいる金融や製造、流通を最初のターゲット分野

 

そして、DXを推進するために、「コンピューティング」「AI」「5G」「サイバーセキュリティ」「クラウド」「データマネジメント」「IoT」の7つの重点技術領域にリソースを集中し、富士通独自の強みを強化すると発表しています。

  • ・コンピューティングでは、社会課題解決への貢献やサービス起点での課題解決のために、デジタルアニーラやスーパーコンピュータなどの最先端技術の開発、実用化に取り組む
  • ・AIでは、実ビジネスでの活用に向けて説明可能な技術を提供
  • ・5Gでは、デジタル技術との組み合わせにより、業種や業界を超えた新たなビジネスモデルの創出を促進
  • ・サイバーセキュリティでは、取り扱うデータのリスクに応じて、その対策を事前に組み込むために、セキュリティ・バイデザインの専門人材を提供
  • ・クラウドでは、既存基幹システムのクラウド化を促進するとともに、マルチクラウド、ハイブリッドクラウドによりDXを加速するとともに、運用サービスに注力
  • ・データマネジメントでは、AI活用による目的指向型のビジネスの実現と、データの信頼性を担保するブロックチェーン技術を活用したVirtuora DXを提供
  • ・IoTでは、大量のデータ処理を停止させることなく追加、変更できるDracenaなどのソリューションを提供

 

さらに、ビジネス機会創出と新事業の推進として、今後5年間で5,000億円の投資を実行するとしています。

  • ・社会課題解決を支える最先端技術への重点投資
  • ・DXビジネスの成長を支えるテクノロジー、ソリューションの更なる強化
  • ・新規事業創出に向けたCVC、ベンチャーへの投資、M&A
  • ・人材への投資、全面的な社内改革(プロセス、インフラ刷新)

 

各事業における競争力強化

各事業における競争力強化としては、「サービスビジネスの収益力強化」「システムプロダクト」「ネットワーク」「海外ビジネス」をあげています。

  • ・サービスビジネスの収益力強化では、国内の強固なビジネス基盤を堅持するとともに、2022年度までに700億円の利益改善を目指す。
    お客様システム・業務に対する豊富な知見をベースに信頼性の高いモダナイゼーションを加速するとともに、グローバルなリソースプールとしてGDCを2022年までに2万人体制まで拡大、コスト効率の更なる追求
  • ・システムプロダクトでは、最先端コンピューティング技術で社会課題の解決に貢献
    「富岳」の製造を開始、2021年から2022年頃の共用開始にむけて、着実にシステム開発と導入を推進
  • ・ネットワークでは、5G本格化に向けた取り組み
    NTTドコモ向け納入開始とエリクソン社との戦略パートナーシップなどにより5Gネットワーク普及促進、ローカル5Gに関する提案加速などによる「デジタル X 5G」によるDX加速
  • ・海外ビジネスでは、EMEIAでサービスビジネスへの転換を着実に実行
    MEIAにおける構造改革、欧州における新体制、GDCを核としたグローバルサービスデリバリーの強化

 

社内改革

社内改革としては、「社内プロセス・カルチャーの変革」「人事制度改革」をあげています。

  • ・社内プロセス・カルチャーの変革では、信頼されるDXパートナーとなるべく全面的な社内改革を実施
    働き方:ワークライフバランス、教育:デザイン思考の徹底、社内のDX加速に向けたシステム・プロセス改革、カルチャー:ドレスコード自由化
  • ・人事制度改革ではグローバル視点で人材活用が可能な体制に変更
    ジョブ型人事制度、高度人材処遇制度、新卒・既卒を問わず通年採用

 

経営方針発表の背景(世界の法人IT市場の動向)と基本方針

1.オンプレミスや既存SIなどは縮小傾向

  • ・従来型IT市場の年平均成長率はマイナス2~3%であり、縮小傾向にある。
    2018年:9,180億ドル → 2023年:8,180億ドル
  • ・レガシーシステムのリプレースや効率化のためのモダナイゼーション投資は堅調に増え、年平均成長率6.0%の状況である。
    2018年:5,240億ドル → 2023年:7,010億ドル

2.DXへの投資は急拡大を予想

  • ・データ利活用やAI、IoTなどの新たなテクノロジーを駆使したDXへの投資は33.4%増と、急拡大が予測されている。
    2018年:1,650億ドル → 2023年:6,980億ドル

3.富士通の基本方針
DXを含むデジタル領域を成長させるとともに、従来型ITについても強固なビジネス基盤をベースに収益拡大
デジタル領域では成長のドライバーとしてビジネス伸長を目指し、従来型IT領域では、国内は強固な顧客基盤を軸にシェア拡大と更なる収益性を強化

  • ・DXビジネスを積極的に伸ばし、DX実現に必要なクラウド移行などのモダナイゼーションにも一層注力していく。
  • ・DXやモダナイゼーション、可視化、効率化を含む領域を「デジタル」と呼び、成長のドライバーとしてビジネスを伸長させる。
  • ・従来型ITは強みを持つ分野で、国内サービスでは強固な顧客基盤があり、市場は縮小傾向にあっても、シェア拡大によってビジネス規模を維持できる。
  • ・着実に利益を積み上げ、確保していく。他の事業においても収益性確保の施策を着実に進める。

 

まとめ(私見)

企業が変革していくためには、並大抵の努力では実現は困難です。

そのためには、経営トップの強力なリーダーシップのもとで、全社的な取り組みが必要となります。

富士通やNECなどの国内IT企業は、従来からの既存システム(レガシーシステム)構築において、下請け構造や人月換算見積り体質が根を下ろしているようにも感じます。

富士通の直近の連結業績においては、主に以下の事業再編を実施してきましたが、今回の経営方針の発表を機に「攻めの姿勢」に転換していくことへの決意が感じられます。

  • ■2018年度の構造改革関連
    ・売上:約△2,100億円 PC・携帯端末やデバイス再編
    ・営業利益:約△1,175億円 欧州再編、リソースシフト、製造拠点・クラウド事業再編
  • ■2017年度の構造改革関連
    ・売上:約△520億円 ニフティ―のコンシューマ事業譲渡
    ・営業利益:約△80億円 ビジネスモデル変革

企業のDXを推進していくためには、パートナーとなるIT企業の存在が欠かせませんが、そのIT企業自体がDX企業となり、DX指向でシステム提案・構築を支援していくことが求められます。

富士通が今回発表した経営方針においては、テクノロジーソリューションの売上高は以下の目標をあげ、2019年度から2022年度にかけて年平均3%の成長を目指しています。

  • ・2022年度目標:3兆5,000億円
    内、デジタル領域が1兆3,000億円(37%)、残りの2兆2,000億円が従来型IT領域
  • ・2018年度実績:3兆1,200億円
    内、デジタル領域が8,300億円(26%)、残りの2兆2,900億円が従来型IT領域

2022年というと、政府が発表した「第5期科学技術基本計画(平成28~32年度)」にある「超スマート社会(Society 5.0)」ですし、報告書『DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~』で指摘されている課題に対応している時期となります。

この点からすると、2022年度デジタル領域の売上高1兆3,000億円は、デジタル化を牽引する富士通にしては少ないようにも感じます。

さらに、従来のSI的な売り方によるハードやネットワークなどが含まれているのかどうか、海外展開の事業規模など、その内訳や達成施策(売り方)も早く明らかにしてほしいものです。

今回の富士通の経営方針「IT企業からDX企業へ」という目指す姿は、決意の表れと想定しますが、手遅れにならないよう早期実現を期待しています。

 

富士通やNECなどの国内IT企業の業績堅調は、国内サービス好調に下支えされており、その主な要因は従来からの基幹業務システムの改修や刷新によるものです。

企業や公共分野の基幹システムは、個別開発やERP(統合基幹業務システム)パッケージ導入を中心として過去30年来使われてきています。

その既存システムが老朽化・複雑化・ブラックボックス化しているために、足かせとなってDX実現が難しくなっていることも懸念されています。

そして、既存システムを担当してきたIT企業の人材はベテランが多く、高齢化による自然減も加速している中で、新たな事業分野の開拓などへの対応を優先した構造改革や人員再配置だけでは事業は成り立ちません。

富士通の今回の経営方針では、DXビジネスを牽引する新会社を2020年1月に設立すると発表しています。

別組織(出島型)にするか社内プロジェクトとして推進するかは議論された結果だと思いますが、ゆくゆくは既存事業との融合が必要となってきます。

その視点からも、新社長の手腕、富士通社員の動向に注目していきたいところです。

 

参考:富士通の発表資料

2019.09.26 経営方針説明会 -富士通の成長に向けて-

 

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電機とITの決算

2019.08.01 2019年度第1四半期決算と通期予想:NEC

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